混沌を打ち破れ!
混沌結晶を錬成台に乗せ。結晶を構成する要素を細かく分析して、それぞれの物質に分離、結晶化する──。
それらに名前を付けるなら、真っ黒な小さな金属の欠片「混沌鉄鋼」
魔力などと感応し増幅する「混沌純結晶」
魔力などを消滅、無力化する力のある「混沌灰」
混沌を吸い寄せる「混沌吸着結晶」
そして「混沌多色玉石」、あるいは「混沌金緑玉石」とでも付けたい、七色、または金属色に光る。艶やかな丸い石。
この石は、どうやら各属性に反応するようだが──研究が必要だ。
一応、各属性の能力を引き上げる可能性は示しているが、思ったほど上昇しないのだ。他に秘密……隠された意味があるのかもしれない。
俺の中の錬金術師としての直感が、そう囁いているのだ。
「混沌灰」も、キラキラと明滅する、奇妙な黒い粉の様な結晶体だ。風に乗って飛び散ると厄介なので、瓶に入れて保管する。
これらの物を融合しているのが「混沌結晶」の正体な訳だが、混沌結晶を分解すると、これら五つの物は、決まった量が取れる訳では無いのだ。
「混沌鉄鋼」については、大抵の結晶から取れる量は少量と決まっているが、それでも物によって量が、無作為な感じで増えたり減ったりする。
他の物も、どの物質がこれだけ取れる、という法則性は無い。物によっては「混沌灰」ばかり取れる結晶もあった。
ともかく言える事は「混沌吸着結晶」が、これらの物体を繋ぎ合わせて結晶化した物が「混沌結晶」であったらしい。
混沌結晶を分解する度に漏れ出る「何か」(第六の物質(?))は、直接「混沌吸着結晶」に取り込む事は出来ないらしい。
不可解だが、一度、人間の頭(脳)に入り込み、定着しないと取り除けないのだ。
こうなると、頭の中の成分や脳細胞と結び付いて、物質化している(?)と疑わざるを得ない。その考えに辿り着いた時、俺がどんなに恐怖したか、分かるだろうか。
もしかすると、脳の中の重要な何かを、混沌結晶を分解する度に、失っているかもしれないのだ。
俺は、一瞬。吐き出しそうな気持ち悪さを感じたが、錬金術師としての好奇心が上回った。
一度、正確に自身を「解析」し、それを魔法の記憶領域に保存しておき。それからもう一度、混沌結晶を分解して、頭(脳)に「混沌吸着結晶」を近づけて、混沌の微粒子(?)を取り除いてから、自分自身を「解析」し、先程の記録したものと比較してみた。
──────ところが、何も変わっていなかったのである。
俺は心底ほっとした。
何も増えていないし、減ってもいないのだ。
脳だけでは無い。身体のあちこちを比較しても、何も変わらなかったのだ。
もちろん記憶もだ。何かを失った、という事も無い。──はずだ、今のところは。
では何故「混沌結晶」を分解すると、人の頭に入り込み、意識を混濁させるような現象を引き起こすのか。
これから説明する事は、ただの推測に過ぎない。
混沌は意識を持たないから、意識を持つ者の中に「何か」を見出だそうとしている。──のではないだろうか。
その意識の在処である脳に入り込み、意識に関わりある部分に接触して調べている為に、意識の混濁を引き起こしたのではないだろうか。
いずれにしても、気色悪い事だ。
混沌結晶の分解には、こうした謎の危険がある事は、真っ先に警告しておくべきだろう。
ある程度、結晶を分解して得られた物体が溜まったので、今度はこれらを詳しく解析し、研究する事にしよう。
多くの物体を魔力と関連づけて調べたが、その他に対する効力も持っていると考えるべきだ。
特に「混沌鉄鋼」と「混沌多色玉石」は、「解析」で調べても判然としない。
ふと、この「混沌鉄鋼」が、どのくらいの硬さがあるのかと思い、他の金属を削るように引っ掻いてみたが、それなりに傷を付けられる事は分かったが、それだけであった。
いずれにしても、この小さな金属の欠片だけでは、武器も作れやしない。
もう一つ、気づいた事がある。
「混沌吸着結晶」についてだ。
このなかに、頭から吸収されたモノが溜まっているのだ。
黒い、影の様なモノだ。
段々と透明の水晶が黒ずんでいくのである。
結晶の一部。外側に黒い小さな塊が出来ていた。
何故だろう。俺は手にしていた「混沌鉄鋼」の欠片、その尖った部分で、黒く変色した部分を削ぎ落とそうとしたのである。
まるで、砂を削る様な感覚。
あっさりと黒ずんだ部分が欠け、削れた部分が消滅したのだ。
「おおおおぉっ⁉ これはまさか、もしかすると──⁉」
驚いた事に、混沌を滅ぼす力は、その混沌の中から生まれる金属にあるらしい。
この金属片から直接武器を作る事は(物理的に)不可能だ。
それなら、この金属片に宿る力を、錬成で他の金属の武器に移す方法を考えるべきだ。
「光明が見えてきたな……!」
俺の中の錬金鍛冶師としてのやる気に、混沌の闇を打ち払うほどの火が付いたのを感じる。
「やってやる……! やってやるぞぉぉ‼」
俺は研究室で咆哮した。
ここで書かれている「混沌」が何をイメージして書かれているか、分かる人には分かってもらえるかと……
でも、あくまで混沌結晶から分析したものであって、混沌を直接研究してないんだよなぁ……




