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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第六章 休養と若手の育成

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帰還の前の寄り道

そろそろこの章も終了です。

次回の章で一区切りとなる予定です。応援をよろしくお願いします。


 身体の痛みは消えたが、精神的疲労がどっと押し寄せてきた。

 神の間を出て、水路を張り巡らせた、美しい室内庭園のある間に来た時、俺はその場に片膝を突いてしまう。


「混沌の野郎……! 絶対に叩き潰す‼」

 復讐心をたぎらせ、気持ちを奮い立たせると、気合いと根性で立ち上がる。

 立ちくらみがして、よろよろと数歩前に踏み出したが、その場で一度立ち止まり、丹田たんでんから身体に気を流す事を意識しながら、呼吸法で気の循環じゅんかんを高める。


 正常に戻ったけいに気が流れ、緩やかだった回復力を、全神経を集中する事で最大に引き上げる。気力から生命力を生み出す──

 根源から、生命の末端まったんまでつながっているのだ。


 では、混沌は──? 俺はほとんど無意識に考え続けていた。

 世界を、大地をおおっている、あの混沌を排除する力──必ずあるはずだ。それは混沌を調べる事で明らかになるはず。


「お前が泣き叫んで赦しを請うまで、金鎚でぶっ叩き続けてやる……!」

 その為には素材が、金が、必要になりそうだ。

 混沌の弱点を探るという、新たな目標を持ってしまった。

「まったく……これから忙しくなるって言うのに」

 俺は体力が回復してきたのを感じると、室内庭園の間を出て、その先にある控えの間の扉を叩き、返事を待たずに扉を開けた。


「オーディス、治療は成功したかにゃ?」

 部屋に入るとナンティルが声を掛けてきた。

「おうよ早速さっそく帰って、やり残している作業をやらないとな。久し振りに金鎚を握りたくてウズウズしてきたぜ」

 うんうんとうなずくナンティル。


「それにしては顔色が悪いにゃ。にゃにかあったのかにゃ?」

「ああ……少し、な。身体に負荷が掛かり過ぎて死にかけただけだ。問題ない」

「問題大ありにゃ……」

 そう彼女は心配そうに言ったが、俺がすぐにフォロスハートへ戻ろうと急かすと、「分かったにゃ」と返事をして神殿を出て行く事になった。


 帰り際に、ナンティルが「ちょっと待つにゃ」と言って、通路の先にあるドアを叩いて部屋の中に消えた。

 ものの数分で彼女は戻って来て、神官長に挨拶をしたと告げる。


「もういいのか」

(にゃ)ーに、ちょっと顔を見せに行っただけにゃ。これで私の諜報ちょうほう活動も終わりにゃ」

 なるほど……そう考えると、ナンティルは言わば、フォロスハートとパールラクーンの和平条約を結び付けた立役者。という事になるのではないか──本人にその意識は無い様子だが。


 神殿を出ると、馬車の停留所に向かう。

 そこには猫獣人フェリエスの男の御者が待っていて、玄関町ボロッコスまで俺とナンティルを送り届けると言った。


「ボロッコスまで横に(にゃ)ってた方が良く(にゃ)いか? (にゃ)(にゃ)ら膝を貸してやるにゃ」

「金を取られそうだから、いい」

 ちっ、とナンティルの口から舌打ちが漏れる。


「本当に金を取る気だったのか! この守銭奴しゅせんど! 鬼畜きちく! 金の亡者もうじゃ!」

「誰が金の亡者にゃ! 人聞きの悪い!」

 それからもしばらく言い争いが続いたが、体内の気の流れが安定し始めると、急に眠くなり──少し目をつぶると、そのまま眠り込んでしまった。


 気づくと馬車に揺られながら横になっていた。

 ナンティルがいつの間にか横に座り、太股の上に俺の頭を乗せている。

 せっかくなので、そのままもう一眠りしようかと思っていると、馬車は目的地に着いたようで、ゆっくりと停車した。


「ボロッコスに着いたにゃ。起きるにゃ」

 ナンティルは俺の頬をつまんで引っ張る。

「いたいいたい」

 太股の余韻よいんも無く叩き起こされた。


 彼女と馬車を降りると、そこには転移門へ続く道に近い停留所であるらしい。


「私はこれから店に寄るにゃ。オーディスはどうするにゃ?」

「そうだな……せっかくだ。ナンティルの店に行ってみるとしよう」

 そう言うと彼女は「よし、財布は持って来たにゃ?」と容赦が無い。

「そんなに持って来る訳ないだろ。ツケにしろ、ツケに」

 ナンティルは「しょうが(にゃ)(にゃ)ぁ」とか言いながら道を歩き始める。


 大通りにはやはり、多くの猫獣人が歩いていた。

 先を歩く彼女は大通りから脇道に入ると、細い裏路地を通って、別の通りにやって来た。

 そこには商店が並ぶ路地で、風変わりな土産みやげ屋などもある。


 剥き出しの状態で積まれた金属の皿や、壁から下げられた大きな鍋など。様々な日用品や、棚やテーブルなどの家具なども山の様に店先にあふれ、異国情緒(じょうちょ)に包まれた通りになっていた。


「こっちにゃ」

 そう言って連れて来られたのは、この辺りでは落ち着いた雰囲気を持つ、道具屋の様であった。

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