工事と徒弟募集と光る指輪
翌日に解体現場を見てみると、作業員が早くも倍近くに増員されていた。分担作業で石壁を一つ一つ取り外しながら、それを集めていく。これは数日後には、鍛冶屋の方も解体されてしまいそうな勢いだ。
俺は鍛冶屋の壁に架けられた掲示板に、もっとはっきりとした告知を書いておいた。鍛冶屋見習い募集、改築後に正式採用。住み込み可能。日当○○ルキから、などと書いて、旅団宿舎の方に来るよう書いておく。
建築現場を仕切っている建築家に、いつくらいに終わりそうかと尋ねると、今後も作業員が増員される予定なので分からないが、二週間以内には残り二つの建物も、全て解体できるのではと予測する。
建てる方が解体より早くなるかもしれませんぜ、と不敵に笑う建築家。丈夫な建物にしてくれよと注文を付けると、「もちろん」だと答えてくれた。
少し離れた場所から建物の解体されていく様を見つめながら、次は自分が(短い期間だが)住んでいた、建物が解体されるのかと思い、……少し寂しい気持ちになる。
宿に戻ると素材置場や倉庫を確認して、冒険に必要な道具を錬成しておく作業に入る。まずは発光結晶を錬成する。──今回は仲間達に頼まれた指輪などに取り付けた、装飾品としての発光結晶の作製だ。
小型化すれば、光度も低くなるのが一般的だが、そこは指輪との関連性を持たせて工夫が可能だと、すでに解決策は考えてある。
結晶自体も、光を発する魔法を封入するだけでなく、魔力を与える仕方で、光度を三段階くらいに上げ下げできる仕組みを採用。
指輪には光度を上げる効果を付加し、魔力消費を抑える効果も付けて、発光結晶の燃費を改善、魔力の少ない方でも苦にならず扱える充実の機能。これでお値段な、なんと──
いくらなんだろうな。店で売るとしたら、七千ルキは越えるだろう。客の足元を見るなら、一万の値を付けても売れるのではないだろうか。
原材料費だけだと三千ルキ前後か? 発光結晶になると水晶と魔力結晶、指輪部分の素材にもよるが──、新しい鍛冶屋が出来たら、そこの販売所で売りに出してみようか。
「あなたの未来を照らす、発光結晶の指輪。大切なあの人への贈り物に──」とか銘打った貼り紙とかを、壁に貼ってな。……想像すると笑える。そんな物が貼られた鍛冶屋など、見た事ない。
せめて宝飾品店にならありなのか? 貼り紙に使うなら、リトキスを見本にした物を作ろう。女なら──レーチェ? いや、貴族相手の商品では無いだろう。エウラかな? ウケ狙いでレンネルを女装させた格好で出す、という手もある……
そんな悪巧みをしながら水晶を削る。
表面を平らにした方が光度が集中し、明るくなる。周辺を照らしたいなら、丸のままでもいいのだが。
そうして、いくつかの水晶を削り終えると、今度は錬成台に水晶と魔力結晶を置いて、灯明や発光の魔法を封入する。一つ一つ丁寧に錬成し、後は用意しておいた、銀の指輪に取り付けるだけだ。
地道な作業に、こつこつと取り組んでいると、仲間達が帰って来てしまった。随分と長い間、作業に没頭してしまったようだ。
試しに指輪を嵌めて発光結晶を光らせてみる。
「わっ、眩しい!」
エアネルが、顔に向けられた指輪からの光を受けて仰け反る。光度を最大にすれば、目潰しにも使えるかも──一瞬だが。
皆は興味深そうに指輪を見る。俺は食事の用意をしようと呼び掛けて、宿舎の中へ入って行った。




