混沌についての考察
少々、小難しいお話を差し挟んでの、世界の描写などを……
ただし、ここで語られているのは、あくまでオーディスワイアさんの「考える」《混沌》についてのお話です。事実ではありません──たぶん。
混沌とは何か?
俺は、この問いにある仮説を用意した。
それは抽象的かつ、曖昧な言葉で説明する事になるだろう。
このフォロスハートでは、「混沌とは、全てを否定する虚無」と思われているが。
俺の考えでは、「否定したもの全てを内包する『無』」なのではないか、という仮説を推したい。
混沌は、おそらく、触れるもの全てを呑み込む闇であり、その中には全てが乱雑に、時間も空間も無く存在し続けているのではないか。
混沌の中に、混沌を打ち倒す力があったとしても、それは不思議な事では無い。
何故なら混沌は、全てを呑み込むだけであり、消滅する事に危機など感じないのであるから。
物質的な、精神的な、空間的な、時間的な──あらゆるものを否定する無。
そして、それら否定したものを、自らの中で絶えず生滅を繰り返させ、時に歪んだ世界(混沌の影響が強い大地)の中に、世界(の記憶)を復元させ、無限に同じ物を生み出し続ける源泉にもなる。
またある時は、内在する争いの中から(混沌の中では、何かが調和する事は無い)生み出された獣や魔物を解き放ち、質量や魔力を以て戦い争う力を振り翳す。
混沌も、世界の一部に過ぎないのかもしれない(争いはどこでも起こるものだ)。
しかし、そうだとすると、このあまりに強大で、意思も目的も無く、自らの領域を広げる事しか知らぬ闇は。いったい何を望まれて、誰に生み出されたのか。
それは「神」なのだろうか?
神が居るのなら。今、そいつは何をしている?
少なくとも四大神から聞いた話では、(その時は精霊に過ぎなかった)彼らの上位存在ですら、最後(混沌が世界を呑み込み始めた日)には念話(?)に応える事も無かったという──
それから推察すると、神は混沌に呑まれて消滅したか、混沌から逃げて、今なお逃げ続けて。
自分が関わった(創り出した)世界の事など忘れ去っているのではないか。
という事だ。
まあ、そんな神が居たところで、混沌に覆われたこの世界では「ケツ拭く紙にもなりゃしねぇ!」、と言う奴だ。
神だけにな。
冗談はさておき。
混沌とは、無限の虚無であり、全てを破壊し、再生し、それらの全てを内包する──空間であり、時間であり、──もしかすると「存在」ですらある何か、である。
我ながら説明になっていないなと思いつつ、そう言うしかない。
混沌は、あらゆる物質や生命にとって「滅び」だが、混沌にはそうした自覚がある訳では無い。
意思が無いのだから。他にどうしようも無いのだ。それ(全てを虚無へと還し、その無限の闇の中で、滅びと再生を繰り返す事)が混沌にある本質。
その顕れが、各(混沌の影響を強く受ける)大地に、物質や生物を再生させる、といった現象として立ち現れるのだ。
まるで夢の中の出来事の様だと──俺はときおり思う。何度も何度も、同じ夢を見続けさせる悪夢の様だと、そう思わずにはいられない。
混沌の正体は、世界の外側で膨張した──、世界が見る夢なのだと。そう言われたら、信じるかもしれない。
混沌の中では滅んだ世界も、何度でも繰り返し、始めから終わりまで。まるで映画でも見るみたいに、何度も何度も上映されているかもしれないのだ。
終わりの無い悪夢として──
あるいはもう一つの想像では、混沌は神によって創り出された──という考えがある。
この場合、混沌は、いわゆる兵器。世界を初期化、または消去しようとして送り込まれたものだという事になる。
そう、神は、自ら生み出した世界を滅ぼす為の開閉器を押したという理屈。
最悪の台本だ。
いや、混沌が広がっている現実には変わり無い。理由など最早どうでもいい、混沌を退けられるなら。
神が混沌を創ろうが。
世界が混沌を求めた結果だろうが。
あるいは、ただの偶然の産物だろうが。
混沌が不可解で底知れぬものであったとしても。
混沌を滅ぼす──、それが不可能であるなら。
せめて自分達の生存圏から混沌を排除したい。
俺の最高最大の願い、目標はそれだ。




