転移門を抜けてパールラクーンへ
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朝、顔を舐められて目を覚ます。
ざらついた舌が頬を舐めてショリショリと音を立てる……ライムかと思ったら、子猫(名前はまだ無い)が頬を舐めていた。
「おはようさん」
子猫に言うと「ナァァ──」と小さな鳴き声で返してくる。彼らは夜行性のはずだから、本当は眠いのだろうか?
お腹の上には子猫とライムが乗っている。あと一匹の姿を探していると、猫用便所から出てくるところだった。
ちゃんと便所を利用してくれるとは、成長したな……そんな感慨に浸りながら横になって、うっかり二度寝しようとすると、子猫が身体や頭を俺の顔に押しつけて無理矢理起こそうとする。
「わ、わかった。起きるから……」
「ぅナァァ──」
その子猫は容赦が無い、今度は手首の方に回り込むと、指を噛んで毛布から引きずり出そうとするのだ。
俺は上半身を起こすと、その子猫を抱き上げる。
「起きた、起きました」
「ニャァ──」子猫は今度は、はっきりと鳴き声を上げて返事をする。
臍の辺りに寝ていたライムも子猫をくわえると、俺の上から降りてドアの方へ向かう。
まずは植物に水をやってから、子猫達を連れて巣箱に向かった。
階段前にはカーリアが待っていた、猫達の餌を用意して持って来たらしい。
「ご苦労さん」
「団長の部屋に居たのか……みんな居ないからどうしたのかと思った」
少女は、ほっとした様子だ。
子猫達はカーリアの手にしているお皿を見ると「ニャァニャァ、ナァナァ」と鳴き声を上げて、ご飯を催促する。
彼女が皿を置くと、子猫達が一斉に餌(温めた牛乳)に群がる。ライムには別の皿に乗せた物を与えているのだ──煮干しなども付けて。
俺達の食事はリーファが主に作ってくれていた。今日の俺は一番遅くに起き出したらしい、目覚めは軽く、体調もすこぶる良かったのは、眠っている間に気の流れが全身を巡り、勁を修復していたからだろう。
朝食をささっと食べ終えると、今日の予定を簡単に立てておく──と言っても、これからやって来る「三美人の冒険者」達と行動方針を決めて、カムイやヴィナーも含めたパーティで上級難度の転移門先へ冒険に向かう訳だ。
「気をつけてな」
カムイやヴィナーに声を掛け、リーファに(リゼミラはまだ来ていない)よろしくなと言っておく。
「ええ、分かっています」
彼女はこちらの意図した事を汲んでくれているだろう、察しの良い──出来る女なのだから。
俺が簡単な旅支度をして玄関で待っていると、リゼミラがまずやって来たので、若手の成長を促すように頼むぞ、と声を掛けると「分かってるよ」と返事して、身体を治して私の装備品にも強化を施してくれよ、などと言う。
「ああ、分かった」
そう返していたところへ、昨日の猫獣人の巫女達がやって来た。
「お迎えにあがりましたにゃ、転移門を使ってパールラクーンへ向かいましょうにゃ」
「よろしく」
俺は彼女らに従い、転移門のある区画に向かって歩き出す。
いつもの街並であるのに、猫獣人の二人が前を歩いているだけで、別世界にやって来たみたいな錯覚を覚える。
そう言えばナンティルとは鍛冶屋で会うばかりで、一緒に出歩いた記憶は無い。随分と以前からちょくちょく会っていたのに、不思議なものだ。
彼女とは結局、鍛冶師と行商人の関係だったから当然なのかもしれないが。
パールラクーンに通じる転移門は、他の転移門とは違って封印されているのだ。許可を取った者しか行き来できないようになっているのである。
巫女は指に嵌めている指輪を、灰色の雲みたいな物が立ち込めている門の中に押し付けると、それは一気に晴れて、緑色の光を放つ入り口に変化した。
「行きましょう」
そう言った彼女の後を追って、俺は光の中に進み出た──




