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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第六章 休養と若手の育成

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精神世界で語られる混沌の大地への影響

「オーディスワイアが、パールラクーンの女神に会いに行くってよ」

 誰かが俺の名前を呼んでいる──

「なんと、またしても我以外の女と……! 泊まりなどゆるさん、赦さんぞ!」

 あ、この声は火の神ミーナヴァルズだ。……という事はここは、精神世界か? なんでまたここに迷い込んでいるのか。


「良いではないか、我らでは精々(せいぜい)こやつの気の流れを、徐々に回復する事しか出来んのだから。あの女神は生命に関する力をつかさどる神だという。──ここは素直に任せるべきであろう」

 優しげな男の声──風の神ラホルスだろうか? 目を開けたいが、身体が何故かもの凄く()()()()()()──感覚が遠い、というか、だるい訳では無いのだが──身体との時間の流れが違うみたいな、そんな感じがする。


「あなた達はオーディスワイアが心配ではないのですか? 私に力があれば……今すぐにでも治してあげるのに」

 この声は水の神アリエイラ、彼女の優しさに溢れた言葉だ。


 段々と身体の自由が利くようになってきた。ゆっくりと目を開けると、青い空が目に飛び込んでくる。ここには太陽と、自然がそのまま残っているのだ。

 壊れる前の世界の記憶……美しく、はかない、そしてなつかしい世界。


「あ、おはようオーディスワイア。いえ、本当はあなたは眠っているのですが」

 彼女は俺の右手側に座っている──俺は湖畔のすぐ側にある、草の生えた傾斜に寝そべっていた。

 左手側にはミーナヴァルズが腰掛けている。


「おはようございます──それで、なんでここに来てしまったのでしょうか」

「それは──おもにミーナヴァルズのせいだろうね」

 と、鳥の姿のラホルスが木の枝に掴まった格好でしゃべり出す。


「かははははっ、まったく、パールラクーンに出向くくらいでオーディスワイアが寝取られるみたいな剣幕でいやがるのだ、こいつは」

 と、大きな銀色のねずみが言う。

 地の神ウル=オギトだ。

 彼は豪快に笑い飛ばしてみせるが、ミーナヴァルズは苛々(いらいら)と大鼠を睨みつける。


「黙るがいい、ウル=オギトよ。気を司る貴様が、地中の気脈の中に混沌の()()を残しておくから、オーディスワイアがこの様な目にっているのではないか?」

 そう言われるとウル=オギトはむっ、と口をつぐんだ。


「確かに、本来は生命の源たる気が、いかに膨大な量とはいえ、肉体を流れるけいをここまで傷つけるとは思えん。それについては申し開きするつもりは無い、だが、混沌に包まれたこの大地で、完全に混沌の影響を取り除けるのは、気脈のお陰でもあるのを忘れるな」

 なるほど、本来は生命の原点である様な気を外部から受け入れたとはいえ、ここまで損傷するのは変だと思ってはいた。それが混沌の影響であったとは……


「混沌と言っても、微量な残りかすみたいなものだ。身体に取り込んでも気の流れが循環する働きの中で、それを除去する様になっている。そこは安心していい」

 ラホルスはそう言って俺の不安を取り除いてくれた。大地に居るだけで混沌の影響を受け続けているなら、危険だと考えるのが普通だろう。

 そっと、横になったままの俺の胸にアリエイラが手を置いた。


「そのまま横になっていて。ここは夢の世界、あなたには関わりの無い、私達の他愛の無い会話の世界です。──ゆっくりと眠りにいて、身体を休めて下さい」

 彼女の声を聞いていると、静かに目を閉じる──自分から眠ろうとしている訳では無い、彼女の声を耳にすると段々とまぶたが重くなる感じで、自然と眠気が襲ってきたのだ。


 心地良い眠り──

 俺は離れていく意識の片隅で、女神が残してくれた暖かな気持ちを抱いて、微睡まどろみの中に落ちていった。

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