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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第五章 混沌の海と神々の大地

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子供と猫

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 なし崩し的にリゼミラが旅団に加入した。──その日はリゼミラが剣士の指導に、アディーディンクが魔法使いの指導に当たる事になった。

 俺は何故そうなったのか、アディーとリゼミラの子供の面倒を見ていた。

「いやほんと、何故なんだぜ……?」

 片手で娘のリッカを抱き抱え、もう一方の手で木剣を持ち、息子のアドラストスと剣の練習をしている。

 五歳の男の子が振るう剣を受け止めて、形だけの反撃をする、そんな練習だ。


「にゃぁぁ──」

 倉庫の陰から猫が姿を現した。

 明らかに子供達を警戒している──こちらに近寄ろうとはしない。

「ぁ──、ねこだぁ」

 アドラストスが猫に気づいて近寄ろうとする、すると猫は身構えて「シャァァ──ッ」と威嚇いかくの声を発した。大人の人間を威嚇する事はほとんど無い、子供に威嚇するのは身体の大きさが近い為か? 争いは同じくらいの者同士でしか発生しない、という奴だろうか。


 子供アドラストスはびくっとして立ち止まった、危険な気配を敏感びんかんに感じ取ったらしい。俺はアドラストスを押さえるとリッカを任せて、そこで待てと言い含める。

 猫はうろうろと倉庫前を歩いて、子供達を近寄らせようとはしない。子猫を守ろうとしているのだ。


 宿舎の玄関内の小さな棚の中から猫の餌を取り出すと、倉庫の中に入って皿の上に煮干しを入れてやる。

「よしよし、でも子供を引っくのは止めてくれよ、泣き出すからな」

 母猫は「うんうん」とでも言ったみたいに「ウニャウニャ」言いながら煮干しにかじりつく。


 倉庫を出るとアディーの子供達が猫に興味津々の様子で待っていた。

「餌を食べている時は特に近づいちゃダメだぞ、引っ掻かれて痛い痛いだぞ」

 そうは言っても珍しい猫を放ってはおけない様子だ、俺は白猫が食事を終えたところを抱き抱えて、リッカ達の前に連れて来た、猫は観念したみたいにじっとしている。


「優しく撫でるんだぞ」

 頭をそっと撫でる手本を見せて、アドラストスに、その次にリッカに撫でさせてやる。猫はふて腐れた顔で黙って、その行為を受け入れている様子だ。

「ふわふわ」とリッカが嬉しそうに言ってお腹を触ろうとすると、猫は鋭い威嚇の声を上げて、押さえていた俺の手を振り払い、倉庫の中へと逃げて行ってしまう。

「倉庫の中は危ないから入らないようにな」


 子供達に言い聞かせると仲間達の訓練の様子を見せる事にした。カムイはリゼミラから双剣での戦い方を学んでいる。

 実戦ですぐに使えるようになるとは思わないが、いつかは双剣も扱える剣士になって欲しいものだ。そうすれば旅団の戦力の幅も広がっていくだろう。


 カムイは頑張っていた。噂に聞いていた「苛烈なる双剣」と訓練が出来るというので、張り切っている気持ちが伝わってくる。二本の木剣を手に、果敢かかんにリゼミラに斬り掛かって行く。

 戦力差は歴然としていた、積み重ねてきたものが違うから仕方が無い。

 訓練だけでは無くリゼミラは、実戦で人以外の魔物や竜種にすら挑んでいるのだ。一時いっとき、冒険を離れていたとは言え、再び舞い戻って来たこの女は、全盛期と変わらぬ様な仕上がりで旅団にやって来たのだ。


「金色狼の旅団」はすでに俺達が入っていた時の面子めんつはほとんど居なくなり、体制も様変わりしたという話しか聞かない。それでリゼミラは「黒き錬金鍛冶の旅団」の話を聞いた時に、真っ先にこの旅団に入る事を決めたのだろう。

 団長としてはありがたい話だが、個人としては気苦労を抱える事になって胃が痛い……そんな思いである。


 *****


 昼食を取る事になった、例によってリーファが食事を整えてくれたのだ。アディーやリゼミラ達も加えて昼食は賑やかなものになった。


 カムイは体中にあざが出来たのではないだろうか、相当打ちのめされていたが、成長の手応えの様なものを感じているらしい。やる気だけは充実しているのが見て取れる。


 訓練日の午後も途中まではリゼミラも参加していたが、ミスランに住める場所を探しに管理局を訪ねる事になったのだ。

 アディーディンクも管理局の仕事が無い時には旅団の訓練や冒険に参加するという。


「よろしくお願いします」

 アディーはリッカと共に頭を下げる。リッカは帰りぎわにこちらへ手を振っていた、何故かは知らないが、彼女に気に入られてしまったらしい。

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