風精一角獣の討伐(ウリス視点)
無為に日々を過ごしていた若者が、本当の強さや価値に気づく事について書いたお話。
同世代から学べる事なんて、実際のところほとんどありません(例外はもちろんある)。
私達は「風の霊域の野原」にやって来た。
私の弓を作る為に仲間達が協力してくれるのだ。ここに出現する「風精一角獣」を倒して、二本の角を持ち帰るんだ。その為に団長から色々な対策を教わった。
風の防壁を纏ったら弓矢の攻撃は、当たったとしても威力は弱まるだろうと言われ、特殊な矢を使ってその防壁を打ち消すんだと「封呪の矢」を渡された。
「弓は作れないが、矢の方なら任せろ」と団長は言っていた。錬成強化で弓を強化するのは団長だけど。
野原に向かうと丘の陰から様子を窺う。──早速、一体の風精一角獣を見つけた。頭の先から緩やかな曲線を描く長い角を持った馬。緑色の美しい鬣を生やし、長い青や紫色の尻尾を揺らしながら草を食べている。
「行きましょう」とエウラさんが言った。
作戦はすでに立ててある。危機が迫ると逃げ出す事も多いらしいが、エウラさんとカムイが前衛、逃がさないよう回り込むのがエアネルとレンネル、ヴィナーと私は援護に回る。
まずは不意を突く私の弓矢の一撃。──団長が作る鋭い鋼の鏃が付いた矢だが、この他にも取って置きの矢がある。同じく鋼の鏃だが、赤い矢羽を目印に付けた矢は、貫通力を増す効果が付与されているのだ。
「大事に使え」そう団長は言っていた。もちろんそうするつもり、鏃が使い物にならなくなるまで、矢柄が折れても交換して使うつもりだから。敵の体内に残っても回収する、そのくらいの気持ちで使う。
矢を渾身の力で撃ち出す、その一閃は狙い通りに腹部を深々と貫いた。
「グギュギキキッ」
奇妙な機械音を発してこちらを振り向く、仲間達はすぐさま相手を取り囲んだ。
「ギュゥォオオオォォ──ゥン」
と、やはり機械から発するみたいな奇怪な嘶きを上げて、前足を高く振り上げてから地面に足を叩き付ける。
カムイが素早く接近し、脇腹に鋭く斬り掛かる。皮膚を切り裂いたが、固い骨に阻まれて致命傷にはならない。
エウラさんは正面から突っ込んだかと思ったら、馬の目の前で横に跳び、魔剣を敵から見えない角度で斬りつけて後退させる。
風精一角獣は頭を下げると角を突き出し、左右に首を振ってエウラさんを鋭く尖った角で切りつけたが、彼女はそれを予測して躱す。
後方からエアネルが突き掛かり、腹部に槍を打ち込む。続けて弟が盾を構えながら接近し、力強い一撃を浴びせ掛け、怯んだ相手にエアネルがさらに追撃して一角獣を横倒しに吹き飛ばす。
私は馬の腹が剥き出しになったのを見ると、すかさず腹のど真ん中に矢を打ち込んだ。
「ギュキュキキキッ」
奇怪な鳴き声を上げて首を伸ばした一角獣に風が集まり、近くに居た前衛に風の刃が切り掛かったが、カムイが軽い切り傷を負っただけで済んだ。彼は風の刃に切られたが、恐れず前に足を踏み出すと、倒れ込んでいる馬の首を渾身の力で斬り落とす。
機械的な音を鳴らしていた口を開いたまま、風精一角獣は絶命した。まずは一頭目、幸先の良い出だしだ。
私は丁寧に角を根本から取り、矢も回収する。
*****
その後も何度か風精一角獣との戦闘になったが、他にも「風狼」や「刃大蛇」などと戦った。
無事に目的を果たした私達。風精一角獣の角も合計四本も手に入れる事が出来た、封呪の矢を使う機会は一回だけだったが。
仲間の力のお陰だ、そう痛感する。
敵の足止めや、行動を妨害する攻撃を中心に援護をしていたのだが、──前衛の積極的で正確な攻撃は後ろから見ているだけでもよく分かる。
カムイもここ最近、目を見張るくらいに強くなった。剣技だけ見ても私とヴィナーの三人で活動していた頃とは大違いだ。
以前のカムイは何となく冒険者をやっていて、周囲の同世代の冒険者達からは、正直言って軽んじられていた。
それが今はどうだろう。積極的に旅団の仲間を相手に戦闘訓練を行っている。その理由は明らか──旅団の仲間の存在だ。
今までは口先だけは大きな事を言う、同世代の連中の話ばかり耳にしていたが──今は違う、実際に強いリトキスさん、エウラさん、レーチェさんやリーファさんが居る。その彼らと実戦訓練をして、本物の強さや凄さを目の当たりにして、カムイは自分もこうなりたいと思うようになったのだろう。
私も、この旅団の仲間と、もっと冒険に出る為に、さらなる武器、さらなる技術を手にして行くつもりだ。
……もっと、もっと強くなろう。
どんな敵にも負けないように。
どんな困難にも仲間と共に切り抜けられるように。




