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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第六章 休養と若手の育成

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中央神殿都市アーカム

 巫女の話によると、中央神殿都市は猫獣人族フェリエスだけでなく、小獣人族エルニスも住んでいる──多種族の共存を一つの目的とした、都市であるらしい。


「むろん、犬亜人ババルドは違いますにゃ。あいつらは話しの通じ無い、野蛮な獣に過ぎませんにゃ」

 それは憎しゆえの言葉では無く──実際に彼らは、犬の頭部を持ち、人の体を持つ「亜人」の類に含まれる要素を持つが、言葉が通じ無い相手であるのだ。


 それだけでなく、非常に好戦的──というか狂暴で、フォロスハートでも「奴らは敵だ」という認識で一致している。


 パールラクーンには、危険な生き物も多いと聞く。

 その内の一つが犬亜人だが、大(さそり)、「岩砕き(ゴロカン)」と呼ばれる大(ねずみ)、その大鼠をも喰らう大蛇など、多くの生き物が生息している大地でもある。


「そうですね……しかし、私達の生活圏はまだまだ狭く、荒野や砂漠の近くには、町を造るまでには至っていないのです」

 生き物について尋ねると、巫女からはそうした答えが返ってきた。

 都市などの周辺を守るので精一杯らしい。新たな土地を開拓しに行くのは、これからの自分達の(世代の)責務だと考えているようだ。


 そこはフォロスハートの冒険者達に協力を求めているはずだが──実際のところ、人数制限などもあり、多くの旅団が参加する、という事が出来ないでいるのが現状だ。


 規制きせい緩和かんわの問題か。


 規制には規制する利点メリットもあるが、欠点や不利益(デメリット)も当然ある。その逆の緩和にも、利点は大きいが、欠点もまた多様である。

 利益や利点だけを手に入れられる選択、そんなものはありはしない。必ずどこかで不利益が発生したり、不都合な事柄が起こるものだ。


 全ての物事は表裏一体が基本、どこかで妥協しなければいけない。特に人間生活には、それが付き物。

 ──などと難しい事を考えていても仕方が無い。


 馬車に揺られながら窓の外を見ていると、ときおり大きな畑の横などを通過し、街道を進み続ける。

 街道沿いの為か、危険な生き物に襲われる事も無い──と、考え始めた時、その理由の一つが分かった。

 街道沿いにとりでが建造されていたのだ。


 ここに控えている戦士が、街道周辺を警戒し、街道と畑などがある場所を守っているのだと、巫女が説明する。

 戦士はもちろん猫獣人であり、中には討伐隊を組んで、森などに狩りに行く場合もあるらしい。

 幸いこの周辺には「剣刃大蛇スクルスアーヴ」は出ないと、巫女は口にする。


「それは、どんな奴なんだ?」

「頭のすぐ後ろの首から、左右に広がる刃を持った大きな蛇です。平地に棲む生き物の中でも、獰猛どうもうで危険な相手です」

 リゼミラ辺りなら、戦ってみたいと言うだろうが──俺も、そいつからどんな素材が手に入れられるか、という事には興味がある。大蛇の体から生えた刃とか、めちゃくちゃ気になるじゃないか……!


「危険、ですよ」

 俺の表情を読み取って、巫女が警告してくれた。

「ははは、俺はもう、現役を引退した身だから」

 曖昧あいまいな笑い声で誤魔化ごまかしたが、まだまだ冒険していない場所もあると見せつけられると、少し寂しく感じる気持ちもある。


 これからもフォロスハートには、新たな転移門が造られて、新しい場所への冒険が広がるはずだ。

 その新天地を冒険できる冒険者は幸運だ。もちろん危険もあるだろう。だが、それでも──冒険とは心(おど)る、楽しいものだから。


「そろそろ、中央神殿都市アーカムが見えてくる頃ですよ」

 窓の外には遠くに、黒い山脈が見えており、その手前に白い──白亜の大きな建物と、それを囲む白い囲壁が見えてきた。


 段々とその建物が近づいて来ると、都市を囲む囲壁は、十全なまでに、外部からの攻撃に対応した造りで、壁の上には所々にやぐらや、大型の弩砲バリスタが設置されている。


 馬車は白亜の壁に近づくと、大きな門を潜り抜ける──かなり分厚い壁だ。おそらく壁の中にも通路があって、兵士らが待機したり、武器や食料などを保管する場所なども、用意されているのだろう。


随分ずいぶんと厳重なんだな」

 俺が言うと、巫女よりも先に、御者台で手綱たづなを握っているナンティルが、声を掛けてきた。


「当然にゃ、ここには神アヴロラ様がおられるにゃ。混沌が攻めて来ても応戦できる態勢は、常にバッチリにゃ」

 そうだった、混沌の侵攻はパールラクーンにも起こるのだった。

 ただ、アヴロラの張る結界が強力な為か、それほど頻度ひんどは高くは無いと聞いている。


「もうすぐしたら、神殿の停留所に着くにゃ。降りる準備をしておくにゃ」

 準備するほどの事は何も無いのだが。


 ともかく馬車が止まると、俺は馬車を降りて、巫女達が降りるのに手を貸してやった。

 振り向くとそこには、青い空の中に静かに君臨くんりんする、白亜の神殿が姿を現した。

 横にも縦にも大きな造りをした建物である。


 塔ややぐらの数も多く、窓や露台バルコニーなども、数え切れないほど用意されている。

 その神殿は優美でありながら、鉄壁の守りを意図して造られた──要塞ようさいとしての機能も持った、堅牢けんろうな守りの神殿であった。

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