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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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混沌の意識侵蝕

ちょっとわかり辛いかな……意識を乗っ取られていた訳ではありません。

ただ、意識と無意識の境が曖昧になって、若干無意識側に引き込まれ過ぎた、みたいな話。

危険ですよ、魔術の領域のお話ですけど。

 俺はその日から、文字通り、()()()()()()みたいに研究に没頭した。


 自費で混沌結晶を買い。メリッサに頼んでいた、管理局から混沌結晶を回収する依頼を出した件を尋ね、「魔法を無効化する指輪」と、その作製方法を教えて混沌結晶を貰った。

 彼女は何か他にも、報酬などについて言っていた気がするが、──覚えていない。


 俺は旅団の仲間からも心配されるほど、混沌結晶から引き出せる情報を求めて、実験を繰り返し、おこない続けていたようだ。

 自分では、よく覚えていないのだが。


 三日ほど、睡眠もろくに取らずに作業していたみたいだ。食事や睡眠も多少は取っていたはずだが、満腹を感じたり、眠ったりした記憶が無い。

 ()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()気がする。


 *****


 その間も、俺は団員達と一応の会話をし、普段と変わらぬ挨拶や、指示を出していたのだが、異変に気づいたのは、猫のライムだった。


 ある日、宿舎に帰って来た俺を見て、ライムが鋭い威嚇いかくの声を発したのだ。


「ちょっ、ちょっ、どうしたの? オーディスワイアさんだよ⁉」

 ライムをかかえながら、ユナが母猫ライムを落ち着かせようとする。

「なんだなんだ、ライム。どうしたんだぁ?」

 俺が手を伸ばそうとすると、彼女ライムは嫌がって逃げ出し、廊下を走って食堂へと駆け込んで行く。

 食堂から奇妙な悲鳴が聞こえた──レーチェの声だろう。


 ライムはレーチェの脚に飛び付くと、必死に何かを伝えようとしている、そんな様子だったらしい。


「な、なんなんですの⁉ この猫は! 誰か、この猫を何とかしてくださいな!」

 食堂にはレーチェの他にも、リゼミラやアディーディンクも居た。

 俺が食堂に入ると、久し振りに顔を合わせたアディーが、急に顔をしかめる。


「オーディスさん、なんか様子が……凄く()()()()()()()()

 リゼミラは気づかなかった。レーチェもだ。

 アディーは俺に「解析」の魔法を掛けてきた。


「……! オーディスさんから、()()()()()()()()()()よ! 凄く微量な──小さな物ですが。いったい何をしていたんですか⁉」

 俺はアディーに椅子に座るよう言われ、ここ数日間の事を思い出そうとしたが、ぼんやりとした曖昧あいまいな記憶を辿たどってやっと、混沌結晶を使った実験をしていた事を説明した。


 まったくもって意味が分からないが、俺はここ数日間。夢か現実かも分からない様な状態のまま、研究に没頭し、夢遊病者か何かみたいに、意識が薄弱な状態で──周りに居た仲間達が、多少の違和感を感じながらも、見逃してしまうほど、普段の俺と変わり無く見えていたらしい。




「危険ですわ。やはり混沌結晶など、安易に装備品に使う訳には……」レーチェが不安を口にしている。

 椅子に座った俺に、アディーが混沌の影響を取り除こうと、状態回復魔法を掛けたりしながら解析を続けている。


 ふと、混沌結晶を使った実験の事を思い出し、俺は夕食を食べる事も放り出して、鍛冶屋の研究室へ向かった。




 そこは鍛冶屋の奥にある、錬成台や作業台を設置した研究室で。机の上には乱雑に書き殴った紙で一杯になっていた。


「うわ、何ですか? この紙に書かれた字は……オーディスさんの字とは思えませんよ」

 付いて来たアディーが、そう言うのも無理は無い。俺が書いた物に違いないのに、まるで読めない様な物まで、そこに積み重なって置かれていた。


 俺はそれらを無視して、実験で作られた物が置かれた中から、一つの結晶を取り出す。


「これだ。これが()()()()()()()はずだ」

 アディーは頭(脳?)に混沌の反応があると言っていた。透明な水晶に似た結晶は、光をとおすと、水色よりもさらに薄い、蒼い色を映し出す。


 その結晶を頭の上に乗せて、アディーに確認するように言う。

「……あ、確かに。混沌の気配が結晶の方に──移って行くみたいです。──これは?」

 アディーは頭から混沌の影が消えたと言った。俺も、もやが掛かった様な気分から解放され、()()()()()()()()()()()()()()()──()()()()()()()()()()()


「この結晶は混沌を吸着する結晶だ。製造方法は、その壁の板に貼り付けてあるはず」

 壁に取り付けられた板には数枚の紙が貼られ、その中に汚い字ではあるが、結晶の作り方が書かれている。


「まずは混沌結晶を、その乱雑な結合状態から解放し、部分部分に分解する事に成功した。その内の一つから取り出された結晶を、さらに精製すると、この『混沌吸着結晶』が作り出せる」

 そう説明しながら、色々と他にも作ろうとしていた事を思い出す。


「そうだ。混沌が俺の頭に留まったのは、混沌結晶を分解する作業を始めてからだろう。おそらく分離したもの以外の、微粒子の様な物が、頭に入り込んで、俺の意識を混乱させたらしいな」

 俺が分析しながら説明していると、アディーやレーチェが「らしいな、じゃなぁ──い!」と、ハモって怒り出す。


「研究は一度、中止です! 混沌が頭に入り込んで意識を混乱? 危険極まりない!」

 とレーチェが言えば。

「吸着結晶などを作っていたのは良かったです。でも、団員達に実験の事は話しておくべきでしたね……」

 などと言って、俺を研究室から引きずり出すと、宿舎の方へ強制的に帰らされたのであった。

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