四大神の真実
四大神が本当はどんな存在だったのか、その一端が垣間見える話です。
精神世界で起こりかけた黄昏は無事回避された。残されたアリエイラは少し、ふて腐れているが。
「アリエイラ──そんなに露骨に不機嫌にならなくても……」
「別に? 不機嫌になっておりませんが」
彼女は相変わらず、腕に抱きついたままの格好でそっぽを向く。行動がちぐはぐだ。
すまない、誰か、女神応対手引き書を書いてくれないか?
精神世界は、他の神とも繋がっているのかと尋ねると、彼女はここは神々の領域だが、フォロスハートに住む者達とも繋がっているのだと説明する。
「私達は自然を維持する事くらいしかできませんが、常にあなたと──人間達と繋がっているのです」
砕かれた大地を治める四つの神。──その核心に迫ってもいいのかと思い悩んだが、先程ラホルスが口にした「神を自称する者」という言葉……あれは俺に対して敢えて、そう告げたのだと感じていた。
「あなた方は精霊だったのですね?」
俺の言葉に「はい」と答えるアリエイラ。
「外の世界から来たあなたになら分かるでしょう。この大地が世界としての、ほんの一部でしか無いという事に。太陽も無く、月も星空も無い混沌に飲み込まれそうな小さな大地。それが今ある全て。私達四つの精霊が守る事が出来た、小さな世界なのです」
*****
彼女は、その後も四大神について話してくれた。彼らはずっと昔、世界が砕かれて混沌に飲み込まれる以前は、精霊達を束ねる上位精霊に過ぎなかったという。
世界に破滅を齎したものが何だったのか、彼ら精霊達にも分からないらしい。
突如世界が崩壊を始めた時、精霊の長である精霊の神とは、すでに交信が取れない状態だったという。上位精霊は四つの力を合わせて、人々の多い大地を崩壊から守り、混沌の侵蝕からも大地を守り続けて今に至るのだ。
「私達は神でも何でも無い、ただの精霊に過ぎないのです」
彼女は俺の腕にしがみつきながら、微かに震えている。……過去の凄惨な世界の崩壊を思い出したのだろう。俺は彼女の頭をそっと撫でる。
「あなた方は、かつては上位精霊だったのでしょう。しかし、世界の崩壊から人間を守るという選択をし、それを果たした時から、あなた方は紛れもなく神になったのだと、俺は思います。今では多くの人々の信心を集め、強大な力を持っているのがその証でしょう」
自分が以前いた世界には多くの宗教と、多くの信仰者が居たが、神が現れた事は一度として無く、またそれが居ない事は明らかだった。
「何故なら神が人を守った事など無いからです。自称『信心深い人間』はそんな事は無いと言うのでしょうが、同じ神を信仰するはずの者同士が殺し合いをしていても、まったく関知しない存在など、俺にとっては居ないのと同じ。──いや! なお悪い! そんな神など人々に争いを起こさせる口実にしかならない存在じゃないか!」
俺は思わず声を荒げてしまった。あの世界の信心深い人間の大半は悪人では無かっただろう。だがそれでも、彼らの神の名の下で争いが起きるのだ。俺は錬金術で度々問題になる、神への信仰という事柄にぶち当たってきた。
錬金術の象徴の多くは、ある世界宗教からの思想を取り入れて表されるのだ。その度に俺は、あの不快な感情と対決する事となった。自分は信心を失ってなどいなかったが、多くの人間と同じ様な信仰心は絶対に持たないと神に誓っていた。
自分は神の「信仰者」である前に「哲学者」である事を求めた。「大いなる作業」の前で神の前に頭を垂れ、謙虚なる心で望む時には、いつでも己の魂の中にある神への接点を求めて呼び掛けていた。
「思えばあれこそが、アリエイラに呼び出しを受ける事に繋がっていたのかもしれませんね」
俺は彼女の小さな手を握るとそっと目を閉じた。




