水の神との謁見
開かれたドアの陰から現れたのは十七、八の少女だった。──華美な礼装用婦人服では無く、貴族の少女の普段着の様な、品の良い水色の上着とスカートを身に着けた……。長く美しい青い髪を持った少女だ。
その姿を見た俺は、夢の中に何度か現れた青い髪の少女──過去の記憶と思われる夢に見る、その少女が少しだけ成長した姿を見た気がした。
あの夢に出る風景や少女は、俺がウンディードで体験した過去の記憶なのか?
「お久し振りです……オーディスワイア」
少女──水の神アリエイラはそう言って、ぎこちない笑みを浮かべる。
彼女は手紙に書いていたように「自分が犯した事」で俺に負い目があるらしい。──いったいそれはどういった事なのか? 俺は少女の姿をした水の神に一礼すると「お召しにより参上しました」と、先ほど口にした言葉を繰り返した。
「はい」
澄んだ声で彼女は返答し、水色の瞳でこちらを見つめる。──その美しい瞳の色とは裏腹に、彼女の表情は曇っている。
「水の神アリエイラ様、手紙に書いてあった事を尋ねたくてやって参りました。そして今あなたは久し振りと仰いましたが……申し訳ないのですが、あなたとお会いしたという記憶が無いのです」
そう言うと彼女は寂しげに微笑む。
「そうですね……でもまずは、お礼から言わせて下さい。神貴鉄鋼の短剣は実に素晴らしい物でした。あの短剣のお陰で、精霊としての力を増幅する事ができたのです。感謝しています。ありがとう」
少女の姿をした神の言葉は、心にしんみりと響いてきて、俺は感激し、その場で膝を折って彼女の感謝の言葉を全身で受け取った。
「身に余る光栄です」と、自然と言葉が口から出てきた。この大きな力を持つ存在に認められる喜びに、法悦と言うものを生まれて初めて感じた。
するとアリエイラは突然近づいて来て、立ち上がった俺に抱きつき、ぎゅっと腕に力を込める。
「あなたには本当に感謝の言葉しかありません。私の我が儘であなたの運命を変えてしまったのに、あなたは私の力になってくれたのですから」
俺は驚いて広げた腕をおろおろと動かす。両手をどこに落ち着かせればいいのか分からずに、少女の姿をした神に抱きつかれたままになってしまう。
「あ、アリエイラ様。どういう事ですか? 運命を変えたって、──俺に分かるように言って下さい」
意を決して彼女の肩を掴むと、そっと体を引き離す。悲しげな顔をした彼女の白い頬に、すうっと涙が伝っていた。
「あなたをフォロスハートに呼び込んでしまったのは、この私なのです」




