水玉葱を食べよう
誤字報告してくれた人に感謝~ やはり「冷暗所」と表記すべきだったか……「低音の暗所で保存」ってロックな野菜なのか?(笑)
夕食は多くをリーファが一人で作ってしまった。俺は水玉葱を使った生野菜の盛り合わせと、燻製豚バラ肉と水玉葱の汁物を作っただけだ。
料理の途中でリーファは、水玉葱を切っただけの物を口にし「なるほど、こういう味ですか。確かに甘みが強いですね、肉に添えるだけでも面白そうです」と新食材に興味津々の様子だった。
さすがはレーチェの万能侍女。料理の研究も怠らない。
欠点があるとすれば、メイと同じ武術流派での修業のせいか気配が鋭く、子猫達からは敬遠されがちだ。ライムは餌をくれるリーファの事を避けたりはしないが、最初は近寄ると警戒心を露にしていたものだ。
「近頃は私を見ると、足にすり寄って来る様になったんですよ」と彼女は嬉しそうに報告してきた、彼女も小さな生き物に好かれると嬉しいのだ。
庭で訓練後の休憩を兼ねた柔軟体操をしているレンネルやニオ、フィアーネを呼んで食事を運ぶよう言いつける。
俺も木皿に盛り付けた生野菜料理を運んだりしていると、そこへ仲間達が帰って来た。
今日はあらかじめリゼミラとアディーディンクの子供達も連れて来ると予定に立てていたので、珍しい食卓風景になった。
ここには居ない五名は今頃、都市ウンディードの方で食事を取っているだろうか。
「いただきます」
全員が席に着くと食事を始める。
俺は何を措いてもまずは、水玉葱を使った生野菜料理から口にする。──我ながらいい出来だ……いや、切って調味酢を掛けただけと言われれば、その通りなんだが。
「玉葱っぽくないな、トマトみたいな食感の甘い玉葱──そんな感じだ」
どれどれと皆も、それぞれの取り皿に取ったものを口にする。
「美味しいですね、玉葱が苦手な人もこれなら食べられるんじゃないかな」
アディーが言うと子供達も生野菜料理に口を付ける。──怖いお母さんが、野菜も食えと常日頃から教育しているらしい。
そんな母親は子供達よりも俺の方をじっと見ている──
「なんだよ、そんなに見られていると食べ難いだろうが」
「気の流れは回復しそう?」
「う──ん? ……っていうか、そんなにすぐ効果が出る訳ないだろう」
だよな──と笑いながら燻製豚バラ肉と水玉葱の汁物を口にして、これも旨いなと声を上げる。
こいつは子供を産んでも、昔と、ちっとも変わらないな。──脳味噌が歳を取らないと言えば聞こえはいいが、成長していないと言えばそれまでである。
「おい、今なんかしっつれいな事を考えていたな?」
黒い瞳を不気味に輝かせこちらを睨んでくる。
「い──や、な──んにも」
こんな具合に俺達は和気藹々と(?)食事を愉しんだのである。
*****
翌朝の冒険にもリゼミラが出る事になったが、アディーは家に残り、子供達と過ごす事にすると言った。
リゼミラは上級難度の転移門に行きたいと言うが、まだその時期では無いと断りを入れる。もちろん多少の危険を覚悟して望む事も出来るだろう、リゼミラやリーファなら。
カーリアは危なっかしいし、カムイやヴィナーも、まだまだ中級の転移門で腕を磨く方がいい水準だ。エアネルやレンネルも同じ、まだまだ上級へ送り出すには不安だ──
しかし各自が情報を揃えて、上級のどういった所に注意すべきかを理解していれば、その危険にも対処できるだろう。
各自の足りない部分を知識で補いつつ、さらに道具や装備品で強化すれば何とかなる場合も少なくない。
「そうだな……しかしそれは、レーチェ達が帰って来た後に話し合う事にしよう」
俺は取り敢えず前向きに考えておくと明言してリゼミラに、上級への冒険は、もう少し待つ様にと促した。




