蒼髪の天女旅団
なんとも呼び難い旅団名だ(にょにょって言いそうになる)、ハッテン団とでも略してやりたい。
そんな事を思いながら、ほいほいと彼らの拠点のある──大通りから入った場所にある、大きな建物の中に入って行く。
若い旅団員に例の冒険者の名前──アラストラは居るかと尋ねると、「はいっ」と畏まってすっ飛んで行った。どうやらそこそこの地位に居る男だったらしい。
アラストラはすぐにやって来た。彼は今日は冒険には行かないのだろう、くつろいだ格好をしている。
「どうした、槍は明日の午後取りに行く予定だが──」
彼に事情を説明しながら、俺は段々と冷静になってこう言った。
「──という訳で白竜の竜血晶があれば成功率を上げられると思うのだが……考えてみれば、高価な竜血晶を使っても、恐らく成功率は五割にも満たないだろう。使う使わないは、俺が決めれる問題じゃ無いな──申し訳ない」
俺は謝罪して鍛冶場に戻ろうとしたが、アラストラは俺の話を聞いて「すぐに持って来る」と去って行く。
彼は白竜の竜血晶を二つ持って来て「一つはあなたにやろう」と言ってくれた。
「正直、うちの錬金鍛冶師にも、あなたくらいの発想を持って欲しいものだ。高位錬成と聞いただけでぶるってしまうような連中しか居ないんだ、ここの旅団は」
彼はそう言って快活に笑う。
「良い武器が手に入るかは、いつも賭けみたいなものだからな。今回はあんたに賭けてみる、それだけの事さ」
アラストラは俺の背中を軽く叩くと、拠点の外へ送り出してくれた。
鍛冶場に戻ると、すぐに作業台へ向かう。
折角依頼主が快く素材を提供してくれたのだ。ここはその心意気に応える場面だろう。この槍を強化し、アラストラが困難な冒険でも立ち向かえる様にする為に。彼の活躍がフォロスハートにとって多くの利益になるはずだ。
俺の様な、もう冒険に出る事の出来ない連中は、そうやって彼らを支えるのだ。そうやってこの世界は回っている。
「うし、やるか!」
俺は気合いを入れて、この難題に向き合う覚悟を決めると、詠唱を始める。
『竜の眠りに静かに唄え、春霞に濡れる木の葉の上で、孤独を知る者は静寂を知る、霊位に並ぶもの、木霊する静寂の音色。巨大なる力の奥義は死に宿る、告げよ、静かなる滅びの刻を』
いくつもの素材が共振し、その中央にある槍に引き付けられると、粉々に砕けた竜血晶が槍に溶け込み、全ての力を引き込んで混じり合う……
「よぉし! 完成だ!」
俺は小躍りした。さすがにこれだけの高価な武器を使っての錬成は緊張する。念の為に鑑定をしてみたが、予想よりもいい数値が出た事で二度嬉しい結果だった。
これならアラストラも大喜びで報酬を払えるに違いない。
その日は多くの客が予約していた物の錬成を済ませる事にした。作業していると疲れはほとんど感じなかったが、夜になる前に急に眠くなってきて、倒れ込む様に眠りに就いたのである。




