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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第七章 方舟大地の未来

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女神アヴロラへのお礼

 その後も魔法の剣を造り上げた。

 しかも二本。


 一つはリゼミラに渡す、火属性に対応した魔法の剣。


 もう一つは──象徴を盛り込んで造った()()()()である。


 これは俺の身体を治療してくれたパールラクーンの神、女神アヴロラに個人的な礼として──感謝を伝える物として渡す物だ。


 女神に贈る魔法の武具──杖の心象は()()()()、「()()()()()()()()」である。


 頂点に広げられた翼、杖に巻き付き交差する二匹の蛇。いくつか付け足してみた物もある。

 杖の頂点には金剛石ダイアモンドを付け、二匹の蛇には紅玉ルビー青玉サファイアの眼を取り付けた。

 翼は白金プラチナ。杖の上半分は金を使い、下半分には銀を使用した。


 ──超豪華な物になってしまったな──そんな風に設計図を見ながら思うが、変更する気は無い。

 生命を司る神に捧げる物だ。手を抜くなど、俺の魂が許さない。


 杖自体を作るのは比較的簡単だ──問題はその杖の周りを取り囲む蛇を形作る事だ。

 別々に作って、装飾として後から杖に付けるのは、上部の白金の翼や宝石などだ(白金の翼はサリエに依頼して作ってもらっている)。


 杖と別々の回路を構成するとしても、簡単にはいかない。

 杖に巻き付けるからだ。


 金や銀に魔力回路を造るやり方も、鋼などの武器を作るのとは、まるで違う。

 金鎚で叩く訳では無いのだ。


 初めから魔力結晶を溶かし込んだ金や銀を、魔法の手袋(耐熱性を上げた、鍛冶作業用に作った厚手の手袋)で金属を直接、手に持って、それを杖の形に伸ばしたり、ねじったりするのだ。


 金や銀は魔力との相性が良い為、簡単には回路が切れたりはしないので、その点は安心だが──

 金と銀には、魔力結晶と共に、霊晶石や各種の精霊結晶も溶かし込んでいる──。他の金属では中々できないやり方だ。金属内に一遍いっぺんに混ぜ合わせても、金や銀の場合はちゃんと調和して、安定してまとまるのだ。


 だが冷え固まる前に、杖の形を決めなければならない。

 粘土で作った型に流し込んで作るのが一番安定するのだが、えて違う手の込んだ手法を取る事にした。


 固まる前に細かな装飾を彫り込み易いように、道具で(特に蛇の鱗の表現などの)装飾を作りながら作業を進める。

「あつい」

 魔法の手袋をしていても、てのひらが火傷しそうだ。


 金属を伸ばして、金と銀の魔力回路をつなげるのが大変だった。

 細かく砕いた魔力結晶を二つの金属の間に付けて、接合する事が出来たのだ。


 二人の徒弟の力も借りて、蛇を巻き付けたり──何とかそれらしい形に杖を作り上げると、後は細かい部分の意匠デザインを彫り込んだり、蛇の頭を丁寧に掘り抜く作業に入った。

 サリエに翼の作製を任せ、丁寧に杖を造り上げる。


 金の蛇に紅玉の眼をめ込み、銀の蛇に青玉の眼を填め込んで、杖の頂点に金剛石を填め込む。

 サリエが作り上げた白金の翼の装飾を取り付けて、カドゥケウスの杖は完成したのである。


 労力を惜しまないで造り上げた魔法の武具が完成すると、徒弟達は「この変わった形の杖は何と言うのですか」と尋ねて来た。

 俺は少し考えた──、カドゥケウスはあくまで模範モデルとしたデザインだ。


「『生命の杖』だな」

 なんのひねりも無いが、この杖は四つの属性が混じり合い、さらに回復魔法を増幅する効果も持たせたのだ。


 見事に四つの属性が調和している状態は、美しい金と銀から成る、この杖の完璧な秩序を表しているみたいに見える。


 金の蛇と銀の蛇が絡み合い、白金の翼を広げる杖の頂きに向かって、輪を描きながら登る蛇達の姿は、地面を突き破って頭を出した芽の様でもあった。


 また一つ、究極の魔法の武具を造り出した──。そんな満足感を感じながら、この日の作業は終了したのである。

カドゥケウスの杖は、某国際機関がシンボルとして採用しています。

カドゥケウスの杖は「メルクリウスの杖」とも呼ばれ、錬金術では、お馴染みの象徴でもあります。

メルクリウスはトリスメギストゥスとも関係し~ え、うんちくはいらない? そうですか……

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