三人の冒険の今後
客間に戻るとフレジアがドアを開けてくれた。まるで俺が戻って来るのが見えていた様な感じでドアを開けてくれたので、びっくりしてしまう。
「ありがとう」
礼を言って客間に入ると、ラピスが盆を手にして「私が」とだけ言った。全員に紅茶を入れてくれたラピス。
ダリアは膝の上にライムを乗せながら紙に何かを書いている。──彼女は意外に達筆で、すらすらと紙に何かを書き込んだ。
「用意できる金額とかも書いておいたよ」
「分かった、体が治ったらになるが。あらかじめ素材を用意してくれるならありがたい」
彼女は「了解」と快く受け入れてくれる。
お茶請けに用意した蜂蜜を使った焼き菓子を食べてフレジアはご機嫌だ。年相応の女の子、当然と言えば当然の反応だろう。
ラピスもダリアも甘い物は嬉しい様子で食べている。
彼女らが書いた紙を見る、そこにはダリアの要望する大剣──刀身や柄の長さなど細かく指定されている──には、火と風の属性を付与するよう書かれていた。
ラピスは長剣、彼女は特に刀身や柄の長さを指定してはいない。彼女は火以外の三つの属性に適性があるようだ。
フレジア──彼女の手斧は「二本欲しい」と控えめに書かれている──属性は火と地に適性を持っているらしい。
三人ともそれぞれが魔法を使える戦士であるのは噂通りであった。用意できる金額などを見ても、それなりに蓄えもある冒険者で間違いは無さそうだ。
「しかし、どうして旅団に入らない? 場所によっては堅苦しい事もあるだろうが──食料の支給も無いし、転移門の利用も金が掛かるだろう」
三人の美女──と美少女は互いの顔を見合わせる。
「まあ──そんなに大した理由がある訳でもないんだけれど」
「こちらの方が気楽で良かった、というのが一番の理由でしょうか。確かに旅団に入る利点は大きいと思いますが」
フレジアは「私、人見知りだから……」と子猫を顔を前に出して「見ないで」と口にする。
少女に合わせて旅団に入らなかったのか? そんな風にも考えたが──気楽だから、と言ったラピスの言う事もよく分かる。
旅団に入っても、昔から馴染みのある仲間達とばかり冒険に出ていた俺は、彼女らに強く旅団に入る事を勧める立場にはなれそうにないが──
一応これでも旅団長だ、勧誘の一つでもしておこう。
*****
「う──ん、『黒き錬金鍛冶の旅団』に入団かぁ……考えておくよ」
「そうですね、それも良いかもしれませんが──今はまだ、結構です」
あ──あ──、言わなきゃ良かった。なんだろう、このフラれた感じは……
だが、予想していたよりもやんわりと断られた気もする──ダリアに至っては、前向きに考えておく姿勢を見せるとは意外だった。まだ会ったばかりだが、一言で断ると思っていたのだ。
「フレジアはどう? うちの旅団に入れば猫とも遊べるぞ──あ、でも子猫は大きくなったら管理局に引き取ってもらうかもしれないんだった。だからあまり情が移らないようにな」
少女は「猫……」と呟いて、お気に入りの子猫を抱き締める。
「ミィィ──」
彼女の腕の中で子猫が鳴き声を上げて彼女を見上げている。
「あ、ずるいぞ! 猫をダシに勧誘なんて!」
ダリアが焦りを見せて声を上げた。
「お姉ちゃん……」
フレジアが猫を抱いたまま姉をじっと見つめている──
「こらこら、流されるな。旅団に入るのは色々と考えて見極めてからって決めてたろ」
姉の言葉に妹が「でも猫が居るし……」と言うと腕の中で子猫が鳴き声をあげて少女に甘える。
なんだか微笑ましい姉妹だ。
「まあ、焦って決める事は無い、うちとしても強力な団員が居た方が心強いが──近いうちに、上級難度の転移門に挑戦するつもりだからな。君らも良ければ臨時の団員として参加してみないか」
そう言うとフレジアが「上級には行ってなかったの?」と尋ねてきた。
「ああ、俺は団員に命だけでなく、身体も大事にして欲しいからな。ほら」
そう言って右脚の義足を見せる。
「こんな事にならないよう、実力を付けてから上級に行かせようと思っているよ」
へえ──と、感心した様な声を上げるラピスとダリア。
彼女らも多くの旅団と共に冒険に出ているはずで、そうやって、自分達に合った旅団を探している部分もあるのだろうと思われた。
「入団はさておき、試しに仲間達と一度、中級難度の転移門に行ってみて欲しいね。個人的には二本の手斧を使った戦い方というのを見てみたいんだが」




