混沌を討つ武器
いつの間にか七十万PV達成です。
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まずは各金属と、「混沌鉄鋼」の結び付く物を探す為、錬金台に乗せて一つ一つ「解析」をする。
どうやら他の物質とも、結び付きを得る事は出来るらしい。
ただし、金と銀。聖銀鉄鋼の三つとは調和し得ないようだ。
そこまで確認したところで、俺は床に膝を突いてしまった。
迂闊だった。まさか魔力や精神力を使い過ぎて、精神虚脱になりかけてしまうとは。
先程、自分自身に解析を掛けた時に気づくべきだった。あの時は別の事にばかり気を取られていて、自分の状態に気を回せなかったから無理も無いが。
「……やべぇ、意識が──────くっそ……まだだ、ここで──倒れる訳には……いかん!」
棚に手を伸ばし、魔力回復薬を掴むと、その中身をぐいっと飲む。
「ふぅぃ──、少し、調子に乗り過ぎたな。気をつけよう……」
魔力回復薬は貴重なので無駄にはしたくない。
もう少し混沌鉄鋼を調べていたいのだが。──「魔力回復速度上昇」効果を付与した首飾りを身に付けておく。
最近は、すっかり「解析」を使いながら作業するような事が無かったので、魔力が欠乏する状態を失念していた。
新しい素材などは、色々と調査してみないと分からない事が多いが、慣れ親しんだ素材は知識と経験で知っているので、解析を使いながら作業する負担は無くなる。
「しかし、混沌に対する効果的な武器を作れるかもしれない機会だ。魔力回復薬をケチってる場合じゃねぇ!」
俺はさらに混沌鉄鋼の持つ性質を、どのようにして他の物体に移すかを考える。魔力回復薬の瓶を握りながら。──そこへ、ドアを叩く音が。
「あの……昼食休憩には行かないんですか」
サリエの声がする。
もうそんな時間か。
俺は研究室を出ると鍛冶屋を閉めて、二人の徒弟と共に料理屋へ向かい、昼食を取る事にした。
彼ら徒弟は、基本的な武器や防具の作製を出来る程度にはなっているので、練習を含めて「黒き錬金鍛冶の旅団」の新人達に与える武器や、防具を作らせようかと提案する。
ケベルもサリエも、そうした機会を与えられる事を喜び。今日、新人達が訓練から帰って来たら、さっそく身体測定をして、どういった武器防具を装備したいかを尋ねると言う。
「本人の意向も大事だが、訓練を指導している教官の意見も聞いておくと良い。素早い動きを得意としている奴に重い防具を着せるのは、長所を潰してしまうからな」
そういった失敗の無いようにと言いながら、テーブルに並べられた料理を口にする。
今日は俺が奢ると言って料理を注文し、一人一人の主料理と、三人で摘める大皿に乗った肉料理も頼んで──、量が少し多くなってしまった。
だが二人の少年少女は、旺盛な食欲でそれらをぺろりと平らげてみせ、俺を安心させる。
こうした弟子達との食事中にも俺の頭の中では、混沌を打ち倒す武器の開発についての着想を得ようと、色々と試行錯誤を──、いや。思考錯誤を重ねていた。
料理を食べ終えた俺達は、すぐに鍛冶屋へと戻り、各々の作業に戻る。
俺は頭の中で、いくつかの方法で、混沌鉄鋼の性質を移す方法を考えついていた。後は、これらのやり方で上手くいくかを試してみるだけだ。
研究室に戻ると鋼で作った長剣に、混沌鉄鋼と魔力鉱石、「混沌の爪」か「混沌の牙」を錬成台に乗せ、攻撃力強化と共に、対混沌の効果──仮に「対混沌攻撃力」とでも付けておこう──を付与する錬成を行う。
予想通り、攻撃力強化だけで無く、「対混沌攻撃力」にも数値の上昇が得られるらしい。同じ「混沌」の魔物から取れる素材との相性が良いのだ。
とにもかくにも、別の金属などに効果を移せる事は判明した。
この他にも多くの材質の武器に付与できるかを試し、より強力な性能を持つ組み合わせを見つけ出す事が求められる……
そこで、一つ思いついた事を試してみた。
分解した混沌結晶の内の「混沌灰」以外の物を使って、錬成をするというものだ。
元々あった物を、改めて一つにする意味があるのかと思うだろうが、魔力を消滅させたりする「混沌灰」を取り除いて武器に錬成する。という作業は、思った以上の効果を引き出した。
数値にすると、混沌の牙などと一緒に付与した場合よりも、五倍近い数値の上昇が得られたのだ。
「やったな……混沌結晶の中の背反する力の中から、有効に使える物をわけてやれば良かったのだ。これで俺達は、混沌に対する強力な武器を手に入れられたはずだ」
後は他の錬成効果との組み合わせも考えて、より良い強化を探っていくだけだ。
こうして新しい力。
新しい武器が、人類の手に齎されたのである。




