中央都市に開く転移門
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翌日の朝に管理局の鐘が鳴った。
何か、重大な発表がある時などに鳴らされる鐘の音。
朝食を食べ終えて、旅団の拠点に向かう途中で、その鐘の音を聞いた。
俺がレーチェと、混沌結晶の研究について言い争っていた時だ。
「いや、だから。混沌結晶の影響を、『混沌吸着結晶』を使って取り除けば大丈夫だろう。混沌結晶の研究で、新たな技術を発見できるんだ。ここでやらずに、引き下がってどうする」
「それは、分かりますが……しかし」
がらん、ごろ──ん。
がらん、ごろ──ん。
道を歩いていた時に、その鐘の音が鳴り響いた。
なんだ、なんだと、団員達と共に大通りの方に向かうと、そこには、すでに人集りが出来ていた。
大通りから続く管理局前に、掲示板が二カ所設置され、その前に人が集まっている。
仲間達の数人が掲示板を見に行くに任せ、俺は通りの隅に寄って、仲間が持ち帰る情報を待つ。
二カ所の掲示板を見に行ったユナとメイ、カムイとウリスらは戻って来ると、互いの顔を見合わせて頷く。
「なんだ、どうした。早く話せ」
すると四人は一斉に喋り、、「転移門が」なんたら言ったのは辛うじて聞き取れた。
どうやら新しい転移門が開いたらしい。
「しかも、旅団長の言っていた通り、海のある大地みたい」とメイが答える。
「おお、そうか。難易度はどれほどだって?」
「下級。と書いてありました。陸地は全体の十分の一以下で、ほとんどが海らしいです」
カムイが的確な答を用意して発言し、「団長の夢が正夢になりましたね」とも言う。
俺はすぐに、この海ばかりの世界で必要になる、船と網をどう調達するかを考えた。作る以外には無いが、船を造る技術は持っていない。
「いやいや、正夢で片付けるには、おかしいでしょ。転移門が開く事を当てるだけならまだしも、海のある大地だって事まで当てるなんて、あり得ない」
そう言ったのはヴィナーだった。彼女はなかなかに合理的な考えを尊重する女でもあった。
「知るかバカ! そんな事より船の用意だ!」
いきなりバカ扱いされて怒り出したヴィナーに、ネタだから気にするなと宥め。舟や釣り具、あるいは目の細かい網を作らなければならない、と俺は口にした。
「魚釣りなら私とレンに任せて」
エアは自前の釣り道具を持っていると語り、レンも釣り竿を持っていると言う。
「今日は、全員で新しく開いた転移門の調査に行くとしよう。エアとレンは海釣りを、その他は陸地を調査する。──下級と神々が判断したはずだが、油断はしないように。……よし、まずは拠点に戻ろう」
こうして全員で拠点に戻る事になった。
拠点に戻ると、すぐに四組に別れた班を決め、釣りに出るエアとレンにはヴィナーも付いて行く事になった。海の方が広いので、危険な生き物が居るなら海の中である可能性が高い。
そう説明し、釣りの最中も注意を怠らないよう言い含める。
旅団拠点での話し合いが終わると、団員達は装備を見直してから(エアとレンは釣り道具を取りに、一度宿舎に戻った)、転移門へ向かって行った。
鍛冶屋に行くと、徒弟達とも新たな転移門について話し合い、網を作る為の素材や、釣り糸などを効率的に作り出す方法などについて、話し合っていたのだが。──そうしているところへ、メリッサがやって来たのだ。
「網を作るので、糸を生産して欲しいのです」と言って来た。
なんでも、管理局の所有する古い資料の中に、海で漁をする時に使っていた網の形や、仕掛け方などが載っている物があるらしい。
「糸はこちらで寄り合わせて、長く、太い物に作りますので。網の作製と漁は、管理局主動で行っていく予定です」
もう釣りに出て行かせたが、と言うと、彼女は頷く。
「網を使った大々的な漁を管理局の方で行う、という意味です。釣り竿を使用しての漁などなら──今のところ、自由に行えます」
という返答が帰ってきた。
要するに乱獲してしまわないように気をつけよう、という事だろう。
ともかくメリッサの置いていった紙には、糸や網についての作製方法が書かれており、どうやら管理局は以前から、網を作り出す製法の研究を行っていたらしいと窺わせた。
「今回は、転移門先──『海の中の島』に石材や木材を持ち込んで、海の近くに造船所や、人々の寝泊まり出来る拠点を作る事が、もう決まっています。幸い漁を行う大きめの船の設計図もあるので、管理局の職員や職人が総出で『海の中の島』に向かっています」
管理局が予め、海での漁を想定して活動をしているのなら、漁具については管理局に任せる事にしよう。
これで明日から肉と魚、両方の料理が食卓に並ぶかもしれない。
結構な事だ。
資源も一時的にしろ、かなり増えると予想できる。
新しい転移門の開放は、それだけでフォロスハートに新しい風を送り込んでくれる。
俺は象徴武具を造る事を任されているのだ。俺のやるべき事は、こうした物を優先的に造る事だろう。
素材がある分は、徒弟達の手も借りて糸を錬成し、それが終わると、まずは混沌結晶の研究を先に済ませる事にした。




