ざわめきの会議。気の扱い方
訓練日の夕食後の話題は当然、新たに旅団に加わったリゼミラと──仮とはいえ、訓練などに付き合ってくれるというアディーディンク達の事であった。
「凄い事になりましたわ。『金色狼の三勇士』とその旅団の『団長』にまでなったリトキスさんが居るのですから、この旅団は潜在的には、ミスランで一番の旅団と言っても過言では無いのではなくって?」
「いや、過言だろう。俺は冒険には出ていない鍛冶師だし、アディーは管理局との兼ね合いで旅団員登録は見送りになるだろうからな」
俺の冷静な言葉に副団長も「それはそうかもしれませんけれど」と不満げに言う。
「それよりも団長、普段の訓練では手加減していましたね? それもかなり大幅に、もはや手加減というか、手抜き水準で」
そう口にしたのはエウラだった、彼女は俺と戦って何度か勝利している──が、それは手加減されていたからだった、と言いたいらしい。
「まあ訓練で『瞬迅』を使うなんて普段はしないからな、相手がリゼミラだったから使っただけで、他意は無い」
納得いって無い様子でエウラは腕を組む。気の流動による瞬発力の上昇だけでは無いでしょうと、彼女はぶつぶつと文句を口にする。
「確かにあの剣捌きは今まで見た事の無い鋭さでしたね、左足のみを使った動きでもあんなに戦えるんじゃないですか」今度はカムイが文句を言う。
そうだそうだと双子が囃し立てているので、じろりと睨んで黙らせる。
「『瞬迅』や『剣気』は上級の魔物や生物相手に使うくらいで乱用するものじゃない、そういう風に身に付いた習慣が抜けきって無いだけだ。そのうち教える予定ではいたが──メイやリーファだって『瞬迅』を訓練では使わないじゃないか。そういうものなんだよ」
するとユナがメイに耳打ちして「使えるの?」と尋ねている。「うん、まあね」とメイ。
「でも私の場合だと、瞬発力を少し上げるのが精一杯かな、団長は体内に溜めた『内気勁』を自在に外へ放つ『外気勁』に繋げる事も出来るみたいだから、かなり熟達した練気の使い手って感じ」
少女はそう言って剣を振り下ろす真似をする。
リーファも「確かに」と頷く。
「というかエウラだって『内気勁』は使えるじゃないか、けど訓練では使わないだろ? それと同じだ」
「私は筋力の増加には使えますが、瞬発力を上げる事は出来ません。『外気勁』──というのはこの前団長に教えてもらいましたが、剣に気を纏わせる事は、まだ出来ないです」
気の扱いは戦闘経験の中で学ばせる方がいいと考えていたのだが、そうではなく若い頃から気を練る事を学ばせる方が良いのだろうか? その辺はメイにも助言を聞いておくべきだった。
そう思い、メイに尋ねたが「う──ん、分からない」と言われてしまった。
「道場では格闘技とほとんど同時に内気勁を練る呼吸法を教わった、けど同年代の子でもすぐに使える子と、使えない子が居たから」
……まあ、やらないよりはやっておいた方がいいのかもしれない。それでは明日も訓練に残る者には気を扱う訓練をしてもらおうと提案し、その日の会議は解散する事になった。




