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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第五章 混沌の海と神々の大地

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過去の話と来客

 訓練日の朝。朝食後に訓練内容を話し合っていると、カムイが俺に戦闘訓練の相手になってくれと言う。

「俺から学べる事が何かあったか? 何も無いだろう」

 暗に「他の奴と訓練した方が良くないか」と言ったのだが。

「いえ、双剣の戦い方について何か講義をしてもらえるかなと思って。『金色狼こんじきおおかみの三勇士』でオーディスワイアさんの好敵手ライバルだった人が確か──」

「おい、待て。好敵手? いったい誰の事を言っているんだ?」


 俺の言葉に首を傾げるカムイ、「双剣使いの──名前は……えぇと」と思い出そうとしている。

「リゼミラさんでしょ」と言ったのはヴィナーだった。

「リゼミラは好敵手じゃないな。ぶっちゃけ俺の記憶だと、あの女にボコボコにされた思い出しか出てこないんだが」

 そう言うとカムイやヴィナー、エウラやユナまでが「またまたぁ~~」と口にする。


 またまたぁ。じゃね──よ、と言ったのだが──どうも信じてもらえない……何故だ。別に過去の俺の事や、リゼミラの事を知らないだろうに。

 一撃の威力では俺が勝っていただろうが、あの女の連撃は本当に危険だった。真剣での勝負など絶対に受けたくは無い、木剣でもお断りだが。

 この会話が流れて訓練に移る段になった時には、すっかりリゼミラの事も忘れていた。なにしろもう数年以上もずっと会っていないのだ。


 ところが、──ところがである。

 庭に出て訓練を開始すると扉を叩く者が現れた。俺がカムイの前で木剣を手に戦闘訓練を始めている時だ。

 誰かが扉を開けて来客の対応をしたのだろう、宿舎の中に子供を連れた男女が入って来た。俺はカムイの振るった木剣を弾き、義足の感触を確かめて脚を地面に踏み込み横に移動する。


「あららぁ──、らしくない動きをしちゃって」

 なにやら外野の声が聞こえた、それが誰なのかその瞬間は分からなかった。

 反撃してきたカムイの木剣をしゃがんでかわしながら木剣をぎ払う。

 剣先が革の鎧をかすって小さな音を立てる、カムイが地面を蹴って離れたので、当たりが弱かったのだ。


「あ、お久し振りです! リゼミラさん、アディーディンクさん!」

 そう言うリトキスの嬉しそうな声が聞こえた。

 俺はてのひらを突き出して、カムイに待つよう申し出て振り返る。──そこには懐かしい人物が立っていた。


 リトキスに挨拶し、俺に気づいたアディーディンクが子供を抱き抱えながら頭を下げているのが見えた。

 その手前に居るのが俺とほぼ同じ身長の女、リゼミラだ。かつて、この二人と俺は「金色狼の三勇士」などと呼ばれ、優れた冒険者だと、()()()()()()()語られもした。実際はただ冒険が好きで活躍していただけの、ただの若造だったのだが。


「久し振り~~オーディス! 元気にしてた?」

「おぅ、つい今し方までは元気だったぞ」

 俺がうんざりした口調で言うと大女は「あっはっはっは」と笑う。

 どういう訳かこの女は以前会った頃と変わらぬ──多少老けたが──身体を維持している感じだ。いや、むしろ体格が良くなったかもしれん、そう思うくらい衰えを見せない首や腕の太さがある。

 まるで子供を産んだ後も冒険者を続けているみたいな体つきだ。


「オーディス、なんか縮んだ? こんなに細かったっけ?」

「もう冒険には出てないんだから当たり前だろ、お前は何なんだ、子供が居る癖にその身体は。あの頃と変わらん筋肉達磨(だるま)っぷりじゃね──か」

 俺の言葉に目を細め、口元だけで笑って見せる。


「相変わらず口の悪い……! まあ元気にやっているようね。安心した」

 俺達がそんな会話をしていると、訓練も放って周りに居る団員達は、客の素性を理解して興味を持ってこちらを見つめている。


「紹介する、この大女がリゼミラ、そっちの()()()()男がアディーディンクだ」

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