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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第六章 休養と若手の育成

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慌ただしい日常

 翌朝──朝食を食べ終えて早々に、レーチェ達が都市ウンディードへ遠征に出向する。

 五人の仲間達を見送っていると、そこへリゼミラとアディーディンクがやって来た。


「あれ? あの子ら、もう出て行くのか? 早いねぇ──オーディスは体の方はどうなんだ?」

 リゼミラは、まくし立てるみたいに質問をぶつけてくる。

 今朝は寝台ベッドから起き上がるのに、体の痛みを感じずに布団から出る事が出来た、体力も徐々にだが回復してきているのを感じる。


「大丈夫だ、問題ない」

 じっと俺を見ていたリゼミラが、後ろのアディーに目配せする。

「……気の流れが微弱だけど戻り始めているみたい、けど、このままだと鍛冶屋の仕事とかは出来ないかもしれない」

 俺の身体を探査魔法で調べていたアディーが心配げに言う。


「そんなに悪いの?」

「筋力はある程度、戻っていると思うけど、持続して使おうとすると筋肉がすぐに痛んだり、力を入れる事が難しくなると思う」

 アディーの説明を受けてリゼミラが「問題ありまくりじゃないか」と呟く。


 そこへ、ニオとフィアーネがやって来た。彼らは革の籠手や鎧を身に着け、鉄の剣を腰から下げている。


「あれ? この子らは?」

「昨日入ったばかりの新人だよ、ニオとフィアーネだ」

 そう紹介すると少年少女は「よろしくお願いします」と頭を下げる。


「それより、子供達は平気なのか?」

 リゼミラとアディーの子供達を心配して尋ねると、アディーの母や姉が留守中に子供達の面倒を見てくれる事になったらしい。

「安心して冒険に出られるってもんよ」

 リゼミラの言葉に、ええい、この冒険脳め! と俺は心の中で悪態を吐きつつ、リトキスらはウンディードに遠征に出掛けたのだと説明する。


「え! ウンディードに開いた新しい転移門⁉ あたしも行きたかったのにぃ」

「昨日の夜に急遽きゅうきょ決まってな。水玉葱という野菜が気力回復に効果があるというので、それで俺の体調が良くなればと──」

 そう説明するのも若干照れ臭いものがある。


「……まあ、そういう訳だからお前らには、残っている仲間達と冒険へ行ってもらう。その他は新入りの訓練相手などだ」

 新入りの訓練相手としてリーファとレンネルが残る事になった。ちなみに若手の育成訓練に付き合うと、旅団から給金の様な物が出るのが一般的だ──出さない所もあるし、出たとしても冒険に行った方が稼げるだろうが。


 しかし、若手を育てるのは結局自分の為でもあるし、かつて自分が通って来た道ならば、そうするのが当然だと知っているだろう。

 持ちつ持たれつというものだ。それが出来ない者は、ここフォロスハートでは愚か者と呼ばれる。


 四名が庭で訓練を始めると、すぐに玄関の扉を叩く者が現れた。──やけに熱心に扉を強めに叩いている。


「はいはい、どなた様ですか」

 俺が警戒して扉を開けずに声を掛けると、向こう側から聞き覚えのある声と()()が聞こえてきた。


「にゃっ⁉ オーディスにゃのか? 混沌の魔物にやられてせっていると聞いていたのにゃ、無事なのかにゃ?」

 扉を開けるとそこには、いつも通り大きな荷物を背負った素材屋、猫獣人フェリエスのナンティルが立って居た。


「どこで聞いたか知らんが、色々と話が盛られているらしいな? 俺が倒れたのは事実だが、混沌の魔物にやられた訳じゃなく、大地の気を取り込み過ぎた──まあ、それはいい。それよりどうした」

 赤毛の猫獣人はぷるぷると震え出すと、急に彼女は怒り出した。

「どうしたじゃにゃいにゃ(ないにゃ)! 心配して来てやったのにゃ!」

 フシャァ──ッ、と威嚇いかくするみたいな音を立てる。


「わ、分かった……悪かった。だが、死にかけたのは本当だ。今もけいが弱まって、運動するのも大変なくらい弱っているんだ」

 むっ、と急に目を細めるナンティル。


「……確かに『勁の輪』が小さく薄い──修復したばかりにゃ? 勁の輪が傷ついたのは本当らしいにゃ、……立ち上がれるまで回復できて良かったにゃ。以前、勁の輪が壊れた者を見た事があるにゃ、衰弱して死ぬまで数日ほどだったらしいにゃ。壊れなくて良かったにゃ」

 彼女ら(フェリエス)はチャクラの事を「勁の輪」と呼ぶようだ。


「しかし、このままだと鍛冶仕事もこなせなくなってしまう。……なんとか回復する方法を知らないか?」

 そう尋ねると彼女は、今まで見た事の無い真剣な表情をして考え込む──


「……わかったにゃ、これから管理局と──パールラクーンの()()()()()()()()()()にゃ。少し待つにゃ!」

 彼女はそう言うと()()()()()()()()去って行った。


「管理局と神アヴロラに……? いったいどういう事を考えているんだ──? というか、ナンティルって何者──」


 俺は大荷物を背負って走って行く彼女の後ろ姿を目で追いながら、そういえば、あの業突く張りの素材屋の事を、そんなに知らない事に──思い当たったのだった。

獣人ナンティルの謎の行動──そこには意外な彼女の秘密が……

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