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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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レーチェの帰還と料理

 ライムと子猫の餌を用意する為に調理場へ来たが、ついでに()()()()()も用意しておく事にした。

 今日はエアネルとレンネルの双子が料理当番のようだが(調理場前の壁に貼られた当番表に書かれている)、レンはともかくとして、エアの料理の腕は──まるで期待できない。


 少しは槍の扱い以外も覚えて欲しいところだ。

 ……その双子は、今日は魔法を習得する為に、魔法屋へ行っているのだ。


「ずいぶん遅いな……昼食後に魔法屋に行ったとしても、そんなに時間は掛からないだろう」

 冷蔵庫から牛肉の蜂蜜漬けを取り出し、それを柄付き浅鍋(フライパン)に油を引いた所へ投入する。


 ジュ──ッと肉の焼ける音を聞きながら、別の小さな鍋に少し水を入れ、煮干しと豆を少量、茹でて軟らかくしたところへ、昨日余らせた炊いた米を投入する。


 すると足下にやって来たライムが、しきりに頭をり付けてきた。子猫の様子を見守っているとばかり思っていたが、俺の後を付いて来ていたようだ。


「まだだぞ、いいから子猫の所で待っていろ」

「ゥニャァァ~~」

 しっ、しっ、と手を振ると、不機嫌そうな鳴き声を上げて、調理場のすみに置かれた椅子の上に飛び乗り、そこに腰を落ち着ける。


 ご丁寧に、こちらを向いて座り込むライム。

 まるで料理の監視をしているみたいだ。

 牛肉をひっくり返すと、焼き色が付くまでコロコロと転がして、まんべんなく焼き色を付ける。


「いひゃぁっ⁉ 猫が……!」

 けったいな悲鳴を上げながら調理場に入って来たのは、レーチェだった。

 俺は「早かったな」と彼女に声を掛けつつ、ライムの餌が適当に温まったところで、火から下ろして皿に盛る。


 彼女レーチェは両腕に何かを持って、調理台の横にある、小さな手押し車の上に、それを置く。

 ライムは相変わらず、ちらりとレーチェに一瞥いちべつをくれると、プイっと顔を背ける。見ていると、文句を言い出すと思っているのかもしれない。


 俺はそんなライムの側に皿を置いて、餌を食べるように声を掛ける。

「ニャァ──」

 ライムは、礼を言うみたいな鳴き声を上げてから床に降り、皿の前に屈み込んで食事を始める。その横に牛乳を温めた物も用意してやった。


「調理場に猫を入れるなんて……」と、文句を言うレーチェ。

「それより、なんだその荷物」

 布の手提てさげ鞄に入った物を覗き込むと、様々な果物や木の実、野菜や卵、チーズに焼き菓子などが入っていた。


「クラレンスで取れた物ですわ」

 なるほど、土産みやげという訳か。

「妹さんは、どうなった?」

 生命の転輪護符の首飾りが、役に立ったのかと尋ねる。彼女は、ほっとした様な表情をして。

「ええ、あの首飾りの効果が出たらしく、体調が良くなったみたいだと。今朝、言っていましたわ。ありがとうございましたと、妹にも伝えておくよう念を押されましたわ」

 俺は「それは良かった」と、会った事の無い彼女の妹の容態を聞いて、少しほっとした。


「それと、今晩の夕食用に『煮卵の肉包み焼き』(ミートローフ?)を作った物を持って来たので、それを食べましょう」

 レーチェはそう言うと、肩に掛けた麻袋から布に包まれた物を取り出して、調理台の上に置く。


「へえ、誰が作ってくれたんだ──って、料理人を雇っているのか」

 ええ、まあ……。と応えつつ彼女は、コホンと咳払いする。

わたくしと妹で作ったのですわ。日頃からお世話になっている──あなたと、団員──仲間達の為に」

 少し照れた様に頬を染めるレーチェ。

 初めて見る表情かもしれない。


「あなたには、本当に感謝していますわ」

 彼女は改めて礼を言う。

「妹の為に『生命の転輪護符』を作ってくれて、ありがとうございます」

 俺は肉をひっくり返しながら、「ああ」とだけ応える。

 そんな風に改まって言われると、こちらも照れてしまう。

「物を作るのが、仕事だから──な」


 そんなり取りをしていると、食堂に()()()()と仲間達が入って来た。

 エアとレンも、慌てた様子で調理場に駆け込んで来る。


「──あっ、団長──と、副団長も。すみません、姉が、市外訓練場で()()()()()()()と言い出して……遅くなってしまいました」

 その後ろから姉が、調理場に飛び込んで来る。

「ええっ⁉ あんただって、魔法の威力を確かめるって、乗り気だったじゃない!」

 それとこれとは別だよ。とか言いながら弟は、調理に入ろうと手を洗い始める。


「蜂蜜漬けの牛肉は焼いているから、何か生野菜料理サラダでも作ってくれ」

 と声を掛けると、「それなら私が!」とエアが手を挙げた。

 その顔には「切って皿に盛るだけ」だし、といった思いがありありと見て取れる。


調味酢ドレッシングは置いておく、レン。ちゃんと見張っとけよ」

 俺はそうレンに声を掛け、ライムの食べ終わった皿を下げておく。

 エアの「ひどいっ」という叫びを無視して、ライムを抱き抱えると、レーチェと共に(彼女には子猫用の餌を持ってもらう)食堂へ向かう。


「こちらに顔を向けないように、押さえていて下さいな」

 彼女の言葉に「分かっている」と言葉を返すと、俺の腕の中でライムが大きな欠伸あくびをした。

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