回復したオーディスワイアと旅団のこれから
第六章も終了間近。
主人公も復活し、大活躍間違いなし(?)
ナンティルの店で素材を買い込んだ俺は、背負った背嚢に、大量の素材を詰め込んで転移門を潜り、フォロスハートまで戻って来た。
「やっぱり空気が違う」
そんな感想を呟くと、旅団の宿舎まで軽い足取りで戻る──
十全の状態であるとは言い難い。しかし、昨日までとはまるで違う。身体が軽い──荷物を背負っているのにだ。
空を見上げると日が傾き始め、朱色に塗り替えられ始めていた。
転移門のある区画から大通りの歩道を歩いて行き、鍛冶屋のある通りに入る。
さすがに疲れてきた……荷物を背負ってちょっと歩いただけなのに……体力の低下は思ったよりも深刻で、体を復調させるのはまだ時間が掛かりそうである。
道の先を目指して進んでいると、後方から荷車が迫って来る音を聞き、道の端に避ける──
その荷車が通過すると、荷台の上に座っていた連中と目が合った。
「止まって!」と御者に声を掛けるレーチェ。
彼女は荷車の台車に乗って、遠征から帰って来たのだ。
荷台にはリトキスにエウラ、ユナとメイ姿もある。なんだか随分と久し振りに会う気がする──実際は三日に過ぎないのに。
「な、何してるんですの⁉ あなたは!」
そうだった……こいつらには遠征に出ていた為、知らせていないのだ。俺が今日、パールラクーンの神アヴロラに体を治療してもらいに行った事を。
「あ──、それはだな。ひとまず、荷車に乗せてくれるか? 宿舎に戻る前に説明するわ」
俺はリトキスに手を借りて荷台へと上がった。
荷車に乗って数分、駆け足でパールラクーンに向かう事になった経緯を説明しておいた。
荷車はすぐに宿舎の前に着いて、仲間達は俺の背負っていた荷物も含めて、すぐに宿舎の中へ持ち運んで行く。
「それでは体調の方は、もうよろしいのですわね?」
庭で訓練する──初めて見る二人の若者を見ながら、レーチェが口にした。
「ああ、落ちた体力や筋力を戻せば、気力も漲り、若返った気分だぞ」
それは結構。と頷くレーチェ。
「それで、あの二人は?」
「新入り」
「それは見れば分かりますわ。宿舎に泊めていますの?」
「いいや? ミスランに実家があるそうだから、そこから通ってもらっている」
俺の答えを聞くと、彼女は「そうですか」と何かを思案する表情をする。
「何が言いたい」
「いえ……そう言えば、もう改築は済んだようですわね? そこに団員を住まわせる部屋がありますが──相談すべき事が」
「何人部屋にするか、という事か? 二人か四人までで、いいんじゃないか。多過ぎても困るだろう」
レーチェの言わんとしていた事を先に口にすると、彼女は頷きながら「相部屋経験が無いので、皆さんの意見を聞いてから、家具などの手配をしようと思っていたのです」と言った。
まるで大家の様に、どうやれば住人から不満が出ずに、効率よく稼げるかを考えているのだろうか。
さすがは旅団の経営担当だが──
「まあその辺りの事は、メイやユナが詳しいかもな。あいつらは遠征も経験しているし」
そう話したが──ぶっちゃけ寝台だけ置かれた大部屋に、十人近くが一遍に放り込まれた状況で暮らしている──そんな冒険者も居るのだ。
まるで産業革命で酷い扱いを受けていた、賃金労働者みたいな状況だ──いや、それよりかは多少マシなのだろうが(寝台すら無く、床に雑魚寝を強いられていたらしい──収容所みたいだ)。
「旅団の今後についてもそうだが、俺の錬金鍛冶師としての活動にも、色々とやらなきゃならん事が増えそうだし──まあ、一つ一つ解決して行こう」
俺がそう声を掛けると、彼女は「そうですわね」と返事をし、宿舎に人を集めて食事の用意をすると、遠征で入手した素材を運び込む指示を出す。
自分はユナとメイから相部屋についての話を聞くべく、彼女らと共に、食堂の方へ向かって行った。
団員の皆は俺の顔を見る度に、体調は良くなったかと尋ね。俺は、心配を掛けた、迷惑を掛けたと謝罪しっぱなしだ。
それを見かねたライムが「にゃぁぁ──」と、俺に声を……ではなく。
レーチェが、夕食は団長の快方祝いに少し贅沢をしましょう、と言ってユナやメイ、レンネルらと調理場へ向かった。
そうこうしていると、上級難度の転移門を冒険して帰って来たリゼミラやリトキスも、事情聞いて調理場へ向かって行く。
「ダリア達は」
そう俺が尋ねると、リゼミラが応えた。
「あの三人なら宿屋の方へもどったよ。確かにあいつらは、いい腕をしているよ──まあ、詳しい話はまた後でな」
カムイとヴィナーも困難な冒険から生還し、それなりの経験を得て戻って来たようだ。無事で何より、新しい経験を積んだならなお良し、である。
疲れているはずの団員にばかり任せてはおけない。俺も調理場に向かうと、野菜料理や汁物を作ると宣言し、肉や野菜を切り始めた。




