遠征先からの荷物の運び込みと猫
風の「象徴武具」である刺突剣の鞘を、夜になる前に作り。──翌朝に細かな装飾部分を磨き上げてから布にくるみ、管理局に持って行った。
技術班を通す為にメリッサに会いに行く。
ところが彼女は上層部に報告に出ているらしく、会う事は出来なかった。
彼女の部下の一人が「象徴武具」の調査を受け持っており、その若い女が布を解いて中身を確認する──
「これが風の力を秘めた神貴鉄鋼の武器ですか、美しい装飾ですね。これで風の神の力が増幅できたら素晴らしいです」
ちゃんと風の神に届けるようにと伝えると、彼女は「もちろん」と応えて微笑んだ。
管理局から帰る途中で白い猫の後ろ姿を見かけた。壁の上を歩きながら俺の鍛冶屋のある方へ向かっている。
後方から彼女に追いつくと「散歩か」と声を掛ける。
猫は壁の上で立ち止まると、見知った顔を見て「ウニャァアァ~~」と鳴き声を上げる……見ると、少し会わない間にふっくらとした様に感じる。
「太ったのか」
そう声を掛けると猫は、ふいっと向きを変えて、旅団宿舎の方へ向かって行く。
俺は彼女の後は追わずに鍛冶屋の方を回って旅団宿舎へ向かう。すると宿舎の前に荷車が停まっていた。
「うちの旅団に何か用か」
若い男が宿舎の玄関前で困った様子で立ち尽くしているのだ。
「ああ、良かった。『黒き錬金鍛冶の旅団』の方から届け物です。敷地内に運び込んでも良いでしょうか?」
俺は扉を開けて「頼む」と言い、俺も手を貸す事にした。結構な量だ、外の倉庫にも一時、入れておく方が良さそうだ。
荷車から荷物を運び込んで宿舎の中の通路に置いたり、鉱石や甲殻などの素材は、宿舎の外にある倉庫の中に取り敢えずしまって置く事にした。
「ありがとうございます。それでは、またのご利用を」
若い男はそう残して都市シャルファーへと帰って行った。
宿舎内の素材置場や物置に素材などをしまい込み、毛皮などは庭に出して防腐処理を施す事にする。
庭にある倉庫の中を整理していると、訓練用の分厚い敷物の上に猫が丸まって眠っている。
まあ、この倉庫に盗みに入る者も居ないだろう。猫の為にも倉庫の入り口は少し開放した状態にしようと思い、扉の下に木の板を噛ませておく。
しかし何故、外に置いてある簡易寝床に入らなかったのだろう。少し不思議に思いつつ、寝床に敷いてあった布を持って来て、猫の身体を包み込むみたいに置いてやった。
後は猫を起こさないようにシャルファーから送られて来た物を、荷物ごとに片づけるだけだ。──しかし、中には森竜の尻尾などもあり、肉や素材に分けて片づけなければならず、思いのほか手こずってしまったのだ。




