訓練で養うべき精神
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やや説教臭い内容に思うかもしれませんが、若者を応援する気持ちを出しています。
好意的に読んでもらいたいですね。
ニオとフィアーネの訓練が午後まで続いた。少年少女は、それなりに鍛練を積んでいたようで、体力はそれなりにあった。
問題は筋力と武器を扱う技術、敵を前に冷静に攻撃や回避を行えるかである。
リーファとレンネルが一対一、時には二対一という形でニオとフィアーネに戦い方を教えている──レンは最近、剣と盾を本格的に使い始めていた。
少年は休みの日になると他の旅団の、剣と盾を使う先輩戦士に稽古を付けてもらっていたらしい。そこでどういう戦い方や技があるかを学んでいたのだ。
「もちろんオーディスワイアさんから学んだ事もありますよ」とレンは言うが、俺が訓練で(剣と盾を持って)相手をしたのは数回あるか無いかだ。
にもかかわらず彼の技術は確かに、俺がかつて剣と盾を持って、冒険していた頃の姿を思い起こさせるものだった。
「レンは剣と盾の戦い方に才能があるのかもな、魔風の盾を作る素材が手に入らなかったのは残念だが、白銀騎士の盾が結構いい奴だったのが良かった。こうなると姉の武器も何か考えないと──」
俺の言葉にレンは「そうですね」と納得しつつ「その前に団長は体を治さないと」と続ける。
「だな……」
俺は頷くしか出来ない。
*****
昼食後に、また訓練が再開される。
午前中より厳しい内容だ、こういった時に言う決まり文句がある。
「実際の冒険で起こる戦闘では休ませてなどくれないぞ、連戦で体力的に厳しい状況になっても戦える根性を養え!」
精神論かよ! という事を言う奴も居るかもしれない、だから敢えて言っておこう。
仲間達が次々に倒れ、追い詰められて、一人で戦うしか無くなった時に、いったい何を頼ればいいのか。──それとも、これは勝てないと諦めるのか?
そういう状況に陥る覚悟をして訓練に望まなければ、実際にその様な状況になった時に、多くの人間は実力を発揮出来ないまま死んで逝くだろう。
困難な状況を常に想定して心構えをしていない奴は、危機になるとすぐに、そこから逃げ出す事を考える。そんな輩が戦えると思っているなら大笑いだ、戦いはそれほど甘くは無い。
孤立無援の状況でも生き抜こうとしなければ、誰がその状況を打破し得ると言うのか?
「死ぬ覚悟を持ちながら、生きる為に戦う」
一見、矛盾して聞こえるこの考えは、戦士であるなら当然の様に持っているものだ。
最後は自分の力のみが頼れる唯一のもの。これは必定なのである。
*****
夕暮れが近くなり、ニオとフィアーネがかなり息を苦しそうにし始めた頃、玄関の扉を叩く音が……ナンティルにしては早い。──そう思い扉を開けると、そこには荷車が停まっていた。
「『黒き錬金鍛冶の旅団』だね? ウンディードから届け物だよ」
そう言って男は木箱を敷地内に運び込んでくれた。
そこそこの大きさの木箱だ、訓練を終えたニオとレン(リーファは食事を作りに行った)で荷物を運び、宿舎前でそれを開けて中を見る。
「素材と──水玉葱ですかね? 何か瓶に紙が貼ってあります」
紙にはウンディードで聞いた水玉葱の保存方法(低温の暗所で水に漬けたまま保存)と調理法などが書かれていた。まだ発見されたばかりの為に「生で、茹でて、焼いて良し」と書かれていて「揚げ物には不向き」と少し考えれば誰でも分かるような事が書かれてあり、俺だけでなくレンもがっかりした様子だ。
「生野菜として食うか……調味酢はあるし、それが一番味わい易いだろうしな」
俺と四人はそれらを手分けして宿舎の中に運び込む。
「ニオとフィアーネの分も作るからな、食って行けよ?」
食堂に瓶詰めになった水玉葱を運んだ俺は、調理台にそれを乗せ、これは俺が切っておくとリーファに宣言すると、まずは他の生で食える野菜を切っておく事にした。
ニオとフィアーネ、レン達はまだ訓練を続けるみたいだ。二人の新入りは早く転移門を使って冒険に出たくて仕方がないらしい。
その気持ち、意気込みは買うが、無茶はしないで欲しいと言っておく。
彼らはまだ若いのだ、若さ故に無茶をしがちなのは俺自身が通った道でもある。その危うさを理解しているからこそ忠告するのだ、冒険の中で成長する部分も大きいだろう。しかし、それ以前に学び、知るべき事もまた多いのだという事実も、知って欲しいのである。




