再びの勧誘
ブックマークや評価、感想をもらえると書く側はやる気が出ますね。
ありがたいです。
午後になると、アラストラがお供を連れてやって来た。お供と言うのは、彼の後輩に当たる少年である──少年という年齢のはずだが体格が良く、視線も鋭いなんとも厳つい少年だった。
「こいつはレクト、剣士だ。今日はこいつの武器を強化して貰おうと思ってね」
「初めまして、レクトと言います」
少年は見た目は怖いが礼儀正しい良い子であった。第一印象で「怖い」とか思ってごめんね……
「それで──白竜角の槍はどうなったかな?」
その声から察すると期待半分、諦め半分という複雑な想いを隠して、努めて冷静でいようとしている感じだ。
俺は敢えて顔を背け、溜め息を吐いて見せた。
「やはり駄目だったか……」
アラストラはふぅ、と肩を落としたが、極力落胆を見せまいとする。
「成功しちった」
俺はお茶目な声でそう告げた。
「……は?」
「いや、だから成功した」
俺がにやりと笑うと、彼は「ぉお……!」と喜ぶ顔をして。
「だったら最初の溜め息はなんだったんだよぉぉおおぉ‼」
とバシバシと俺の肩を叩く。すみません、肩が外れそうなんで、止めてもらえますか……
俺はアラストラの熱烈な歓迎から逃げて、品物の保管庫に向かい、白竜角の槍を持って彼に渡した。
「性能を見るのが楽しみだ」
「鑑定書も用意してあるが」
俺がそう言って紙を差し出すと、彼はそれを見て「素晴らしい」と独り言を漏らす。
彼は終始上機嫌で、レクトの剣の強化を俺に任せると言い、その分の金と槍の錬成強化の成功報酬も、たんまりと支払ってくれた。
少年の目も俺を尊敬の眼差しで見てくれているのだろうが、見開いた青い目が怖い……
「オーディスワイア、是非あなたに私達の旅団に来て欲しい」
唐突にアラストラは言う。
彼によれば、俺の噂を聞き、もし今度の白竜角の槍の強化錬成に成功したら勧誘し、旅団に迎え入れて良いかと団長に話してきたらしい。それはありがたい申し出ではあるが……
「すまないな、先客があるんだ」
「……先客とは?」
「うむ。まだ旅団を持ってはいないが、そいつが旅団を立ち上げた時に、俺を専属鍛冶師として雇ってくれるらしい」
俺がそう言うと彼は何か言葉を発しようとしたが、その言葉を飲み込んで代わりにこう言った。
「そうか、なら仕方ないな。だがそれまでは贔屓にさせて貰うよ!」
アラストラの横でレクト少年も僕もです、と控えめに言ってくれたのである。




