ウリスの首飾り作製
しばらく物作りの話が続くかも……次話はカドゥ○ウスを作る話。
気づくと魔法の剣を造る準備をしていた。
依頼を受けた鋼の剣は保管庫にしまってある。
まずはリゼミラの二本目の魔法の剣を造ろうと考えた。
あんなふざけた奴だが、旅団の一員となったからには、俺の分まで冒険で成果を出してもらうとしよう。
一本目を造った感覚が残っている内に二本目を造ってしまおう。──そんな風にも思っていたが、それはあまり意味の無い考えだろう。
一つ一つに集中。作業で大切な事はこれである。
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そういえば、すっかり忘れていたが、ウリスの回復魔法の効果を増幅する、装飾品か何かを作ってやるつもりでいたのに、簡易的な魔力強化を施した、腕輪か何かを与えただけで済ませてしまったのを、急に思い出した。
「こっちを先に作るとしよう」
まだ二人の徒弟も戻っていないし、魔法の剣を造る所はしっかりと見せておきたいのだ。
装飾品──弓を使うウリスには首飾りがいいだろうか。そう考えると、水晶を填め込んだ銀の首飾りがいいだろう。
……結局、サリエに装飾品を作るのは任せた方がいいか、という結論になった。彼女の技術を無駄にしない為にも極力、装飾品を作るのは彼女に任せようと思う。
彼女が昼休憩から帰って来たので、早速その事を伝え、水晶と銀を預ける。
「大きさは──首飾り? なら、さっき作った感じでいいでしょうか?」
胸飾りに似た感じで、裏面に装飾を入れて欲しいと、簡単な蔓草と花の合わさった意匠の絵を見せる。
「わかりました、任せてください」
彼女は自信を持ってそう答えた。
彼女がその作業を終わらせる前に、俺とケベルは首飾り用と、魔法の剣用の素材を用意する。
少年には、魔法の剣について詳しく説明しておく。彼は俺の弟子として、いずれは魔法の剣を打つ鍛冶師の一人となって欲しいのだ。
もちろん、サリエにもだが。
彼女はどちらかというと、剣よりも防具や装飾品の作製に興味がある様子だ。地味な籠手や肩当てよりも、装飾のある物の方が強そうに見えるのでは? と少女は言うのだ。
「まあ──そう言いたいのは分かる。しかし、実際のところ。剣や槍などの攻撃を受け流す為に、滑らかな表面をしているんだよ。装飾などの凹凸があると、衝撃を流せずに鎧に傷が付いたり、貫通する可能性が増える訳だ」
サリエはそう言われても、「それは、錬金術で強化すれば問題ないのでは?」と反論する。
まあ彼女の言う事にも一理ある。しかし、装飾に余計な素材を使うのを「浪費」と考える者も居るらしい。
装飾部分に特殊な錬成を施して、魔法耐性を上げた鎧などもある為、一概に無駄とは言えないのだが。
こんな話もケベルに聞かせておく。あらゆる意見がある中で、自分がどんな錬金鍛冶師になるかは──本人次第なのだから。
「できました」
サリエがそう言って、水晶を中央に填め込んだ銀の首飾りを持って来た。
「仕事が早いな。さすがだ」
裏側にも細かな細工が掘られている。滑らかさを出す為に鑢がけもされていた。
「よし、ではこれに──『魔力強化』、『回復魔法効果増幅』さらに『魔力回復速度上昇』を付与する錬成を行おう」
難易度は割と高めだ。失敗の確率も半々くらいはある。
魔力結晶、水晶の中に「回復魔法」を封入した魔法珠。魔樹の花弁。これらを錬成台に配置し、塩の結晶も置く。
「では始めよう……」
中央に水晶の首飾りを置き、呪文を唱える──
『私は探索する者。不滅の理を紐解く者。あなたは魔法の理を司る神。失われた王国の継承者。謎に満ちた言霊を用いて、私に叡智をお示し下さい』
錬成台の上に置かれた素材が光へと変わり、中央に置かれた水晶の首飾りに集まって──収まった。
「成功だ、良かった」
二人の徒弟は控えめな拍手を送ってくれると。彼らはすぐに、懐に忍ばせている手帳に素材の配置や、呪文を書き込み始める。
二人には、気づいたらすぐに覚え書きを取る癖を付けるように言い含めておいたのだ。間違って覚えないように、書いた後で錬成の──特に呪文の内容について話したりもする。
しかし、この魔法を封じた魔法珠を使った錬成の呪文に良く登場する、「魔法を司る神」については、まったくの謎なのだ。昔から変わらぬ常套句だと古い錬金術師は言っていた。
この世界の神も──謎ばかりなのである。




