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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第一章 錬金鍛冶の旅団

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やって来た災厄

 朝になっていつも通り、焔日様ほむらびさまにお祈りを。そう言えば、燃え盛る大蛇の姿を遠くから見た事はあるが、人の姿になった所を見た事が無い(聞いた話だと女性なんだとか)。


 人の姿と言ったが、大蛇が人の姿になるのでは無い。燃え盛る大蛇はそのまま残り、神の精神体が人の形を持って歩き回るのだ。

 ちなみに地の神の精神体は──ぷっ、あの屈強な巨人戦士が、あのちっちゃい姿になっているかと思うと──


 いかんいかん、それよりも仕事だ。

 今日は強化錬成が七件、付与錬成が三件だ。昨日に比べれば余裕だな──そんな事を思っていると、鍛冶場の入り口から男が現れた。


「よぉ、どうだい景気は?」

 なんだこの馴れ馴れしい奴は……そう思っていたのが顔に出たのだろう、するとそいつは。

「俺だよ、俺、俺!」

「なんだ、新手の詐欺かなんかか?」

「いやいや、あんたに数日前に鋼の剣を強化してもらったじゃないかよぉ」

 覚えてない? と尋ねる男。


「ぁあ、あの時の。すまん、男はどうでもいいんで、三日会わないと忘れちまうんだ」

 俺がそう言うと男はつれねぇなぁ、とか言いながら、「あんたの腕の事をあんなに宣伝してやったのによぉ」と付け加える。


「お前だったか、ここのところ異様に忙しくて、ぶっ倒れるところだったぞ」

「いやいやいや、忙しいのは良い事だって、昔から言うじゃぁねぇか!」

 おれは無視して強化錬成の準備をする。


「いやね。今日来たのは他でもねぇ、あんたを誘いに来たのさ」

「だが断る」

「まだなんにも話してねーだろーがよぉっ!」

 男──名前を名乗ったが、見た目が不細工な犬みたいな顔なので、ブサイヌとでも呼んでおこう。


 ブサイヌの話はこうだ。自分の所属する旅団「金の禿鷲はげわし」の専属の鍛冶師として働かないか、という誘いだ。

 聞いた事の無い旅団だ。「金」などと付けるのは、相当実力を付けてから名乗るべきだと、暗黙の了解でなっていると思っていたが──それは昔の話なのかもしれない。


「禿げてる奴御用達(ごようたし)の旅団なんてあったのか、知らなかったよ」

「禿鷲だ! ……それに俺も禿げちゃいねえぇよぉ」

「とにかく無理だ、一応先客が居るからな」


 俺がそう言うと舌打ちをして、「せっかく儲けさせてやろうと思ったのによぉ」とか言っている。

 俺は奴を無視して作業に戻ると「後悔しても知らねえぜぇ」と、どう考えても悪役の口にする台詞セリフを残して帰って行った。


 それにしても「金の禿鷲」とは、変わった名前を選んだものだ。

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