昼食休憩とレーチェの休暇
アンドラダイトとかメラナイト、アレキサンドライトは実在する宝石ですよ。
金属系は創作した物が多いですが。紛らわしくて申し訳ないです。
結局。一度だけ失敗したものの、変彩金緑石は失わずに済んだ為、六つの変彩金緑石が残る事となった。
昼食休憩を取って俺は宿舎の方に戻り(徒弟は鍛冶屋で番をさせる)、レーチェに仕上がった「生命の転輪護符」と余った六つの宝石を持って行った。
「これが、生命の転輪護符を付与された首飾りですか。……それにしても、六つも返ってくるなんて。成功率二割の高位錬成と仰っていましたわよね?」
「うむ。俺も驚きだ。……だが、一度失敗してな。宝石以外素材の多くを失ったんだ。それは最初の成功例だが──どうする? 大きめの奴で作ってみるか? 失敗するかもしれんが」
俺の言葉に真剣な表情で考えるレーチェ。
「大きさで、効力は違うのですか?」
「ほんの少しの差は出るかもしれないが──大した差にはならないだろうな。誤差程度だろう。生命の活動を補助する力だから、──病人用の補助錬成具みたいな物だ」
そうですか、と言って彼女は俺の手から三つの宝石を手に取った。
「残りは差し上げますわ。『黒き錬金鍛冶の旅団』の為に使うも良し、錬成具に変えて鍛冶屋で売るも良し。あなたにお任せします」
錬成代は別に用意しますので、と言って彼女は「今から妹の元へ届けに行きます。夜には戻りますわ」とか言うので。
「いやいや、明日の夕方にでも帰って来ればいいだろう。たまには実家でゆっくりしてこい」
俺がそう口にすると、彼女は不思議な物を見るみたいな顔をして俺を見た後、少し考える様な仕草をした。
「そう──ですわね。たまには妹に積もる話でも聞かせてきますわ」
彼女は改めて首飾りの礼を言って、二階へ上がって行く。
彼女は旅団に、執着というか、愛着みたいなものが沸いているのだろう。二日続けて休むという発想が沸かないほどに。
俺はレーチェが宿舎を出て、馬車の停留所に向かうのを見届けると、すぐに食事の用意をする──簡単な昼食を作るついでに、夕食に出すちょっとした料理を仕込んでおく。
燻製豚バラ肉の塊を大きめに切って焼き目を付け、それと馬鈴薯と人参と玉葱を入れて煮込む。後は塩と胡椒で味付けをして完成。実に簡単な料理。
皿に盛った後でチーズを掛ける場合は、塩を少なくしておくと良い。(成人病になりたくなければ)燻製豚バラ肉に付けた塩味のみでもいいくらいだ。
そう言えば砂糖が結構、残り少なくなっている──最近はお菓子を作っていないのに。そもそも管理局から送られて来る物資に、砂糖が少ないのが原因だろう。
今度ミスランに開く転移門が、塩の供給を安定させてくれるはずである。砂糖が手に入り易くなれば……みんな仲良く肥満体型に──それは絶対に回避したいところだが。
蜂蜜は残っているが、蜜蝋はもう無い。
錬成で作り出す薔薇から抽出する砂糖は、そもそも薔薇が少ないので効率が悪い。
砂糖に関しては、なかなか効率の良い入手方法が無いのが現状だ。
だが、砂糖が入手し易くなるのも問題だ。
砂糖が普及してからの、世界の前後を調べれば分かるだろうが、急激に体型が変化したり、精神疾患が増えたりしたはずだ。糖分の摂取は酒と同じで注意が必要なのだ。──そうは言っても、砂糖の誘惑には逆らえないだろうが。
「恐ろしい奴だぜ、砂糖は」
そんな事を呟いていると、足に何かが触れて来て一瞬焦ったが、足下を見ると、そこにはライムが居た。
「ニャァ──」
しまった、彼女らの餌を失念していた。
「悪い悪い、ちょっと待ってろ」
大慌てで調理場へ向かい、小さな手鍋でお湯を沸かしてから、冷蔵庫に入っている鶏肉を取り出して(猫の餌用に切り落としなどを集めてある)それを茹でて、煮干しと一緒に与える。
子猫達にも温めた牛乳などを与えつつ、小さな体を撫でてやる──子猫達はすくすくと大きくなっていた。
最近、子猫達は俺を「餌をくれる人間」として認識しているらしく、顔を見て鳴き声を上げてくれるようになってきた。
あまり愛着が沸くと、別れる時に辛くなるか。
そんな事をふと考える。
いつかは管理局の方で引き取ってもらう事になるのだ、一匹くらいは宿舎で飼っても良さそうだが。
おっと、俺も食事を食べて鍛冶屋へ向かわなくては。まだまだ錬金鍛冶で作らなければならない物があるのだ。
それに混沌を調べなくてはならない。
やるべき事は山積みだ。




