混沌の悪魔(ユナ視点)
強大な敵に立ち向かう者達──
う──ん、もうちょっと細かな戦闘シーンを描きたかった。
白銀騎士や、その騎士長位階と呼ばれる固体などを倒しながら、私達は広間の前まで辿り着きました。
ここに来る前、リトキスさんから聞かされていた、何種類かの強力な混沌の悪魔の話。少し怖がっている私の手を握ったのはメイだった。彼女は「大丈夫」と声を掛けてくれた。──親友の言葉は、いつも力強い──たった一言だけど。
私は親友を、仲間達を守る魔法がある。そう考えるとリトキスさん達に頷き掛ける。
広間へ続く大きな扉を開けて中へ入る。
広間は無人──日の光を取り入れる大窓から差し込む光が、石床を照らし出している。所々が薄暗い広間、大きな石の柱が並ぶその奥に、灰色の何かが蠢いていた。
それは大きな鉄の塊を手にして立ち上がる。
不気味な長い腕、大きな蹄を持つ短い脚。
首の見えない小さな頭から鋭く尖った角が横に向かって伸びている。黄色く輝く瞳が闇の中で光を放つ。
欠伸をした口の中に無数の牙が覗いていた。
でっぷりとした腹には謎の模様が描かれている──と思ったが、青い物は浮き出た血管の様だ。
その背中には毟り取られた痕のある、黒い羽の生えた──小さな翼があった。
遠くにある台座の上に腰掛けていた、灰色の醜い化け物は「ゴォォオォォオォッ」と咆哮すると、手にした巨大な剣を持って、こちらに向けてのっし、のっしと足音を響かせながら迫って来る。
「魔法で強化します!」
私は全員に「攻撃・防御力強化」の魔法を掛けた。
仲間達は広がって混沌の悪魔を取り囲み、一人一人が敵の正面に立たないような陣形を取る。
ガギンと大きな音を立てて、床に巨大な悪魔の剣が振り下ろされた。石床を叩き割るほどの一撃で床の埃が舞い上がる。
その隙を逃さず攻撃したのはリトキスさんだった。頭は三メートルくらい上にあるので、まずは脚を狙って転倒させる事を狙う。そう言っていた。
「はあぁあっ‼」
裂帛の気合いと共に数回の攻撃が繰り出された。──速過ぎて私にはよく見えなかったけれど、悪魔は脚や脇腹を斬り裂かれながら、巨大な剣を薙ぎ払って反撃する。
リトキスさんは、その攻撃を横に転がるようにして躱すと距離を取った。
悪魔の背後に回り込んだリーファさんが武器を持つ腕を攻撃した。ズドッという重い音が響いたが、悪魔は、ゆっくりと振り返って彼女を掴もうとする。
今度はメイが側面から脇腹を狙って跳び掛かり、後ろ回し蹴りを打ち込んだ。太い肋骨を狙った攻撃がその骨を折ると、混沌の悪魔は凄まじい叫び声を上げて暴れ回る。
振り回された腕に吹き飛ばされたメイとリーファさんだったが、彼女達はすぐに戦闘体勢を取る。
私は頭部に向かって魔法の矢を数発撃ち出した。当たると爆発する威力を高めた物だが、ほとんど効かなかったらしい。
カーリアとリトキスさんが同時に魔法剣を発動させた、火の刃を纏わせて接近し、爆発する力を斬撃と共に解放する。
広間が一瞬明るく照らし出されて悪魔はぐらついた、どすんと重い音を立てて膝を突くと、レーチェさんが風の力を纏わせた魔法剣で悪魔を正面から斬りつけた。
風の斬撃が前屈みになった悪魔の(その巨体に比べ)小さな頭部に炸裂した。斬撃の嵐が吹き荒れ、胴体から頭まで切り裂いたが、悪魔は膝を突いた体勢から鉄の塊を薙ぎ払って反撃してきた。
「レーチェさん!」
分厚い剣に弾き飛ばされるレーチェさん──彼女は、後方に吹き飛ばされて床に転がってしまう。
私は駆け寄りながら回復の呪文を唱え始める。
悪魔は倒れた彼女に追撃を加えようと振り向いた。
次の瞬間、混沌の悪魔の背中から大きく血が噴き出したのだ。カーリアが放った魔法剣が背中に大きく傷を付け、さらに連続で魔法の刃が放たれ続ける。
「ぅグゥォオオォおぉっ‼」
悪魔は両膝を床に突いて武器も手放したが、体が倒れぬように上半身を両手で支えている。
レーチェさんの側に駆け寄ると、鎧に傷が付き、脇腹と額から出血している彼女を回復させる──するとリーファさんが、彼女を引きずって柱の陰に移動させようとする。
「だ、大丈夫ですわ。ありがとう二人とも……早く、あいつを倒しましょう」
レーチェさんは無事だった、鎧に掛けられていた錬成強化の効果もあるのだろう。派手に吹き飛ばされた割には軽傷で済んでいた。
レーチェさんに手を翳して回復をしていると、背中から血を噴き出させながらも、よろよろとした動きで、こちらに迫って来る混沌の悪魔。喉元から唸り声を響かせながら掴み掛かろうと手を伸ばしてくる。
すると素早い動きでメイが悪魔の懐に入り込んだ。気を纏う一撃一撃が強烈な連撃を放ち、腹部を凄まじい連打で叩き続ける度に、ズドン、ズドン、と大きな音を立てて悪魔の体が揺れている。
「ゴォオぉおぶァッ!」
口から赤黒い血を吐き出しながら後方に倒れていく混沌の悪魔、メイが連撃の最後に両手の掌から撃ち出した気の爆発力が、この巨体を持つ悪魔を吹き飛ばしたのだ。
仰向けに倒れ込んだその近くにはカーリアが居た。彼女は風の刃を剣に纏わせると、小さな悪魔の頭めがけて渾身の力を込めて「爆裂剣」を撃ち出したのだった……!




