火の神の謝意
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ブックマーク500、いつの間にか超えていました。ここ最近はオーディスワイアさんの体調の様にふらふらと考え事をしていたせいかなぁ。
引き続き応援をして頂けるとありがたいです。
その日の午後に、彼女らはやって来た。
火の神ミーナヴァルズと巫女達である。
対応に出たカムイが俺を慌てて呼びに来て「めめめっ、女神が降臨しました!」などと言うものだから、俺は想像の中で、天空から光と共に舞い降りる天女の姿を思い描いてしまった。
玄関の方へ向かうと、どうやらそれは幻想だったのだと思い知る。
「ああ、女神とは火の神の事でしたか」
玄関には二人の巫女を従え、紅玉の仮面を付けた浅黒い肌をした女神が立っていたのだ。
俺の言い方が気に入らなかったのか、女神は通訳の巫女に何事かを呟く。
「なんじゃ、その言い草は、我以外の誰なら良かったと言うのか」
巫女はそう言いながら錫杖をしゃんと鳴らす。
「いや、そういうつもりでは……とにかく、客間へどうぞ」
そう言って室内履きを三人分揃えると、女神はまた巫女に口を寄せる。
「いや、お前の部屋に行こう。今日はお前の体を癒しに来たのだ」と説明する。
巫女達は室内履きを丁寧に女神の前に揃えると俺に、部屋に案内するようせっつく。
廊下の奥へ向かうと自室のドアを開けて女神と二人の巫女を部屋へ招く。──すると、女神の錫杖を持った巫女が、あらかじめ用意していた言葉を口にした。
「火の神ミーナヴァルズ様は、自分が増幅した精霊力を制御できずに焔日を巨大化させてしまった事で結界を壊し、混沌を招き入れ──その為にあなたを現在の様な体にしてしまった事を嘆いておられます。そこで、我らの中で最も優れた治癒師の力で、その怪我を癒そうと考えたのです」
「勁──気の流れを修復したいのは確かだが、弱い気の流れしか受け付けない状態なんだ。強い気を流されても勁が傷つくだけなので、もしそうなら──」
帰ってくれ、と言おうとすると、緑色の外套を肩から下げた巫女が進み出る。
「それでは、まずはあなたの体の状態を見せて下さい」
そう言うと彼女は寝台に横になるように促してくる──俺は溜め息混じりに「分かった」と一言発して、巫女の言う通り寝台の上に俯せになった。
巫女は寝台の横に腰を屈めると、背中には触れずに手を背中に翳す。
どうやら卓越した気の使い手らしい、離れた位置から気を発してこちらの気の流れに干渉してくる──
「丹田とーー脾臓の機能が特に弱まっています。いえ、霊体の、と申し上げるべきでしょうか。このままでは霊体から肉体を維持する機能が働かずに、肉体は疲弊してしまうでしょう」
女神は巫女に治す手立てはあるのかと尋ねる。
「もちろんでございます。──しかし、多少の時間を要するでしょう、霊体の中枢渦を修復するにはそれなりの時間が掛かるものです。とはいえ、まずは壊れかけの中枢渦を安定させる事に注力しましょう、焦りは禁物ですから」
治癒師の巫女が言う「中枢渦」という言葉は、おそらく「円や輪」を意味するチャクラに近い概念だろう。気の制御を行う精気体にある内臓の様なものであり、多くの場合は現実の内臓と密接な繋がりを持っている秘教的な器官だ。それが機能不全を起こした事で、現在の俺はこの様な有様な訳だ。
「まずは微弱な気を送り込んで、中枢渦の機能を徐々に回復へ向かわせるよう修復しましょう。こうしておけば、徐々に快方へ向かいます」
治癒師はそう言うと、背中に手を当ててゆっくりと気を流し込んでくる。……微かに感じる暖かなものが身体の奥に届いて、体内から何かが広がるみたいな感覚が、じわじわと腹部から胸部にかけて広がった。
「ぉわぁぁ……な、なんかぞわぞわするぅ……」
「お静かに、それはあなたの中の勁が修復を始め、失った回路を治して循環を始めたからです」
治癒師の言う通り、それらの感覚は次第に腕や脚にも広がって、気が全身に行き渡ると、循環を始めた気の流れが安定して行く。
「な、治ったのか……?」
「いえ、まだこれからです。言わば、今のあなたの中枢渦は初期化され、赤子の様な状態に戻ったのです。これからゆっくりと今までの状態を取り戻す為に、外側からも気の流れを受けて回復するのが良いでしょう」
気を流せる人は居ますか? と聞かれたので「数人は居る」事を告げると、それならその人達に気を送り込んでもらうといいでしょう。という応えをもらった。
立ち上がってみると、確かに身体からギシギシと締め付ける様な痛みが取れて、腕に力を込めても痛みを感じなくなっている。
「いやぁ、だいぶ楽になりました。ありがとう」
治癒師の手を取って感謝を伝えると、彼女は少し顔を赤らめて「どういたしまして」と手を引く。
良かった、これでなんとか鍛冶仕事にも復帰できる道筋が見えてきた。
そんなやり取りをしている横で、火の神は不機嫌そうに、紅玉の仮面の下からこちらを睨んでいる様子だ。
チャクラはサンスクリット語です。RPGでもたまに見かける言葉ですね。内分泌系の器官に関連があるとか……誰にでもある訳では無く、後天的に「作り出す」ものだと言っていた人もいましたね。




