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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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火の神が住まう都市「フレイマ」

 フレイマに辿り着いた時には、すでに「あか陽炎かぎろいの旅団」の連中が歓迎に来てくれた──はっきり言おう。俺は喧嘩する気満々で、背中には昔冒険で使っていた大剣を背負って来たほどだ。

 ところが相手は意外に紳士的で──というかむしろ謝罪されたほどであった。


「申し訳ない、私は『朱き陽炎の旅団』団長のアブサウドという者だ。今回の事は私の監督不行き届きだ。錬金鍛冶師のあなたには申し訳ない事になった、心からお詫びする」

 彼はそう言って腰を折って頭を下げた。彼の背後に居た、おそらく旅団の部隊長などの面々も頭を下げる。


「そして二人にもだ、すまない。こんな事になっていたとは、汗顔かんがんいたりだ。許して欲しい」

 アブサウドはそう言うと二人の少女に対しても、俺にしたのと同じ様に深々と頭を下げてユナとメイを困惑させた。

 どうやらこの男は本気で、今回の問題に対し謝罪する気でいるらしい。


「旅の疲れがあるところを申し訳ないが、このまま火の神ミーナヴァルズの裁定の間に来て頂きたい。我々も驚いているのだが女神はあなた達が来ると知っており、こうして街の入り口で我々に待っているよう伝えて来たのです」

 俺はすぐに頷いた。むしろありがたいくらいだった。俺の中にくすぶっていた感情は、団長の謝罪する姿勢で大分落ち着いて来たが、今すぐにでも裁定の場で発言して──というより、恥知らずにも少女の形見の銀の腕輪を奪い取ろうとしている、そんな連中を叩きのめしてやりたいと心底思っているのだ。


 俺は団長らと共に火の神の神殿の側にある、裁定の間と呼ばれる建物の中に入って行く。

 そこは広々とし、高い天井と美しくも荘厳そうごんな雰囲気を醸し出す装飾が施された広間であった。

 大きな柱に囲まれた広間の先に居るのは、顔の上半分を大きな紅玉ルビーの仮面で隠した──火の神ミーナヴァルズとその女神を支える巫女達の姿。彼女らは橙色の法服ローブを身にまとい、巫女は女神の錫杖しゃくじょうを持ってその横に控えている。


 俺達は女神の前に整列していた冒険者の連中──間違いなく今回の騒動を起こした奴ら──の前に並ぶ事になった。もちろんアブサウド達は俺とユナ、メイの前に並ぶ連中の側に立つ事になる。


「よく来てくれた。遠い所からわざわざ来てくれた者達には、我が都市の旅団の事で迷惑を掛けた事を申し訳なく思う」

 火の神の横に立つ巫女は一歩前に進み出ると、女神の言葉を代弁してそう言った。

 続けて火の神は巫女に耳打ちする様に声を掛ける。


「はっきり言おう。私は今回の出来事を良く理解している。しかし、物事の責任を負うのはいつだって人間なのだ。ゆえに私は責任ある人間の判断を尊重する」

 そのような前置きの後で「朱き陽炎の旅団」の側の人間から、今回の事件における第八小隊及び第七小隊の発言の抜粋が述べられた。


「それでは聞こう。もちろんユナが、自らの母親の形見である銀の腕輪の所有者であると、そう主張するのは当然の事である。故にここは変則的ではあるが、問題の腕輪を錬成し、昇華錬成を成し遂げる事となった錬金鍛冶師オーディスワイアに聞こうではないか」

 女神の巫女がそう言うと、俺の前に並んでいた「朱き陽炎の旅団」達の数名からざわめきが起こった。そいつらは口々に「オーディスワイアだと……あの、金色狼こんじきおおかみのオーディスワイアか?」などとささやき合う声が静まり返った裁定の間に響く。


 巫女の「静まれ」という声に、一瞬で静寂せいじゃくが訪れる広間。

 俺の横ではユナとメイが、自分が所属する旅団の団長など地位が高い者達が驚きの声を上げた、オーディスワイアという鍛冶師をまじまじと見ているが、俺は彼女らに頷き掛けると声を発した。

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