神々の援護
たくさんのブックマーク、評価をありがとうございます。
いよいよこの章も終盤ですが、もうちょっと練りたかったかなぁ……
その時だ。俺達の体を暖かい光が包み込んで、混沌の黒鬼達は後退った。精霊の力が放つ光に包まれた俺達の傷が癒え始め、力が涌き上がるのを感じる。
膝を突いていた者達が立ち上がると頭の中に──心に響く声が聞こえてきた。
『私達の力をあなた達に。私達の大地を、世界を守る為に。戦って、戦士達。混沌を打ち倒し、人々の暮らせる世界を守る為に!』
それは俺には聞き覚えのある声だった、続いて力強い男の声が聞こえてきた。
『お前達の武器に敵を退ける力を与えよう。さあ、その武器で混沌を打ち払え! 戦士達よ!』
次々に大地から金色に輝く気の塊が溢れ出て、体や剣を包み込んだ。
気力も充実し、俺達は混沌の前に立ちはだかる。一斉に鬨の声を上げて、恐れ知らずの戦士達が前線に突撃し、黒い鬼が振り下ろす武器を躱し、受け止めたりしながら次々に反撃していく。
「おおぉぉっ!」
俺は黒鬼が薙ぎ払ってきた剣を屈んで躱すと、大剣を斬り上げて、その一撃で黒鬼の胴体を破壊した。
剣圧に気の爆発を乗せて威力を倍加させた一撃が炸裂し、黒い上半身を半壊させた。全盛期の力を取り戻したとは言わないが、屈み込んだ無理な体勢から打った剣気の一撃が、ここまで威力を持つとは予想外だった。
「いける……!」
残りの黒鬼共の相手は数人の戦士達に任せて、俺や戦士隊長らは巨大な相手に立ち向かって行った。──竜の様な胴体だけで平屋建ての建物よりも高い背丈があるが、その上に巨人の上半身の様な身体が乗っており、その頭部は優に三階建ての高さにまで届くほどの高さがある。
混沌の巨獣は手から黒い魔力の塊を噴き出すと、それを武器として握り締めた。
危険を感じたが巨獣の側まで接近していた俺達に、今更逃げ出すという選択肢は無い。巨大な体の側面に回り込もうとする戦士を守る為にも、俺は正面から剣気の爆発で相手を攻撃しようとした。
大きく振り被り、気を纏わせた大剣を振り下ろした一撃が、巨獣の黒い魔力の武器に防がれた。「ジジジジッ」と音を鳴らして俺の剣から放たれた爆発のほとんどが、その黒い武器に受け止められてしまったのだ。
どすんと、前足を踏み込むと同時に薙ぎ払われた黒い武器に、弾き飛ばされた俺の身体は──数十メートルも後方に吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。
「ぐはぁッ!」
混沌の攻撃は引き裂く力でも無く、打撃でも無い、衝撃波が体中に響き渡って骨や内臓を破壊するみたいな攻撃だ。
精霊神の加護が無ければ危険だった。武器や鎧は傷ついている様子は無い、だが肉体は激しく打ちのめされ、力が抜け出ていってしまったみたいに感じる。
巨獣の側面に張り付いて攻撃しようとした戦士達が、次々に黒い武器や、竜の脚に弾き飛ばされて行く。
後方から黒鬼を仕留めた戦士達が援軍に駆けつけたが、彼らが迫って来るのを知った巨獣は、身体を暗い紫色に輝く気を纏って、周囲に無数の光弾を撃ち出してきた。
その紫色の魔力の弾が物に当たると炸裂し、周囲に居た戦士達は手にしていた武器や盾で身を守ろうとしたが、次々に炸裂する力に打ち倒されてしまう。
絶体絶命──このままでは全滅だ。
俺は革帯に取り付けた小物入れから、回復薬の小瓶を取り出すと、それを飲み干し、自身に攻撃強化の魔法を掛ける──
『待て、オーディスワイア。一時撤退するんだ、今、転移門からリゼミラ達がそちらへ向かっている。それまで持たせるのだ』
頭の中に響く男の声……おそらく地の神ウル=オギトだろう。いつもの俺なら例の台詞を口にし、死亡フラグもなんのその、敵を打ち倒して余裕の勝利……と行きたいところだが、今回はその心象が湧いてこない。
俺一人の力では精々、足止めするのがやっとだろう。
「ウル=オギトよ。ここで退けば、起き上がる事も出来ない戦士達が死ぬ事になる──それは出来ない、決して!」
仲間を、同胞を守れぬ者に何の価値がある? 己の身体を盾にしてでも身を挺して味方の為に戦う。……それがこの世界で共に生きる者達の結束という力になる。
「ここで下がる訳には行かない……断じて! 俺に力を貸せ! 地の神よ! 今一度、大地に満ちる気の力を貸し与えてくれ!」
立ち上がり、大剣を構えた俺の足下から金色の輝きが溢れてきて俺の身体を包み込んだ、暖かく力強い光……。周囲を見ると倒れていた戦士達に銀色の光が集まり、傷を癒しているのが見えた。
金色の光を剣に集中しようとする俺に気づいた混沌の巨獣は、手にした武器で俺を貫こうと動き出す。
突然目の前に銀色の光が集まって来た、盾を持った戦士達が俺を守る為に、銀色の光を纏いながら集結し、混沌の黒い武器を盾で、その身体で受け止めたのだ。
「ウォォオォオォッ‼」
戦士達は咆哮した。盾を前に突き出し、身体ごとぶつかりに行く様な格好で巨獣の攻撃を弾き、受け流すのに成功した。
「避けろっ」
刃に金色に輝く光を集めた俺は大剣を背中側から大きく振り被り、前に立っていた戦士達が左右に飛び退くと、脚を踏ん張って全力の攻撃を見舞おうとした──
混沌の巨獣は、もう一方の手から黒い魔力の武器を作り出すと、それを突き出して、黒と紫色の混じった光の砲撃を撃ち出してきた。
「ハァッ!」
怯む事など無い、撃ち出してきた攻撃を正面から打ち砕く気迫で大剣を鋭く振り抜く、その事だけに集中した。全身に気を漲らせ、身体に掛かる負荷も無視して──力の限り攻撃に全てを乗せて放つ。
巨獣の放った攻撃を断ち切って、金色の光の刃が巨獣の胴体に炸裂し、凄まじい黄金色に輝く爆発を起こした……!
例の台詞とは~察してください(笑)




