玄関町ボロッコス
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淡い緑色の光を潜り抜けた先は、広大な緑地の見える丘の上であった。
丘の上から見渡す景色のすぐ近くに、囲壁に囲まれた町が見える──
あれは猫獣人の国「シャラムシャロン」が、フォロスハートとの交易の為に造った、拠点となる町だろう。
──そういえば、一つ気になった事があるのだ。
ナンティルは「パールラクーンの神」に相談をする、というような言い方をして、「シャラムシャロンの」とは言わなかったのだ。
パールラクーンは広大で、フォロスハートの三倍近くの大きさのある大地だと考えられている。
ここには猫獣人族の他にも、小獣人族に犬亜人族なども居る、種族混交の大地なのである。
「空気も違うな」
俺がそう呟くと、先導役の巫女(猫獣人)が「故郷の匂いですにゃ」と応えた。
「『玄関町ボロッコス』から馬車で、我らの神アヴロラ様の居る、神殿都市へ向かいますにゃ」
「ぼろっかす?」
「いいえ、ボロッコスですにゃ」
そんな話しをしながら町への道を下って行き、灰色の石を組み上げた囲壁の一角に設けられた、しっかりとした大きな門を潜って、町の中へと入った。
建物の多くは赤茶色の煉瓦で建てられており、温かみのある町の雰囲気が伝わってくる。
「こちらですにゃ」と巫女は声を掛けて、先を歩いて行く。
通りを歩く人の多くは猫獣人だったが、中には人間の姿もある──彼らはフォロスハートの人間だと、巫女は言った。
「パールラクーンには獣人以外は住んでいませんにゃ。もちろんご存知とは思いますが」
そうなのだ、パールラクーンの宿屋に泊まる事は出来ても、住む事は許されてはいないのだ。今回の和平条約の締結で、今後は互いの住居権なども変わって行くのかもしれない。
「エルニスとも仲良くなるといいんだが」
巫女に聞こえるように言うと、彼女はあっさりと認めた。
「そうですにゃぁ……男性の居ない小獣人族の事を、もっと理解してあげられる環境が整えば、変わって行けると思いますにゃ。少なくとも交易の面では、小獣人族の作る品物は、シャラムシャロンには無い物ばかりだと、私達の同胞も認めていますにゃ」
なるほど……エルニスの作る物は欲しいが、男を奪われるのは嫌だと、そう言う者が多いのだろう。男側の意見は違うのかもしれないが。
「そこの広くなった場所が、馬車の停留所ですにゃ。馬車は──あれですにゃ」
巫女の指差した先には一台の馬車が留められていた。他の馬車と違って、艶のある鮮やかな茶色い木板を使って造られた、重厚な雰囲気のある馬車であった。
ドアの取っ手や窓枠などに金が使われ、側面の屋根の近くに、優美な黄金製の紋章が填め込まれている。
「神殿の馬車か、豪華だな」
「そうですにゃ。神殿は、正確にはシャラムシャロンにも、小獣人族の国『シュナフ・エディン』にも属さない、パールラクーン全体の神様の神殿ですにゃ」
なるほど、だからナンティルは「パールラクーンの神」と言った訳か。
そう納得しながら馬車に近づくと、その御者に見覚えがあった。
「ようこそ、パールラクーンの玄関町ボロッコスへ」
そう言ったのは、御者風の格好をした──風避けの外套などを着込んだ──ナンティルであった。
「なんだ、神殿付きの行商人(仮)だったのか」
俺は肩を竦めて見せる。
「私は正確には、この町に店を構える道具屋の従業員にゃ。まあ、家族の店だけどにゃ。神殿とも付き合いがあるのにゃ──それで、フォロスハートの内部調査をしていたりした訳にゃ」
「諜報員にしては、ガチの業突く張りっぷりだったが」
俺がそう言うと、彼女は「ふふん」と鼻を鳴らす。
「当たり前にゃ、行商も本気でやらなきゃ、怪しいのにゃ。まぁ──諜報活動なんて仰々しいものじゃなく、フォロスハートが、密接に繋がりを持つ相手に相応しいか、その辺りを調べるように言われていただけにゃ」
ナンティルはそう言うと、俺と巫女達に馬車に乗るよう促す。
俺達はこうしてボロッコスを離れて、パールラクーンの中央神殿都市「アーカム」へ向かう事ににゃったの──じゃない、なったのだった……
忘れられているかもしれませんが、エルニスは女性しか生まれない種族なのです。
そして、手先が器用な小さな女なのです──ナンティルがエルニスを嫌うのは、理由があります。




