三美人の冒険者
「私はダリア、この子は妹のフレジア」
大柄な女は長椅子の後ろで、子猫達と戯れている、金髪の少女を指差す。
「私はラピスといいます。よろしくお願いします」
青い髪に青い瞳の美しい──少女? と言うには大人びた印象のする可憐な少女が言った。この娘も、子猫と遊んでいる少女も、それほど強い冒険者には思えないが──
子猫達は金髪の少女に凄く懐いており、少女の近くで子猫を見守っていた母猫のライムも、今では彼女が子供達の遊び相手に相応しいと認めた雰囲気すら出して、床に脚を折って眠っている。
「ともかく、俺が鍛冶師として復帰できるかは分からない状況なので、明確に魔法の剣を造れるかどうかは応えられない」
俺の言葉に彼女らはそれは困ると訴える。
「実は、他の錬金鍛冶屋にも依頼を出したのですが『うちでは造れない』の一点張りで……『オーディス錬金鍛冶工房』のオーディスワイアが提唱した武器なので、造れるとしたらその店だけだ、と断られてしまったんです」とラピスが言う。
「まあ、錬成指南書を書いて、まだ一月ほどしか立っていないし、さっきも言ったが、失敗して素材を失う危険が高い高難度の錬成だから、気軽に訓練をする訳にもいかないからな……普及には、まだまだ時間が掛かるだろう」
「だからこそ、オーディスワイアさん、あんたに頼みに来たっていうのに……」
ダリアが悔しそうに言う背後で、その妹は子猫達を抱いて幸せそうに遊んでいる。
「それにしても、噂の『三美人の冒険者』が魔法の剣を求めて訪ねてくれるとは思わなかったな。ところで、二本の手斧を使って戦うというのは誰なのかな」
俺は興味津々でそう尋ねる。
「噂の、だなんて照れるねぇ──手斧を持って戦うのは妹のフレジア。私は大剣、ラピスは長剣さ」
「美人だなんて、そんな──」と照れているラピス達、俺は意外な答えに言葉を失ってしまった。
「え、その子が二本の手斧を使う戦士なの? 全然そうは見えないんだが」
子猫に頬ずりしている少女は優しげで、二本の手斧を手にして魔物に切り掛かる様な戦士には、まるで見えない。
「この子は普段はおどおどして弱そうに見えるけど、冒険になると人が変わった様に冷静に、冷徹になって敵を倒していくよぉ。まるで狂戦士みたいにねぇ」
いひひひひっ、と笑う姉の背後に立つと、その頭の上に子猫を乗せる。
「ゥニャァ──」
子猫は姉の頭に爪を立てて頭皮に攻撃を仕掛ける。
「痛い痛い、やめ、やめろぉ! 猫が爪を……! いたたたたっ」
ぱっと子猫を抱き上げて、伸ばしてきた姉の手から子猫を退避させる。
フレジアには猫を操る力でもあるのか? そんな風に思わせるほど少女と猫は息ぴったりだ。
「……ま、まあ、造れるかどうかはともかくとして、魔法の武器は、使用者の使える魔法と同じ属性の力を付与しなければならないので、どの武器に、どの魔法を付けるかを考えないと、意味は無いからな」
お茶を入れてくるから、その間に紙に武器の種類と、付与したい属性を書いておいてくれと言うとダリアが口にした。
「複数の属性でもいいのか?」
「構わない。ただ、対立属性だと失敗する確率も高くなるし、素材も高価な物を加える事になるので、そこは依頼主の財政次第だな」
部屋を出て調理場へ向かい湯を沸かす……しかし変わった連中だ。一人一人がそれなりに強いとしても、旅団に入らずに冒険するのは大変だと思う。……食料が支給されないのだから──冒険先で肉や野菜などを手に入れたり、入手した素材を金に換えて食料を買う事はもちろん出来るが。
「それにしても、あの小さな少女が二本の手斧で戦う戦士だとは……」
驚愕の事実……てっきりダリアがそうだとばかり思っていた、男顔負けの剛腕で敵を薙ぎ倒していく姿が思い描き易いのだ。こんな事を言ったらもぎ取られて(何を?)しまいそうで怖い。
彼女らにも魔法の武器を造ってやりたいが……体を癒す方法が──ナンティルが、管理局とパールラクーンの神に相談するとか言っていたが……
「わからん、さっぱり分からん」
紅茶の用意をすると、茶器を盆に乗せて運んで行く。
タイトル上部にある『方舟大地フォロスハートの物語』から《外伝》や登場人物の設定を読める物を投稿してあるので、そちらも読んでみてください。よろしくお願いします。




