動物に好かれる人と嫌われる人
ブックマーク、評価、感謝ですありがとう〜
この章は短くなる予定です。たぶん……
新人二人に旅団員登録書を書かせると、それを持ってメリッサと共に管理局へ向かわせた。
ニオもフィアーネもミスランに実家があり、そこから宿舎の方に出張る事を選んだので、宿舎には空き部屋があるままになった。
その日の夕食後に、新たに加わった団員の事、都市ウンディードで見つかった水玉葱の事、火の神が連れて来た治癒師の力で体調がかなり良くなった事を話すと、団員達は新人の事よりも、俺の体調と水玉葱の入手に真剣に話し合いを始める。
「おいおい、新入りの事も少しは気になれよ」
「まずはオーディス団長の体調を復調させる事が先決ですわ。錬金鍛冶師としての団長の力が必要ですから」
レーチェはそう言ってウンディードへの遠征を計画し始める。
それにしても彼女の言った言葉を日本語に訳すと、まるで韻を踏んでいるみたいだ──ラップ、ラップなのか?
レーチェがノリノリで「だんチョウNO──たいチョウWO──ふくチョウさせるYO──」とか歌っているのを想像して吹き出しそうになる。絶対に彼女がやらない事だろう。
下を向いて吹き出すのを堪えていると、リーファが声を掛けてきた。
「それでは、循環気功で気を流してもいいんですね?」
「え? ああ……ゆっくりね、なんというか──新しく出来たばかりの勁みたいだから、徐々に力を加えていく感じで頼む」
彼女は横になった方がやり易いと言うので、食堂の椅子を並べてその上に俯せになる。
「いきますよ」俺の脚の付け根辺りに跨がったリーファが、背中に両手を置いて気を流し込んでくる。気の流れが全身に行き渡ると数カ所のチャクラのある場所を重点的に気を流動させ、体が温かくなる。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう。助かるよ、朝と夜にやるといいと言われたけれど──メイにも頼んでみるか」
そう言ったところに、メイが子猫を抱いて現れた。
「ミィ──! ミィ──!」
子猫は明らかに嫌がって鳴き声を上げている。少女の足下では母猫のライムがうろうろと歩いて、子猫を降ろすようにと迫っている様だった。
「メイ、子猫を置きなさい」
リーファがほんの少し怒った様な声を出す。
「でも──、でもぉ……」
じろっと姉弟子に睨まれたメイは泣く泣く、足下に子猫を降ろす──ライムはすぐに子猫に駆け寄って安心させると、ペロペロと舐めて毛並みを整えてやる。
「メイ、君にも気を流すのをやってもらおうと思っていたが──子猫に嫌われてしまう様では、循環気功を行ってもらうのは止めた方がいいのかな」そう言うとメイは「むぅ──」っと声に出してむくれる。
椅子に座っていると、俺の横の席にライムが跳び乗ってきた。その口には子猫がくわえられている。
「ニャァ──」
ライムは俺の膝の上に乗ると、脚の上に子猫を置いて鳴き声を上げる。子猫を抱いておけという意味だろうか? 小さな猫の体を抱き上げると、子猫は大人しく丸まっている。
「なんで、団長は鳴かれないの……」
恨めしげにメイが口にする。
「動物は、人の気配によって安全かどうかを判断しているからです。つまりメイの気配は危険な印象を彼らに持たれている、という訳です」
リーファはそう言うと「刺々しい気配が、あなたからは出ているのです」と忠告して去って行った。
「そ、そうなのか……?」
俺を見ながら少女は尋ねる──黙って、俺は頷いて見せた。
「だから……こう、自分の世界を広げてだな……多くの人や、動物やら自然やらにも心を開くというか──つまり、弱い生き物にも愛情を持つようにしないとダメなんだな」
「弱い生き物も大事にしてるもん」
「それな、心の底から自然と出るものと、上辺だけ取り繕ってるものとは違うんだよな。猫も鳥も自然の一部。奴らにはそういった誤魔化しが通用しないんだよ」
しまった、言い過ぎたようだ……メイは、ぷくぅ──っと頬を膨らませて怒っている。そんな様子の少女を見て、俺の膝に座り込んでいたライムが立ち上がり、鋭い威嚇の声を発した。
「ほらぁ、メイが物騒な気配を出すから余計に警戒しちゃったじゃないか。……メイに気を流されたら俺の貧弱な勁が壊されそうだから、止めておくか……」
俺の言葉に少女は「ふんっ」と鼻息を荒くしてユナの元へ駆け寄って行った。あまりに熾烈な訓練を簡単に乗り越えてしまった彼女には、自己に対する厳しさを他人にも求める癖があるのだ。
少女にはもう少し、優しさというものも学んで欲しいところである。




