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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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ユナの訴え

 ある日、ユナが一人の少女と共に駆け込んで来た。

 切羽詰まった表情の彼女はこう訴えた。

「オーディスワイアさん、私を助けてくれませんか」


 なんでもユナは昇華しょうか錬成をした銀の腕輪の力で、第八小隊から第七小隊へ昇格したのだという。ところが第七小隊内でも彼女の魔法の力は群を抜いていたーー当然だ。昇華錬成した力は通常の規格に当てはまる物ではない……と言っても自分もその本領という物を、理解していなかったようだ。


 彼女の力を妬んだ第八小隊のーーおそらく彼女の形見の腕輪に「四大精霊の加護」を付けるよう精霊結晶や魔晶石を渡したーー奴が今更、「その腕輪に使った素材は私達第八小隊が集めた物で、腕輪は私達の物だ」と主張し始めたのだという。


「ふざけんな」

 と言ったのはユナが連れてきた目つきの鋭い少女ーー身体を見れば分かるが、なかなかの武闘派であろう。首や腕の筋肉を見るとしなやかでありながら強靭で、拳は小さいが鍛えられたものであるのは明白であった。

 この少女は第七小隊の一員で、ユナとは何度も共に探索へ赴き、頼れる仲間としてユナを認めているようだ。全身を武器にした体術の使い手で「小さな鬼神」などと呼ばれていたらしい。


「私、メイ。よろしくお兄さん」

 少女は言った。ユナが紹介した通りかなり無口な少女であるらしい。

 だが俺はこの娘が気に入った。俺を「おっさん」や「おじさん」と呼ばなかったからだ。


 ともかくメイは当の本人以上にぶち切れていた。しかも第七小隊の隊長までもがユナの腕輪の所有権を主張して、ユナから取り上げようとしたらしい。

「ふざけんな」

 ともう一度メイが口にして、殺気に似た物騒な気配を漂わせる。鍛冶場に入って来た猫が怖がって逃げ出してしまったほどだ。


 メイはユナの味方をして旅団を抜けるとまで宣言したらしい。短い期間でユナは、強力で誠実な得難えがたい友人を得たようだ。


「話は分かった、それで? 俺はどうしたらいい?」

 俺はユナを守る為に、腕輪に「四大精霊の加護」を錬成した者として都市フレイマにおもむき、「あか陽炎かぎろいの旅団」の連中と都市を治める神ーーつまり火の神「ミーナヴァルズ」の裁定の場で証言する事になった。


 もちろん俺は、ただ証言する事を求められているだけだが、俺にはその旅団と火の神に言ってやりたい事があるのだ。


 そう、メイの言葉を借りるなら「ふざけんな」と言ったところだ。

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