表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金鍛冶師の冒険のその後 ー冒険を辞めた男が冒険者達の旅団を立ち上げ仲間の為に身を砕いて働くお話ー  作者: 荒野ヒロ
第四章 新たなる旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/585

大いなる鼠の再来

「誰が強盗っちゅか」

 女の声でそう言ったのが聞こえてきた。庭を歩いて来る見覚えのある一団。地の神ウル=オギトと巫女、そしてその護衛達であった。


「地の神ウル=オギト。あなたの依頼をこなしたせいで、仕事の量が劇的に増えるのではないかと、今から戦々恐々(せんせんきょうきょう)としている有様ですよ」

 俺がそう訴えると銀色の大鼠おおねずみは、真っ赤な座布団の上で「ちゅっ、ちゅぅ──」と鳴き声を上げる。


「わっははは、そう言うなっちゅ──。これもフォロスハートの為だと思って、献身するっちゅぅ──」

 巫女の「わっははは」は完全に棒読みだったが、わざとだろう。抑揚よくようなく喋る様式スタイルなのだ。


 俺はウリスに、レンと一緒に茶を用意するよう小声で言って、彼女を下がらせた。ウリスは信仰心が強い娘だ。神の前に立つなど、恐れ多いと膝を折りかねない。自然の多い環境で育ったウリスにとって、地の神が最も身近に感じる神だった、という事も大きいのだろう。




 客間へ、ウル=オギトと愉快な……。巫女達を通すと、彼らを長椅子に座らせ、その背後に複数の世話係の巫女や、護衛を立たせる。

 なんとも威圧感のある構図だが、別にこちらが普通にしていれば、()()()()の様な連中なのは、以前の事から学習済みだ。


 しばらくするとレンがお茶を運んで来た。人数が分からないので、茶碗ティーカップを多めに運んで来ている。後ろで控えていた巫女の一人が前に出て来て、レンから銀盤トレーを受け取ると、人数分のお茶を入れ後ろへ下がる。

 レンも頭を下げて客間を出て行こうとしたが、その時ウル=オギトが鳴き声を発した。


「待ちなさいっちゅ、お前は以前ゲーシオンに居た、双子の弟っちゅね? 姉は元気でやっているっちゅか?」

 巫女が神の言葉を伝えると、レンは緊張した面持おももちで「はい! 元気です」と、教師に名前を呼ばれた小学生の様な返答をする。

「うん、それならいいっちゅ。お前も無理をせずに、元気でいるのが一番っちゅ」

 神の言葉にレンは大きくこうべを垂れ、客間を出て行った。


「あの少年達には期待していたっちゅが、仕方ないっちゅね。旅団の長に、ろくでもないのがなってしまうと、あんな事になるっちゅ。お前も気をつけるっちゅよ? お前は大丈夫だと思うっちゅが、後継者がお粗末では、話にならないっちゅぅ──」

 そうウル=オギトが言うので、レンとエアが入っていた「黄土の岩窟旅団」が、その後どうなったのか尋ねてみた。


「多くの団員が他の旅団に移って行ったっちゅよ。残されていた者達で結局、通常の活動──責任量ノルマ制を撤廃した運営、をする方向になったっちゅが、後の祭り。あの旅団の噂は、当然辞めて行った者達から広まったっちゅ。残された団長と団員の間で揉めに揉めて、ついには解散になったっちゅ。中堅規模の旅団にまでなりながら、団長交代で、あっと言う間に旅団の解体にまで転げ落ちたっちゅ。やるせないっちゅね」


 鼠姿の神様が、どの様な表情でそう言ったのかは、窺い知る事が出来ない。

 常に無表情な巫女の様子から察する事も出来ない。お茶をすすりながら、場の空気を変える手立てを考えていると、例の蜜蝋みつろうを思い出した。


「そう言えば、ウル=オギト様は蜜蝋はお好きですか? 今朝に新鮮な蜜蝋が届きまして……」

 そう言うと、銀色の鼠を乗せた座布団を大事そうに抱えていた、もう一人の巫女が反応した。手がわずかに動いて、大きな鼠が上下に揺れ動く。


「蜜蝋っちゅか、いいでちゅね。何を隠そう私を運んでいるこの巫女は、蜜蝋が大好物っちゅ。蜜蝋と聞くと、私を放り投げて蜜蝋に飛び掛かるのではないか、と思うくらいっちゅよ」

 そう言われた黒い法服ローブを着た巫女は、抱きかかえている鼠の方にではなく、隣に座る白い法服を着た通訳の巫女に向かって、声の無い罵声ばせいを浴びせ始めた。どうやら今言った事の大半は、通訳の即興アドリブだったらしい。


 俺は少々お待ちを、と残して客間を出て。速やかに蜜蝋を切り分けて皿に乗せ、銀の匙(スプーン)を付けて運んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ