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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第五章 混沌の海と神々の大地

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「剛剣」対「双剣」

 取り囲む旅団員達の期待(どういった期待なのかは知らん)の視線が向けられる中、木剣を手に対峙たいじする俺とリゼミラ。


 いかん、こいつ本気で旅団に入るつもりだぞ。

 感じる威圧感プレッシャー、あの頃と変わらない。戦いになるといつでも、こいつはこうだった。怪我はしたくないし、させたくもないが──仕方が無い。()()()()()()()()()()()()()


 審判役にリトキスが立った、俺は木剣を前に構え、リゼミラは両手の木剣を身体の外に少し広げる様な感じで握っている。

「はじめっ!」


 掛け声の瞬間に俺は全身に気を巡らせた。筋力を解放し瞬発力を上げる。──正面から突っ込んで来たリゼミラの左から迫る剣を受け止めると、重い一撃で腕の筋肉がきしんだ様な音を立てる。

 がつんっ、と二撃目も受け止めると、すかさず一歩前に踏み出しながら反撃する。──横薙ぎにした剣を完全に躱し切るリゼミラ。

 前に身体を突っ込ませていたのに、あっさりと後退して木剣を躱した、カムイやエウラなら胴を払われて終わっているだろう。

 俺のいつもと違う身のこなしや速度を見て、周囲に居た団員達の間から、静かなざわめきが起こる。


「相変わらずなかなかの切れ味だねぇ、『瞬迅』を使っての攻撃。な──つかしい」

 するとリゼミラも気を体内に流して応戦する。

 二刀と一刀では攻撃の回転数が違う。それに相手は「苛烈なる双剣」のリゼミラだ、徐々にその連撃の数を増やしてくる。


「あぶねっ……! このぉ……!」

 俺はすれすれで突きを躱したが、体勢が崩れてしまう。咄嗟とっさに相手への反撃に木剣に気をまとわせて、思い切り剣を振り下ろしていた。

 剣の先から放たれた気の爆発が地面に叩きつけられ、周囲にびりびりとした衝撃を発生させる。


 だがそれよりも速く、リゼミラが突きを打った直後に前に飛び出して来ていて、俺の横を駆け抜ける形で腹部を薙ぎ払っていたのだ……


 俺は痛打を受けて膝を突いた。手にしていた木剣を落とし、腹を押さえる。

「がっ、……は。いっ、いってぇ……!」

 思わずそう漏らすとリゼミラが「わるいわるい」と口にする。

「けどあんたも、あたしの頭をかち割るつもりでいたでしょ、おあいこよ」

 そう言ってえぐれた地面を木剣で指し示す、そこには俺が気の爆発を打ち込んで出来た、ちょっとしたくぼみが出来ていた。


「けどちょっと寂しいわ。ずっとあたしと肩を並べていた戦友が、こんな落ちぶれ……いえ、さびれて? すたれて、かな?」

「おい」

 俺は地面に膝を突いたまま思わず突っ込んだ。


「ふっ、……俺は四天王最弱。とは言えこんな筋肉達磨(だるま)に膝を折るとは、四天王の面汚しよ……」

「また筋肉達磨って()()()なぁ! ……つか、四天王って何よ」

 ユナが魔法で腹部の痛みを和らげてくれた。「瞬迅」で気を流していなかったら内臓を損傷していたかもしれない。

 俺はユナに礼を言いながら立ち上がる。


「ま、何はともあれ、これであたしも『黒き錬金鍛冶の旅団』の一員という事でいいよね? 団長さんっ」

 片手で二本の木剣を持つと、空いた方の手で俺の肩をぽんぽんと叩いてくる。

「そんな約束はしていない! というか、二人の子供が居る母親が冒険とか、父親は何してんだ、止めろよ」

 いやぁ……という感じで頭をいているアディー、その首に抱きついている娘が、俺とリゼミラをきょろきょろと見比べている。


「リゼはもう半年くらい前から、ちょくちょく冒険に出ているんですよ。ミスランとゲーシオンの転移門を使って、ですからまぁ……他の旅団に彼女を任せるよりは、オーディスさんやリトキスの居る旅団に預ける方が、僕としては安心なんですが」

 愛妻家と恐妻家を足して二で割った様な旦那だな、こいつは……


「子供はどうするんだ、宿舎に一緒に住まわせる訳にはいかないぞ。第一お前はどうすんだ、アディー」

「僕は管理局の魔法技術班の魔法指導員として働いているので──ミスランでの仕事も多いんです。ファンディアの借家しゃくやは引き払って、ミスランに移れば良いですし」

 子供は、と言うと「子守を雇っていました」との事だった、さらにリゼミラは「オーディスが面倒見てくれるでしょ」と勝手な事を言い出す。


「ふざけんな、俺は鍛冶屋の方もやらなきゃならんのだ。これ以上仕事を増やされてたまるか」

 だが結局、リゼミラの入団に前向きなリトキスとレーチェの二人に押し切られて、渋々だが了承する事となってしまった。

 しかし主婦業もあるので、三日に一回くらいの割合で冒険に参加する形を取る事になるだろう、と決まったのである。

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