序幕 ーここ数日に起こった事ー
第七章「方舟大地の未来」始まりました。
フォロスハートに入り込んだ「混沌の巨獣」を倒す為に無茶をして、身体を維持する勁(体内を流れる気脈)を傷つけた俺は、身動きを取る事すら苦しい状態にまでなったが、仲間達の協力もあり、無事に復調する事が出来た。
あの苦しい日々から俺は、コツコツと体力を回復する為に運動をし、筋力も取り戻しつつあった。
鍛冶屋は改築され、今では徒弟となった二人の若者が、鍛冶場の二階に住み込みで働きに来ている。
そこで俺は最近、やっと金鎚を持って仕事が出来るくらいにまで回復した。
気づけば、風の神ラホルスが行う(秘匿されている為、一般人は見れないのだが)儀式──「秋冬の儀」が執り行われ、気温は一月前よりもぐっと下がり始めた。
気のせいか、過去に無いくらい気温が下がった気がして、またしても象徴武器の影響が悪い方向に出てしまうのではと、冷や冷やしたりもしたが。
焔日の力を弱め過ぎたせいだったらしい。
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鍛冶屋に隣接して建てられた「黒き錬金鍛冶の旅団」の拠点には、ここ数日の間に数名の入団希望者が来た──皆、歳の若い、初めて旅団に入団しようという若者達である。
「受け入れる事は可能ですが、私達と長く付き合える仲間となるには、技術的な事よりも、礼節や覚悟を持った冒険者である事が重要です」
副団長はそう言って彼らを困惑させる。
厳しい、厳しい面接が始まる挨拶だった。
まあ、そんなこんなで──旅団拠点二階にある旅団員宿舎には、購入した寝台や衣類戸棚などが運び込まれ、ミスランの外から来た若手の入居が決まったのである。
彼ら新人を育成する場所は、ミスランの外にある市外訓練場で行う事になった訳だ。
少ない数なら「第一宿舎」の庭で済むが、大勢の場合はやや手狭になる。
問題は講師役を誰が務めるかであるが、これは当番制になったようだ。
中には魔法を専門とする魔法使い見習いの冒険者も居るので、そういった相手の訓練は市外訓練場か、管理局の貸し出す「魔法師養成所」の一室を借りて訓練を行うのだった。
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そして俺はというと、旅団長として朝礼を行い、冒険などの行動方針などを話し終えるとすぐに、鍛冶屋に籠もる事になったのである。
まずは、徒弟として入ったケベルとサリエに初歩的な鍛冶の手解きをしたりしながら、事を順々に進める予定だったが。
──予想以上に、宿舎の倉庫に集めていた様々な鉱石が多く、これをまずは処理して、それぞれの金属の延べ棒を作る事になったのだ。
これには新入りのケベルが、以前の街の鍛冶屋で、溶錬炉を扱う作業を担当していたというだけあって、かなり効率良く作業を進める事が出来た。
新しい炉と燃結晶を使って、効率良く作業を行えると言うので、ケベル少年は楽に作業を行えますと喜んでいるが──こちらは少々申し訳ない気持ちになる。
彼は以前(金属の延べ棒を精製する作業)とは違い、武器や防具を造る技術を学びたくてこちらに移って来たはずだ。
徒弟の二人には俺がここしばらく、体調不良の為にまともに行動するのが困難だった事は伝えてあるが、そのツケを彼らに払わせるみたいな形になったのは──徒弟とはいえ、やはり心苦しい。そう話すと。
「まだ徒弟になったばかりですよ、雑用を担当するのは当然です」
とケベルは言って、俺を安心させてくれた。
「しばらくは、俺が魔法の武器を打つまでの体力や感覚を取り戻すのに、剣を打つ作業を手伝ってもらうつもりだから、その時には俺から学べる事を学んでくれ」
彼はその言葉に「はい!」と力強く答える。
一方サリエは、武器の作製にも防具の作製にも装飾を施して、それに強化錬成を行い、強化の効果が上がる事を証明したいと考えている部分が強い(彼女は元々は装飾品を作っていた)
もちろん自分の手で、武器や防具を作り出す技術を身に付けたいと思っている、とも語ったが。
彼女の考えた理論に対する答えを、俺は「象徴武器」として持っているのだが──まあ、それはひとまず置いておこう。
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空いた時間に管理局へ行って、混沌について調べている部署をメリッサに案内してもらったりもした。
やはりそこでは、四大神力を使って大地を守る事や、周囲の混沌を退ける事についてのみ、調べているらしい──ので。
転移門の向こうに出現している混沌の悪魔などと戦って調べたり、そいつらを倒す事で稀に得られる、混沌結晶を使った混沌の研究をするので、金か素材を提供するように持ち掛けた。
もちろん実績も上げていないのに、そんな事を許されるはずも無いが、メリッサは混沌結晶を管理局の「依頼」として集めるのを約束してくれたのだ。
俺にはやらねばならない事、果たさねばならない事がある。
旅団の仲間を強化するのもその中の、最も大きな事の一つだが。
混沌についての調査は、ここフォロスハートにとっての急務であるとも言える。
まずは武器を作る作業を徒弟に教え込み、彼らだけで武器を造れるようになれば、通常武器を作製する仕事は彼らに任せ、俺は魔法の武具を造る作業に打ち込めるようになるだろう。
と、こんな感じで。色々な変化が、ここ数日の内で起こった訳なのだった。




