金色狼からの使者
リゼミラ視点でのお話。
新しい登場人物が出るけど、今後は出ないかな(笑)。
オーディスと玄関先で別れた後、旅団宿舎に入ると、階段前の所にある、猫の小部屋の前に座るカーリアと目が合った。
「おはよう」
あたしが声を掛けると、少女は「どうも……」と頭を下げつつ、子猫を撫でたりしている。靴を脱いで宿舎に上がると、廊下を歩いて来る旅団の面々──おっと、あたしもその旅団の一員になったのだった。
「おはようございます」
「まだ三人の冒険者は来ていません。庭で簡単な運動をしながら待ちましょうか?」
双子の弟──レンネルがそう言って、私に稽古を付けて欲しいと言ってくる。
「いいよ」
そう言えばレンネルは剣と盾を使っているんだよね、懐かしい。若い頃のオーディスを思い出す。
あいつは、初めの頃は剣と盾を持って、慎重な戦い方をしていたものだ……まあ、私も双剣ではなくて、槍や斧槍などの長物を使ったりもしていたけれど。
仲間達と庭に出ると、玄関の扉を叩く音が──なんだ、もう来たのか。そう思ったが、玄関先に立っていたのは、三人の女では無く、二人の男だったのだ。
「な……リゼミラ! こっちの……『黒き錬金鍛冶の旅団』に入ったというのは、本当だったのか」
「ああ?」
誰だよこいつは……いきなり呼び捨てにして来て、失礼な奴だ。
「誰? あんた」
「こっ、『金色狼の旅団』のエティウだ! おっ、覚えていないのか!」
エティウ? ……あたしより、少し若いくらいの男で、そんな奴、居たかな……
「知らん」
あたしがそう応えると、男──エティウの横に居た、別の男が吹き出している。
「まったく! 何故、冒険者に復帰したなら『金色狼の旅団』に戻らないのか、理解に苦しむ! アディーディンクもだ! 『旧世代』はバカばかりだ!」
エティウは大きな声で罵る──それにしても「旧世代」とは。あたしの事を知っているなら、自分だって似たようなものだろうに。
「あたしは、オーディスの居る旅団に入りたいと思ったからさ。なにしろずっと、連れ立って冒険していた奴だからねぇ、そいつが旅団を立ち上げたと聞いたら、そりゃぁ入りたくなるさ。それに……昨今の『金色狼の旅団』には入りたいと思わないね。堅苦しい上下関係なんてごめんだよ」
ふん、と鼻で笑い飛ばし、帰るよう手を振って追い払おうとすると、エティウの隣に居た若い奴が頭を下げる。
「はじめまして、私はカインツ。『金色狼の旅団』で、調整役を務めている者です」
調整……? 意味が分からない。そんなのが旅団に必要なのか? 団長と各部隊長などが居ればいいと、そう思うのだが。
「なにしろ格式のある旅団ですので、多くの入団希望者や、旅団内の部隊の調整など、様々な場面で助言をしなければならないのです」
なんだ、参謀気取りの奴に仕切られているのか、今の「金色狼の旅団」は。
「あなたには、アディーディンクさんと共に、私達の旅団に復帰して頂きたいのですが」
「だが断る」
あたしは、オーディスの口調を真似して即答する。明確に拒絶する時、あいつはいつも、こう言っていた。
「し、しかし──条件の提示もまだしていませんし……」
急にしどろもどろになるカインツ。どうやらこういった反応を、予測していなかったようだ。
「条件? 条件ならもう決まっている。オーディスワイアが旅団を立ち上げた、だからその旅団に参加する。それだけさ」
わかったら、もう帰れと二人を追い返す。
まったく、「金色狼」もおかしな旅団になったものだ。
あたしの決断に、背後で見守っていた仲間達から小さな拍手が贈られる。
「やめてよ、当然でしょ。入ったばかりで出て行くなんて、あり得ない。あたしがオーディスと何年、冒険に行っていたと思うの。あんな連中に義理立てする訳、無いじゃない」
そう話している所へ、三人の「美人」冒険者がやって来た──なるほど、オーディスが「見たい」と言っていた訳だ。
身体の線が浮き出る、レーチェが着ている物と同じ、エルニスの造る防刃服を着ているのだ。それぞれ色違いの物を着て、装備している防具や得物もばらばら。
かなり個性の強い連中だと言うのはよく分かる。
「それでは、どこに行くか決めましょうか」
レンネルとの訓練は、また今度になったのだった。




