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錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第四章 新たなる旅立ち

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記憶の呼び掛け

ちょっと訳わからん展開に、オーディスワイアの心に強く呼び掛けているものは──

若い日の記憶にある少女(?)らしい。

 ウル=オギトの一団が帰って行った後も、しばらく考え込んでいた──自然への憧憬しょうけいや精霊への理解と愛情──。そういった話を聞いていたら、心の中に何かが入り込んできて何かを呼び掛けている様な、そんな気持ちになったのだ。

 なんだか忘れ去った気持ちが胸にあふれてくるみたいな、じっとしていると胸の奥がざわついてくる様な感じがして、俺は客間を出て皿を片づける事にした。


 それよりも、ウリスが言っていた風の神が住む都市シャルファーへの遠征の事だ。こちらをどうするか考えなければ……日数は? 誰がウリスと共に行くべきか? ウリス以外にも武器や防具を作る素材を求めてシャルファーでしか手に入れられない物があるなら、そういった目的を持った者達が行く方が望ましいのでは……?


 俺はシャルファーで手に入る素材で誰の武器を、どのように作るかを想像してみた。まず考えるべきは前衛の武器か、それとも魔法使いの装飾品や杖の強化か──おっと、魔法の剣を作ったせいで新たな選択肢もある訳か。

 風の力をまとって速度や威力を上げるなら、リーファやメイの様な格闘家の装備を作るのも悪くない、剣士の武器や盾にも使える素材がある。

 そこで一つ、まったく別の素材について思い出した。


「おお、懐かしい! エー○コック……いや、旋風鳥エウスコック! あれの羽を集めるのに何羽も倒したっけ……アディーディンクの法服ローブを作るのに大量の羽が必要で、その途中で親玉格の大怪鳥グェンコーク『ファルバルシス』に絡まれて死にそうになったり。……懐かしい!」

 思わず口に出してしまった、しかもその内容が「死にかけた」思い出に「懐かしい」という感想が出るとは。……老兵は死なず、ただ去るのみ……そんな心境だ。今なら笑って済ませられるが、そんな状況に仲間を送り込みたくは無い。これは良く考えないといかんな、改めて真剣に考えてみる。


「何が懐かしいんですか?」

 とレンが調理場の方にやって来た。

「聞いてたのかよ⁉ 恥ずかしいな──ちょっとさっきから変な緊迫状態テンションなんだよな、なんでだろ」

 俺がそう言うとレンはいぶかしみながら「確かにちょっとヘンですね」と口にする。


「それより、神様達は帰ったのですか? どんなお話が聞けましたか?」

「ああ──いやいや、大した話は何にも。例の神貴鉄鋼シルエヴァルリスの魔法の剣について話しただけさ。──あと『黄土の岩窟旅団』、解体したってよ」

 俺が言うとレンは、あっさりと言ったものだ。


「まあそうでしょうね」

「ゥワォ!」

 両手を小脇に広げて往年おうねん(?)の一発芸を華麗に決める俺。しかしレンの対応は、かつて彼が入っていた旅団が潰れたと聞いた時と同様に冷たいものだった。


「……なんですか、今のは? 確かに今日の団長はどこかおかしいですね……神様との会話でおかしくなってしまったのでしょうか」

 失礼な! と言いたかったが、確かに自分でも謎の高揚感が止められない──なんだろう。この感じは……


 そんな事をしているうちに皿を洗い終えた俺は、先にレンには伝えておく事にした。

「今日の会議の議題はシャルファーへの遠征だ。レンはシャルファーの転移門で得たい素材とかあるか?」

「え、シャルファーにですか。──急にそう言われても……風の属性に関係する敵が多く出るんですよね? そうだなぁ……やっぱり盾でしょうか。片手剣では無く、剣盾使いになろうかと考えているので」

 少年は風の力を持った盾の話をどこかで耳にしていたらしい。装備に関する情報に対しても受信装置アンテナを張っていたのか。さすが双子の知性派担当、姉にも見習って欲しい。


「『魔風の盾』か? 盾でも攻撃できる、中堅になり立ての戦士には人気の盾だな。風の力で吹き飛ばし、壁に叩きつけて追撃するといった戦略が使えるんだよなぁ──」

「あ、やっぱり知っていたんですね。団長の組んだ仲間の中に、その盾を持っていた人が居たんですか?」

 レンはそう言ってきたので、俺は笑いながら首を横に振った。


「いやいや、俺が使っていたんだよ。大剣を使っていたのは知っているかもしれないが、俺はその前には、剣と盾を使っていた時期もあるんだぞ」

「ぇえっ⁉ そうだったんですか。それなら剣盾の装備をそろえたら、ぜひ僕に戦い方を伝授して欲しいです」

 まあ簡単な技くらいならな、と言って右脚を持ち上げてコンコンと叩いてみせる。


 その仕草を見たレンは神妙な面持おももちで頷くと「分かってます」と言ってから、こう呟いて調理場を出て行った。


「片脚が義足でも、団長は僕よりもずっと強い戦士だと思いますよ」

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