銀鎧竜の甲殻から金属を精製する
翌日は冒険に行く者は少なかった。
ユナとメイ、カムイとヴィナー、ウリス、エウラなどが冒険に出た。
リゼミラと共に上級の転移門先へ向かったのは、カーリア、ユナ、メイの三人だった。彼女らは上級難度でも成果を出せる、そんな自信を持つ為に頑張っているのだ。
リゼミラは、二本の魔法の剣を振り回したくて仕方が無いだけであろう。
リトキスなどには、新人達を使えるようにする為、市外訓練場へ彼らを連れ出し、鍛えてやるよう指示を出しておく。
彼ら新人が冒険に出る時の事も考えて、武器や防具なども作ってやろうとは思っている。
幸い金属の延べ棒は、かなりの量が倉庫に積まれている状態だ。
エウラには「衝気増加」を付けた籠手を作ってやる事も約束した。
他にも、「蒼髪の天女旅団」の上級冒険者アラストラの為の、魔法の槍を作ってやる約束も果たさなければならない。
これらの事を考えながら、昼前までは依頼された仕事をこなすのに追われた。
午後になると昼食休憩の前に、管理局に出張って、「生命の杖」をパールラクーンの神アヴロラに届けてもらう事にした。
自分で届けに行きたいところではあるが、やるべき事が山積みなのだ。
木箱の中に杖の形に作った緩衝材を入れ、その中に杖を納めて、さらに白い布でくるんだ物を運んで行ってもらう。
管理局の信用できる、外交官的な立場の人間に運ばせると決まった。
管理局の部署「大地外対応局」では、オーディスワイアの名は、神アヴロラに謁見を許された者として有名であるらしい。
本人の知らぬ所で妙な浮き名を流されている気分だ。
俺は、女神に対する感謝を述べた手紙をその荷物に付けて、乱暴に扱わぬように言って、それを預けた。
*****
帰り際に料理屋で料理を注文し(涼しくなったせいか、ラーメンに似た料理が作られていた)、汁の中に麺を入れたそれを食べてみたが、やたらとあっさりした汁と細い麺で、ツルツルと食べてしまい、気づいた時には麺が無くなっていた。
柚子っぽい香りと──生姜を使った、さっぱり味のラーメン……っぽい料理だ。
「これはこれで旨いが……こってりした物が食べたくなるな」
そんな感想を漏らしつつ、鍛冶屋に戻る。
鍛冶屋にはまた、新たな仕事の依頼が入っていた。
簡単な錬成を数件済ませると、アラストラから貰った銀鎧竜の甲殻を溶かして、金属を取り出す作業を始める。
なにしろこいつは鍛冶屋を改築して、炉を最新式の物に替える切っ掛けとなった代物だ。
炉の中に大量の燃結晶投入し、赤々と燃え上がった灼熱の溶錬炉の中に甲殻を入れて、溶かしていく──
なんという偶然だろう。
その作業をしている所へ、アラストラがやって来たではないか!
「うぉっ……! 凄まじい熱気だな」
「アラストラ! 今ちょうど、以前に貰った銀鎧竜の甲殻を溶かして、金属を取り出しているところだ──! くそっ、熱すぎる!」
ごうごうと音を立てて燃え上がる炎。
アラストラは少し考え込んだ。
「せっかくだ、それっぽっちの素材を金属に替えるより、もっと大量にあった方が良くないか?」
「ああ⁉ なんだって?」
ごうごうと燃える炉の前から退避する。
「銀鎧竜の甲殻が余っている。それを持って来よう。そちらの方が効率がいい」
そう言うと彼は、こちらの話も聞かずに早歩きで鍛冶場を出て行った。
確かに今ある分では、武器二本分くらい量しか取れないだろう。
しかし、熱い。さすがに溶錬炉の前で数年間過ごしたケベルも、この燃結晶を大量に投入した炉の熱は厳しいものであるらしい。
「すごい……こんな熱さは初めてです」
水を飲む事を勧めながら、自分も冷やした水を陶器容器に入れて飲む。
しばらくすると、ドロドロと炉の中から溝を通って、白銀色の溶けた金属が流れ出してきた。
それを分厚い容器の金型に流し込みながら、数本分の金属の延べ棒を作っていると、鍛冶屋に数人の若者がやって来た。手にはそれぞれ、銀色の甲殻を大量に持っている。
「団員に持って来させたぞ」
アラストラが、大量の銀鎧竜の甲殻を、縄で縛った物を担いで現れた。
「おいおい、こんなにか⁉」
「まあ、全部とは言わん。これから一本でいいから、魔法の槍を作ってくれたら。甲殻は只で構わないし、魔法の槍の製造料金も払おう」
彼はそう言うと俺の肩を強めに叩き。
「なんにしろ、オーディスワイアが復活してホッとしているよ。それで様子を見に来たんだが、ちょうど良い時に来たらしいな」
いつも通り快活に笑うと「あついあつい」と言いながら、旅団の若手達と共に鍛冶屋を出て行ってしまった……
「すごい量を置いて行きましたね……」
「総額にしてざっと、七万ルキはありそうだな」
そんな物を惜し気も無く置いて行くなんて、豪快にもほどがある。
「ケベル! サリエ! 全部溶かして延べ棒に変えるぞ!」
俺はそう言ったが、延べ棒の金型が間に合わず。いくつかは板状に広げたり、溶かした金属を入れておく金属の桶の中に入れて、取り置く事になったのである。




