遠征先からの帰還
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午後になり、旅団員が帰って来た。気のせいか皆、少し逞しくなったように感じる。──いや、リトキスやレーチェとかは変わらんが。
「ただいま戻りました」
「おみやげ──」
と、メイが箱に入った菓子を手にしている……が、渡す気は無いみたいだ。それは土産とは言わんだろう。
「あら、もしかして届けられた物を一人でしまってくれたのですか? ご苦労様でした」
レーチェはそう言いながら、馬車から次々と運ばれて来る木箱や麻袋を、宿舎の前まで運ばせ、御者に手当てを渡している。
団員は手にした物を自分の部屋に運んだり、宿舎内の倉庫へ運んで行く。
「あれ? オーディス……団長、ここにあった猫の簡易寝床は?」
エウラが荷物を運びながら尋ねる。
「取り敢えず、それをしまって来い話しはそれからだ」
馬車からの荷物を全て運び終えると仲間達を庭に集めた。何事かと思っている連中に、まずは遠征での働きを誉め、大量の素材などを倉庫に運び込むだけで疲れ果ててしまった、と言って一笑い取る。
「それと、新しい家族が出来ました」
そう言うと皆が「うん?」と首を傾げる。
俺は倉庫の奥にある箱を見に行けと言って、半開きになっている扉を開けた。
中に入って行った団員達が黄色い声を上げる。白猫は迷惑そうな顔をして、周囲を取り囲む連中を見上げながら、子猫達に乳を与えている。
メイが子猫を触ろうとすると、母猫は子猫を守る様に──脚でその手を振り払う。
大勢が猫の周囲に集まっている中、レーチェは倉庫の入り口に突っ立っている。
「まだ目も開かない子猫だぞ」
「親猫は違うじゃありませんの。それよりもどうでしたか? ウンディードの方は」
彼女にそう聞かれ、一瞬、言葉に詰まる。
「お、おう……まあその、なんだ──『象徴武具』のお陰で精霊力の増幅方法が増えたのを喜んでいたよ。うん」
しどろもどろになりながら何とか返答したが、レーチェは眉を顰める。
「何か──ありましたの?」
「はぁ⁉ な、何も無かったし。水の神も感謝していたっていうだけさ」
慌てて答えたが、何かを疑っている表情のレーチェ、俺は別の用件に話題を変える事にした。
「おっと、そうだ。皆にも伝えておかなければ。明日にでも俺は火の神に『象徴武具』の大剣を届けに行こうと思う。ついこの前、火の神ミーナヴァルズから手紙が届いてね、神貴鉄鋼で造った大剣で『送夏の儀』を執り行いたいというので造ったのさ。そういう訳で、明日から少しの間、猫の世話とか頼むな」
俺が倉庫内に居る団員達にそう言って宿舎に入ろうとすると、レーチェが小声で言う。
「何か怪しいですわね……」
俺は思わず振り返り「何がだ!」と叫んでしまった。
その日は皆から遠征先での出来事などを聞かせてもらった。どうやら、それぞれに良い経験になったようだ。
素材も揃ったのでウリスは弓職人に素材を持って行って、予定通り弓を造ってもらうのだと話す。カーリアは「疾風の籠手」を作って欲しいと言うので、素材を見た感じだと二人分は作れるだろうと応えた。
疾風の籠手を欲しいと思う者達で籤を引いて決めろと言うと、カーリアの他にカムイとエアネル、レンネルが立候補する。
四つの木片を用意して、その下を赤く塗る。この下の部分を手で握り、四人に選ばせる。
「赤いのを引き当てた奴に籠手を作ってやる──ただし、都市フレイマから戻った後な」
四人が木片を摘まんだ。
「ショ──ダウゥン!」
俺は声を張り上げたが、皆はきょとんとしただけだ。うん、こうなるの分かってたし。
先が赤くなった木片を持っていたのはカーリアとレンネルの二人だった。
カーリアは大喜び、レンネルは申し訳なさそうに、他二名を見ている。
「まあ、その他にも作れる物は増えたしな、疾風の籠手にこだわらなければ他にも良い物は作れるだろう。森竜の尻尾を使った籠手も、不格好だが軽くて丈夫だし──小盾を取り付けた感じにも作れるぞ」
そんな風に外れを引いたエアネルとカムイに提案をする。エアネルは槍を両手で使う為、小さな盾を籠手として使えるならそれが良いと、俺の提案を受け入れてくれた。
カムイは攻撃の速度を上げたかったらしく、小盾を使うつもりは無さそうだ。カムイは最近二本の剣を腰に下げているし、双剣使いにならないのかと尋ねると、練習はしているが、片手で一本の剣を振り回す事が出来ても、二本同時に振るうのは難しいのだと言う。
まあ、考えながら剣を振らなければならない部分は増えるから、二本を振るうのが大変なのは確かだ。それを得意としていた奴も居たが──あれは才能だな。参考にはならないだろう。




