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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第五章 混沌の海と神々の大地

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疾風の籠手と「能力解放錬成」

 ミスランまで戻って来た。──今朝フレイマに出立して昼前には戻るという強行軍だ、宿舎にはリーファとエウラが残っており、掃除や猫の世話をしていた。

「も、もう戻って来たんですか」

「おぅ、火の神も儀式前の身を清める期間に入っていて忙しくてな。助かっ……、報酬はかなり奮発して貰えたので良かったが、あの大剣を造る苦労を思い出すと、──多いかどうかは議論の余地がありそうだ」


 エウラは母猫に餌をあげているところだ、猫好きなエウラには白猫もなついている。

「ニャァ──」

 猫は餌を食べ終えると、俺が帰って来たのを知って鳴き声を上げ、脚にすり寄って来た。

「懐いてますね」

「子供が産まれる少し前まで、ずっと世話をしてやったからかな。子猫はどんな様子だった?」

 エウラは子猫達は眠っていたと話す、俺は母猫の背中を撫でてやると、宿舎に戻って報酬をしまう。収支報告書に記帳し、素材置き場に向かう。


 疾風の籠手を作るのだ。

 大きさや形などは決めてある。


 青銀甲鼬アイングファーの甲殻を組み合わせ、連結部に使う留め金と内側に使う皮を用意する。手首に固定する為の革帯ベルトを作り、甲殻を削り、穴を開けてそれらを組み上げていった。

 ガチガチに固定するのではなく、甲殻同士が多少は可動かどうできる「遊び」を作っておく。


 こうして作業台の上で完成した籠手を、次は錬成台の上で強化するのだ。ここで()()()()()()()()()()()()()()()()」を行う事で初めて「青銀甲鼬の籠手」が「疾風の籠手」となるのだ。

 もちろんそれ以外にも錬成強化を行って「硬化」「劣化防止」「防御力強化」などを付与する。


 それ(青銀甲鼬の籠手)を一遍いっぺんに二つ作り上げた。

 手首を守る部分は特に外側にも曲げられるように丁寧に作った、武器を握る手が籠手に邪魔されてはしょうも無い。


 使い易さ、丈夫さ、機能性、この三つを重視して作り上げた物に「能力解放錬成」をし、さらに強化錬成を行う。

 高難度とまではいかないが、そこそこ難しい錬成になる。旅団で使って良い分の素材を使用するが、そこまで強化する訳じゃない。何事も程度というものがある。


 カーリアに渡す物には「魔力強化」や「魔法攻撃力強化」などを付け、レンネルに渡す物には「攻撃力強化」や「防御適性増加」(盾などを使った守りの効果を上げる)などを付けて、それぞれの能力を支援する効果を持たせるのだ。


 こうして「疾風の籠手」を錬成強化し終わると、次はエアネルに渡す、森竜グフラーガの尻尾のうろこと甲殻を使った籠手を作る番だ。──尻尾の根本に近い部分の甲殻を盾代わりにする「小盾バックラー付きの籠手」を作り、これに錬成強化を施す。


 森竜の素材も物によっては「能力解放」を行って特性を引き出せるのだが、その為に使う素材や錬成法則を発見しないとならず、尻尾の甲殻や鱗にも特性が隠されているかもしれないが、未だに発見されていない。

 森竜の素材自体があまり手に入らないから余計に困難だろう、新しい部位から特性を引き出すという作業は。


 素材の本質を見極めて、特性をばんばん引き出せる、そんな錬金鍛冶師に、私はなりたい。


「でも、無理だわ──森竜は土や木に関係する素材と相性が良いのは分かっているが、その無数にある素材から()()()を見つけ出し、さらに錬成法則も見つけるとか無理だわ──」

 試してもいいけど、素材が大量に必要だよね……止めておこう。もう少し様々な素材が倉庫に集まって、余る物が出そうになったらやってみよう──それくらいに考えておく。


 錬成法則を考えるのも大変なのに、素材に合わせた方式を見つけ出すなんて、同じ素材を使って何十回と失敗した先に当たりの素材を見つけ出し、やっと成功するような──何百、何千の試行錯誤しこうさくごを積み重ねて、初めて良い結果が得られるものなのだ。

 相当な覚悟を持った研究者気質の者にしか出来ない案件と言える。

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