援軍の到着
気の力を使っての攻撃──実は今回の気脈の力(地の神の協力を得て使った力)を利用する方法は危険なものだった、という話。仲間や同胞を守る為に、自らを犠牲にする覚悟がオーディスワイアさんにはあるんですね。それくらいこちらの世界の神々に救われたという思いが強いのです。
金色の光の爆発が起きたのと同時に、黒い爆発も起こった。混沌の巨獣が撃ち出した暗色に輝く紫色の光が俺の近くで爆発したのだ。
俺を守る為に近くに居た戦士達と俺を巻き込み、爆発した魔力が防具や身体を引き裂き、地面をえぐるほどの力で俺を吹き飛ばした。
頭から出血し、傷ついた身体に力を込めて上半身を起こす──混沌の巨獣を見ると、奴はまだ立っていた。剣気の爆発を片方の腕で防いだらしい、その腕は近くの地面に落ちていて、青紫色の炎に包まれて燃え上がっている。
「おいおぃ……あれで腕一本だけ、かよ──ふざけんな……!」
体内に通した膨大な量の気脈の影響が出始めて、俺は喀血してしまった。内臓にまで深刻な被害を受けてしまったかもしれない。
このままでは何も出来ずに巨獣に踏み潰されてしまう……!
そう考えたが巨獣は動かなくなっていた、腕を落とされたまま微動だにしない。真っ黒な胴体の上にある棘や角が生え出た頭がだらんと下を向いている。
「ミシッ、ミシミシ……」
巨獣の身体から木材が軋んだみたいな音が聞こえてきた。よく見ると巨獣の胴体……竜の腹部から巨人の上半身に至るまでヒビが入り、それがどんどん広がっている。
「グガァァアァアァァッ‼」
混沌の巨獣は大地に響く様な絶叫を上げると、腹部からどす黒い光か炎を噴き出して、前のめりに崩れ落ちた。
周囲で見ていた戦士達から歓声が沸き起こる。
「いや、待て……! まだだッ!」
俺はヨロヨロと側に居た者の肩を借りて何とか立ち上がり、引きずられる格好で後退させられる。
「グゥルゥルルゥウゥ……!」
巨大な犬か狼の唸り声を思わせる音を響かせながら、巨獣は片腕で地面に手を突いて倒れ込むのを防いだ。
ゆっくりとした動きで上体を起こすと、赤く光を放つ眼でこちらを睨みつける。
「大丈夫だ! 利いている! いくぞぉお!」
戦士達の隊長が檄を飛ばしながら巨獣に向かって突進する。
膝を折っている竜の胴体に向かって鋭い突きを叩き込むと、次々に戦士達が彼の後に続いて攻撃を始める。
「グガァアアァァッ!」
攻撃を受けた巨獣が片腕を振り払って武器を手にした戦士達を弾き飛ばす。
ビキビキと音を立てながら立ち上がった巨獣の胸から、ボロボロと固い皮膚の様な物が落ちる。胸の傷口や切断された腕の傷から、青紫色の火が漏れ出している──かなり損傷した様子の巨獣を取り囲む戦士達。
俺は水の神が送り込んでいる銀色の光に包まれて回復を受けていた。──草地の上で倒れ込んでいるのは義足が壊れてしまったせいもあった、巨獣の放った攻撃を受けて金属の足先が捩じ曲がり、足首を可動させる革帯などが千切れてしまったのだ。
そこへ援軍がやって来た。
リゼミラとリトキス、カムイやエウラ、カーリアの姿も見える。
仲間達は武器を手にすると、後方から走って来たユナの使う強化魔法を受けて、魔法の光を纏いながら突進して来た。
援軍はその他にも大勢やって来た。冒険者達が閃光弾を見て応援に駆けつけたのだ。
彼らは大地を揺るがす様な勢いで巨大な敵に立ち向かって行く。その気迫は凄まじく、荒々しい雄叫びを上げながら向かって来る人間達の鬼気迫る姿に、混沌の巨獣は憤怒の叫びを上げながら、胸の傷を手で押さえ、どすんどすんと大きな足音を踏み鳴らして突撃して行った。
リゼミラが中距離から高速移動で獣の側面に回り込もうとすると、その動きに釣られて巨獣が立ち止まり横を向こうとする。がら空きになった脇腹に向かって魔法や弓矢が飛んで行き、この巨大な獣の討伐が始まったのだ。
俺はその様子を狭まる視界の中で──ぼんやりと捉えていたが、やがて意識を失ってしまった。




