見舞い客の来訪
庭に出て、子猫の小便で濡れた上着を(水洗いしてから)洗濯機に突っ込んで水を入れ、液体洗剤を入れる。──昨日よりもだいぶ楽に体が動かせる感じだ、動物磁気、侮り難し。
生活圏に動物を飼っていると癒されるというのは充分にあり得る事だが、それは動物を愛している、または動物に愛されている者にとっては、だろう。
水場でメイが毛布を洗っている時に、玄関の扉を叩く音が……俺はゆっくりと玄関に向かい、扉を開けた。
そこにはアラストラとレクトの二人が立っていた、──彼らは俺の見舞いに来たのだと言う。
「体調は?」
アラストラは真剣な表情で尋ねる──俺は隠さずにありのままを伝えて、しばらくは鍛冶師としての仕事は無理だろうと答えた。
「そうか……混沌が侵入した時に、俺が街に残っていれば良かったんだが──すまない」
「別にあんたのせいじゃない、俺の判断でやった事だ」
「勁の回復ですか……食べ物によってある程度の影響を受けると聞いた事はありますが」
レクトはそう言って布で包んだ物を差し出す。
「薬草入りのお酒です。これは体に良いらしいですが、勁に良いかは──分かりません」
僕はお酒はまだ飲めないので、と少年剣士は言う。
俺は礼を言ってそれを受け取り、少し立ち話をした。──新しく建てられている鍛冶屋がもうすぐ完成しそうだと、アラストラはそちらを見ながら話す。
「今度の炉は最新式の物だから、銀鎧竜の甲殻も溶かせる──だが、俺がこんな状態だから、しばらくは武器防具を造るのは無理だな」
「だろうな、まずは体を治す事だな。俺達に協力できる事があるなら、喜んで協力させてもらうから遠慮なく言ってくれ」
彼はそう言ってくれた。
アラストラ達を見送ると、彼らの持って来てくれた薬酒を持って宿舎に戻る。
水場ではメイが毛布を洗い終え、物干し竿に掛けようとしているのでそれを手伝ってやる。──予想外に濡れた毛布が重く感じて焦ったが、メイと協力して毛布を物干し竿に掛けると一緒に宿舎へ戻った。
「団長……辛そうだね」
「力が──入れられないんだ、力を使おうとすると酷く痛むし……猫のお陰で少しは良くなったんだが」
俺の言葉に首を傾げるメイ。
「猫が? ……なんで?」
「猫の体からも微弱な気の流れに似たものが出ていて、それが人の気にも影響するみたいだな。猫はそれを知っているのか、俺の臍辺りに座り込んでいたよ」
そう話しながら宿舎に入ると、ライムが子猫達を連れて巣箱に戻るところだった。
「おいで──」
メイが子猫達にそう声を掛けるが、子猫達はメイの姿を見ると慌てて母猫の側に退避し、巣箱の中に隠れてしまう。
「だんちょぉ~~」
何故か少女は俺に恨めしげな目を向けてくる。
「俺に言われてもな……もっとこう……子猫や友達以外にも親しく出来る様になったら、猫達も寄って来るようになるんじゃないか──たぶん」
その後もメイは、巣箱の前で子猫達を優しく撫でてやって機嫌を取ろうとしていたが、子猫達はメイの手から逃げたり、引っ掻いたりして反抗し、少女を悲しませた。
「ミャァァ~~」
ライムが「諦めろ」とでも言うみたいに鳴き声を上げて、メイの手を子供達から遠ざけようと払い除ける。
メイはがっくりと肩を落として二階へと上がって行った……




