生命の転輪護符
メイから飛竜の素材と、錬成に使う素材をいくつか言うと、少女は部屋に戻って素材を持って来た。以前使っていた手袋ももってきて、これよりも少し大きめに作って欲しい、と注文する。
「任せろ、中の布の厚さを変化させたりする事で、ある程度大きさの調整も可能な物にしてやる」
手の甲や指を守る部分に鱗を使って作る──打撃を拳と掌を使って打つので、どちらに対応した性能を発揮するように作るのが要点だ。
「私も作って頂きたい物があるのですけれど」
と、レーチェが言う。
「ぉ、どんなのだ? 魔法の剣は作ってやったからな。防具か?」
彼女は首を横に振り、「首飾りを」と言う。
「どんな強化を施すんだ?」当然、俺はそう尋ねた。
「ぁあ──、いえ。冒険用では無いのです。うちの妹に作ってあげたいのですが。宝石を使って、生命力を高める高度な錬成強化があるらしいと耳にしたので」
妹? そう言えば、体の弱い妹が居ると聞いたような気もする。
「生命力を?『体力増加』とかでは無く、生命力か? そうすると……『生命の転輪護符』の事か?」
俺が言うと彼女は「それです!」と声を上げる。
「それは──難しい注文だな。俺も作った事は無いし、成功率も俺が聞いた時は──二割を切るぞ。通称『生命の輪護』──まあ、俺が言っているだけだがな」
それでは「通称」では無いじゃありませんの、と彼女は肩を落とし、元気なく突っ込んでくれる。
「まあ、素材があれば作ってみるが──それに、徒弟に以前の働き先で装飾品を作っていたのが居るし。金はいくらまでだ?」
「いくらでも払いますわ」と彼女の口からは豪儀な答えが返ってきた。
俺を信頼しているから、というのと、妹の為なら──という二つの意味合いがあるのだろう。
「……分かった、やってみるよ。高位錬成の──固有名が付く様な特殊強化錬成だから、失敗して作れない可能性も高いぞ?」
お願いしますわ。と彼女は言って、後で宝石を持って行きます。と二階の部屋へ戻って行った。
生命の転輪護符に使う宝石は「変彩金緑石」(または紅玉や青玉、黄玉や翠玉など多彩な宝石を組み合わせて作る装飾品に付与できる)が必用だが、こちらでもかなり貴重な宝石である。
それを失う可能性が高いというのに──さすがは領主の娘──そんな風に思いつつ、拠点に(魔法の剣を手にして)向かう。
拠点にはリゼミラとアディーディンクが来ていた。拠点二階に住んでいる新人やニオ、フィアーネも集合している。
「皆、早いな──ほら、リゼミラ」
魔法の剣を投げ渡すと、それを片手で掴んで首を傾げる。
「なぁに? この剣は……」
「お前用の魔法の剣だ。つまり、火属性にのみ対応する魔法の剣だな」
するとリゼミラは態度を一変させて、その剣を嬉々として引き抜く。
「ぉお──これが、……で、どうやって使うの?」
俺は肩を竦めながら「上級に行くついでに、カーリアにでも教わってくれ。彼女はまだ自信を持てないでいる少女だから、守りながら──な」と注文を付ける。
「あ──あの子ね、りょうか──い」
リゼミラはそう言いながら腰に剣を差し、余った一本を投げてよこす。
「その剣は適当に強化してあるんだけれど、良かったらなんか、適当に強くしちゃってよ。壊れてもいいから」
お金はディーディが出すからと言い、アディーが「ぼっ、僕がぁ⁉」と戸惑いの声を上げる。
もう一度肩を竦めて、その剣を革帯に差しておく。
拠点に団員が集まると、どこに向かうかなどの話し合いが始まる。
俺はカーリアとユナに上級へ冒険に出てみるかと尋ねた。
「えっ! わ、私が──? だっ、大丈夫かな……」
と、やはり自信なさ気なカーリアと。
「……そう、ですね。挑戦したい──と、思います」
ユナの方はいくらかやる気でいた様子だ。メイは少し不安そうにしているが。
「ま──ま──、あたしが面倒見てやるから。任しときな」
リゼミラは何だかんだで頼りになる。
「二人とも、上級難度の冒険がどういうものか、まずは体験して来い。二人の実力なら問題ないはずだから、落ち着いてな」
二人の少女は返事をしながら、真剣な表情で頷き返す。
最初の体験で自信を持てば、後は自ずから上級での戦いや探索について学んでいけるようになる。
……こちらは団員の装備品などを作ったりして、彼らを支えてやる事を考えなければならないのだが。
ますはメイの注文をこなす。
レーチェの依頼した装飾品についても、徒弟のサリエと話し合う必要がある。
旅団の仲間達が冒険に向かうと、俺は拠点から隣の鍛冶場に向かって行った。




