エウラの為の籠手を作る
高い評価を頂き、嬉しいです。
感謝します。
続けてエウラの為の籠手を作ろうと考えた。
竜素材を能力解放錬成して「衝気増加」を付与した物を作るので、「銀鎧竜鉄鋼」から作れるのだ。
銀鎧竜の甲殻から精製した金属は、甲殻を溶かす程の温度を必要とはしないので、燃結晶を三つ使うくらいでも(それでもかなりの高温になるが)延べ棒は溶け出す。
これでエウラの腕に合わせた籠手を作り始める。
重要なのは籠手から手に持った剣に、衝気増加効果を与える工夫を必要とするところだが、これは手に付ける竜皮を使った手袋状の物に、簡易魔力回路を通す事で解決できる。
金属製の籠手の内側には皮や布を張り付けるので、その一部の素材に手を加えるのだ。
鞣し革を作る作業工程の中で、簡易魔力回路を生成する。それほど難しい作業では無い。
次からは徒弟達に任せても大丈夫だろう。
白色に近い朱色の光を放つ、焼けた金属を金鎚で叩き、不純物を打ち出しながら金属を鍛えていく。ケベルと金鎚で叩き続ける音。
「カン、キン、カン、キン」と小気味良い音が鍛冶場に響く。
叩く度に火花が飛び散る。
流れる汗。
燃え盛る炉の中に金属を入れ、軟らかくなると折り畳み、火花が出なくなるまで金鎚を振り下ろす。
そうして鍛え上げた金属に、「硬化結晶」と「不銹結晶」を加えて再び熱し、軟らかくなったところで、丸みのある金属の型に押し付けて曲げる。
耐熱手袋を使って体重を掛け、腕の外側を守る部分を作り出す。
細かな部分を調整しながら、大体の形を決定した。
手首を守る部分も作る。こちらは緩い曲がりの小さな金属板に加工するので、ケベルとサリエに作らせる。
熱が引いた金属を、歪みが無いように削って滑らかにすると、表面が鏡の様に光を映し込む。
籠手の内側に皮と布を張り付け、手首を守る小さな金属板を留め金で止め、籠手の端を真紅鉄鋼で作っておいた細長い、コの字型の金属棒で挟み込みんで固定しておく。
手首の部分は可動できるようにして、剣を振り回す邪魔にならないように設計する。
籠手に革帯を二カ所、取り付けて腕に装着し(籠手をサリエに付けさせて、邪魔にならないか確認する)、細かな部分を調整して、籠手の形は完成した。
これに錬成して、様々な効果を付与する作業に移る。
難しい事は無いが、淡々と、一つ一つの素材を正確に配置して、籠手を強化していく。
「衝気増加」「気力増加」「気力回復速度上昇」「防御力強化」を付与し、鑑定して納得できる数値が出たのを確認すると、鑑定書を書いて、それを保管庫に持ち込んだ。
*****
今日は少し早いが、鍛冶屋を閉める事にした。せっかくアラストラが休みらしいのだ。出来上がった魔法の槍を届ける事にした。
鍛冶場の片づけや、居残り修業は徒弟達に任せ。槍を簡単に布でくるみ、それを持って建物の外へ出た。
外の方がやはり涼しい。空気が入れ替わっても、熱くなった建物の壁や炉が、室温を上昇させているのだ。
蒼髪の天女旅団の拠点に行くと、開かれた門から建物に向かう。
建物に入ると、適当な若者に声を掛けて、アラストラを呼ぶように頼んだ。
やはりあの男は、相当に団員達から慕われているのだろう。若者は「はいっ」と返事をして小走りで去って行く。
アラストラはすぐに出て来た──。休みの日くらい、奥さんや子供の居る自宅に戻らんのか? そんな事を思いつつ、槍を軽く振り上げて挨拶を交わす。
「おいおい、もう完成したのか」
と、驚きの声を上げて俺を迎えるアラストラ。
「そりゃ、失敗しなかったらな。一発で成功するとは俺も思わなかった。──まあ、出来を見てくれ」
そう言って布から魔法の槍取り出す。
白銀に輝く槍。
その光の反射の中に、青や緑の細かな模様が見える。
魔力回路の流れに映る、水と風を表す力が映り込んでいる証だ。
「おお、凄いな! 槍の攻撃を強化する効果が複数付いて……ありがたい」
鑑定書を見たアラストラが声を上げる。
「しかし、槍をまるまる同じ金属で造る必要は無かったな。全体の魔力回路を一緒にしなくても、穂先と柄を別々の素材で造っても、性能に大した違いは出ないらしい」
アラストラはそう聞いても「そうなのか」と返しただけで、槍の完成度には満足しているらしい。
「早速だが使い方を教えてくれ」と言うアラストラに、斬撃や突きの攻撃を飛ばす「飛翔斬(突きの場合は『飛翔突き』か?)」と「爆裂斬」、「爆裂剣(槍)」などの使い方がある事を教える。
「刃に魔法の刃を重ねる心象か──おぉっ⁉」
拠点に隣接する広い訓練場で練習しようと、「魔法槍」を展開するアラストラ。白銀色の刃から、緑色の光の刃が伸びる──まるで、槍の先に剣が付いたみたいな長さになる。
「これで斬ったり、撃ち出したりする訳か」
そう言って、遠くに置かれた練習用の丸太人形に向かって構える。
「加減しろ。練習なら弱い力で充分だ」
そう言った瞬間には、アラストラは人形に向かって魔法の槍を薙ぎ払っていた。
「ぉおおぉっ‼」
周りで見ていた団員達から歓声が上がる。
数メートル先にあった分厚い丸太人形が二体分。引き裂かれて地面に崩れ落ち、辺りには颶風が吹き荒れた様な惨状に見回れた……
「……加減しろと言っただろう。──なんにせよ、怪我人が出なくて良かった」
こうして細かな注意点を改めて説明し、アラストラから作製報酬を受け取って、蒼髪の天女旅団の拠点から宿舎に帰る事にした。




