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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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ダリアの魔法の大剣を造る

 鍛冶屋に戻った俺は、錬金強化の仕事を引き受けて錬成台を使って強化したり、弟子達の作る新人用の武器や防具作りを見て助言アドバイスをし、宝石を使った指輪に「精霊感応霊呪印」を付与する高位錬成を行った。

 雷属性以外の全ての属性の分だけ錬成を行ったのだが。──高い難易度の錬成だけあって、五回の失敗を経験し、三つの宝石と指輪と、五つ分の錬成に使った素材を失ってしまった。


 それでも、だいぶ。精霊感応霊呪印を付与する実力が身に付いたのだろう。これでも失敗が少なく済んだ方だ。




 昼食後に美人冒険者と噂されている、ダリアとラピスが鍛冶屋にやって来た。

 ダリアの妹のフレジアは、買い物に行っているそうだ。


「素材を色々と持って来た。──どう? 魔法の剣一本分くらいにはなるかな?」

 二つの麻袋に入れられた物を見ると、「真紅鉄鋼アウラバルカム」と「碧銀鉄鋼クレリスアルム(神霊の翼)」の延べ棒が数本ずつ、各種精霊石などが大量に入っていた。ありがたい事に霊晶石も十個近くある。


「おお、凄いな。碧銀鉄鋼の延べ棒があるという事は、シャルファーに行っていたのか。なかなか手に入らない金属だぞ」

「神霊の翼」という名を持つ、青色や緑色に光る金属は、シャルファーの上級難度の転移門でしか手に入らない、稀少な鉱石から取れる金属だ。


 神霊の、とは、風の神が従えると言われる。魂を運ぶ霊的な鳥の羽の色が、この金属の様な、青と緑で描かれている為である。

 その鳥の姿を見た者は死ぬ運命にあると言い伝えられている。死者の魂を、その鳥の姿をした神霊が、神の元に連れて行くらしい。


「真紅鉄鋼と碧銀鉄鋼という事は、ダリアの大剣を造れと、そういう事か?」

 火の赤と、風の青、または緑という。象徴的配色から、そう考えたのだと説明する。


「私ら三人の注文した武器の中では、誰の武器が造りにくいんだい?」

 ダリアの言葉に、俺はちょっと考えてから「ラピスの長剣かな」と答えた。


「ダリアやフレジアの武器に付ける属性は、対立しないけれど。ラピスの武器には三つの属性を付け、対立属性である風と地属性を付与するから、難易度は高くなる」

 今日受け取った霊晶石は、ラピスの剣を造る時に使うとしよう。俺はそう言って「失敗しないよう祈ってろ」と告げ、さっそくダリアの大剣を造る準備を始める。


「おお──。もう造ってくれるのか、それは助かる」

「料金はこの大剣だと、成功報酬として八万ルキはもらうが、金の方は大丈夫か?」

 ダリアに尋ねると、彼女は「たっけぇ!」と声を上げてから、「……まあ、ギリギリ大丈夫」と答えた。


「よし。一回で成功すれば、何とか……この延べ棒の分量だと、二回分しか無いだろうな」 

 俺は二つの金属を使って、大剣を、どのように造るかを簡単に説明してやった。

「それはいいね! 出来上がりが楽しみになる」

 彼女はそう言うが、かなりの難易度だ。

 合金を作る訳では無く、二つの金属を使って、内側と外側の二つの部分に分かれた、一本の大剣を作製するのである。


 徒弟にも手伝わせ、炉に火を入れる。まずは中心部分になる碧銀鉄鋼の延べ棒を溶かす。

 しなやかさを持つ碧銀鉄鋼を中心部にする事で、衝撃を吸収し、折れにくい武器に仕上げるのだ。


 碧銀鉄鋼は加工し易い金属でもあるが、外側の真紅鉄鋼につなげる魔力回路を生成するのは骨が折れる。


 まずは火花を散らして不純物を取り除き、しなやかな金属をさらに鍛え上げ、そこに魔力回路を生成し、風の精霊結晶を溶かし込む。

 これは一回で成功した。


「おお、後は外側の真紅鉄鋼の部分だな」

 ダリアとラピスは食い入る様に、鍛冶作業を離れた場所で観察している。


 今度は炉の中に燃結晶を追加して、さらに高温で真紅鉄鋼を溶かし、金鎚で叩いていく。

 不純物を取り除いて鍛えた真紅鉄鋼を二つに分けて、魔力結晶を加えると共に、出来上がった碧銀鉄鋼に、簡易魔力回路を作る「魔結液」(なめし革などに使う()()()()()()()()()()()()()()())をり込む。


 薄く伸ばした真紅鉄鋼で挟み込むようにして二つの金属を重ねると、後は俺一人の力で魔力回路の生成を行う。


 中央の風の力を付与した(碧銀鉄鋼の)魔力回路と、火の精霊結晶を溶かし込んだ(真紅鉄鋼の)魔力回路が結び付き、しっかりと繋がったのを確認する。

 魔力回路が断ち切れないよう注意しながら、しっかりと大剣が形を成し、鋭い剣先に至るまで魔力回路が生成されているのを確認すると、水の中に入れて大剣を冷ます。


「完成だ」

 さすがに見ているだけでも疲れたのだろう。ダリアとラピスの二人──の後ろに、フレジアも加えた三人は、暑さと、長時間の大剣を打つ作業を見届けて、乾いた拍手を送ってくる。


「なんだ、なんだ。気の無い拍手だな。一回目で成功したというのに」

 ダリアは「剣を作る作業って、こんなに大変だったっけ……」と汗をぬぐっている。


 魔力回路を生成しながらの作業だ、通常より多少は手間暇てまひまが掛かるのは否めない。

 ともかく、一応の形が出来た大剣を見せると、彼女らに帰るように言い、明日までにはさやつかなどを付けて完成させておくと告げ。


「もし良ければ、明日の冒険に参加してくれ」と声を掛けると。

 ダリア達は互いの顔を見合わせ。

「わかった、明日そっちの拠点に顔を出す」とダリアが返事をしたのであった。




 彼女達が帰った後も俺は作業を続け、大剣の刃を磨き、つばに真紅鉄鋼で作っておいた物を取り付け、柄頭つかがしらには碧銀鉄鋼と翠玉エメラルドを使った美しい物を用意した。


 鞘も真紅鉄鋼と碧銀鉄鋼を使って作った、装飾にもこだわった物に仕上げる。

 徒弟達に助言を授けながら、そうした作業を終えると、大剣を保管庫にしまって、宿舎へと帰って行った。

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